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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    ED後。手を繋ぐのに理由はいらないアルフェンとシオン。

    TOAR/アルシオ 文字通りの天変地異が起ころうと、ヴィスキントの市街地はそれ以前と変わらず、むしろ人の出入りという点ではより活発になっていた。どこか心許なさげなレナ人は元々の住民ではなく、最近になってレネギスから降りてきたのだろうということが察せられた。この街の在り方は理解の範疇を超えている。そういう表情だ。初めてここを訪れたときは、きっと自分も同じ顔をしていたのだろうと、シオンはそれほど遠いことでもない過去をふと思い出す。自分にとって不可解なことは自覚の有無を問わずおそろしいのだ。未知のものが、自分にどのような影響を与えるか――率直に言えば益か害かわからない。だから新しいことやものに触れるのは、こわい。自分の場合は間違いなく相手に害しか与えないとわかっていたからなおのこと。
     他者に手を伸ばす。ただそれだけのことが、シオンにとってはひどく難しくて、叶わない願いだった。
     気を付けていなければ人とぶつかりそうな雑踏の中。以前だったら多分近づかなかった。けれど今は。
     近くを歩いていたはずのアルフェンが、人を避けながらいつの間にか少し前に行ってしまっている。
    「あ……」
     おいていかないで、と声に出しそうになった。そんなわけは無いとわかっているのに。今ならば手も伸ばせるのに。染みついた躊躇いは、不意に思考を凍り付かせる。
     私を、置いていかないで。
    「シオン!」
     その名前を呼ぶ声が硬直を解く。アルフェンが振り返ってシオンのところまで戻って来る。まるで、声にならない声が届いたかのように。
    「悪い。はぐれてないよな」
    「子どもじゃないんだから」
     そんなに心配しなくても大丈夫、と言いかけたところで、何の前触れもなく、無造作にアルフェンはシオンの手を取る。
    「アルフェン」
    「ちょっと人口密度高いから、ここ抜けるまで」
     一瞬固くなったのは長年の習性のようなもので、自分とは違う体温に、まだ慣れない感覚が胸に広がる。少しだけ苦しくて、けれどそれ以上の熱が告げる。
     ただそれだけのことが、泣きたくなるくらいに嬉しいだなんて。
     自分にさえ制御できない、浮遊感とも高揚感ともつかない感覚を持て余している。触れた指先から伝わってしまうのではないかと、あるはずもない想像でシオンの心拍はまた少しだけ早くなった。今度は隣にいる、同じ歩調のアルフェンの横顔を見上げる。その視線は前方を捉えていたが、
    「……というのは口実で」
    「?」
     彼にしてはめずらしく、言葉を探すように躊躇いがちな口調。そこでシオンと視線を合わせて、わずかな気恥ずかしさを含んだように苦笑する。
    「俺が、手を繋ぎたかっただけなんだ」
     何も隠さずに、ただひたすらにまっすぐに向けられたそれに、シオンの方こそ継ぐべき言葉を見失った。
    「……あなたって、本当……」
     人たらし、と続けたら彼はどんな顔をするだろうか。いつの間にか人の心に入り込んで、揺るがない場所を占めてしまった。
    「理由なんていらないわ」
     シオンはそう言って繋いだ手に一瞬目を落として、次いでアルフェンを見つめた。
    「私も、あなたと手を繋ぎたいから。ただ、それだけで十分」
     一瞬虚を突かれたように、けれど次の瞬間にはひどく満ち足りた笑顔でアルフェンは応えた。同時に、絡まる指に込められる力が強くなる。
     たとえ手を離しても、再び繋げられることをもう知っている。手を伸ばして、それに応えてくれるひとがいることも、自分のものではない体温も。
     今はただ、ひとりではないのだと告げる指先が愛おしかった。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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