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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    旅の途中。フクロウの杜にて。

    TOAR/アルシオ 呼ぶ声は低く、それに応じるもう一つの声。交わすそれはどこか甘く、互いを慕い求めている。顔を寄せ合い、そして彼女の柔らかな胸に、彼は頭をすり寄せる。幾度も、自分の存在を刻み付けるかのように。彼女もまた、同様に顔を彼の胸に寄せる。甘えているのだ。場を弁え常に沈着な彼女が、伴侶にこうも情熱的に愛情を示すのかと、知らない一面を見てしまった。
     ――ダナフクロウのつがいの話である。
    「……なんていうか、お邪魔しましたって感じだな」
    アルフェンは視線を泳がせ、ついで傍らのシオンを見遣る。
    「まあ、私達がいようといまいと関係ないのでしょうけれど」
     本人たちにとっては、とシオンは続ける。そもそも人でもないが。
     旅の合間に時折訪れるこの杜も、最初はこのつがいしかいなかったのにずいぶんと賑やかになった。木漏れ日が躍り、澄み切った空に白い綿雲、梢を揺らす風はやさしく、どこか現実離れしている。実際、ここがダナのどこにあるのかはわからない。穏やかな気候はメナンシアにも似ているが、少なくとも元領将の知るところではなかった。
    『案外、本当にあの世かもしれないな』
     それを神妙な顔で言うものだから、危うく背筋が凍りかけた。
    『テュオハリム、冗談でも言ってはいけないことがありますよ』
     キサラが呆れとあきらめを綯い交ぜに苦々しい物言いで諫める。
    『ふむ、あながち冗談ではなかったのだが。五領のいずれにも該当しない地のようだからな』
     余計タチが悪いだろ、とロウが露骨に顔をしかめ、リンウェルとフルルはそれをよそに各地で見つけたフクロウを眺めながら『フルルの羽は何色になるんだろうね』などと顔を見合わせていた。そんな人間たちをいつも迎え入れるのはキングとクイーンと呼ばれる雌雄、つまりフクロウのつがいだったが、おおよそキングの無茶を嗜めるクイーンという図式(勝手に代弁しているだけだが、たぶん間違いではないだろう)に慣れ切っていたので、そうではない一面もあるのだと少し――だいぶ意外だった。
     まるで歌うような鳴き声に、互いに頬を寄せ合い、片時も離れない。
    「リンウェルが言っていたのだけれど」
     雑学を披露する年下の少女を思い出したのか、シオンは少しだけ笑いながら切り出す。
    「うん?」
    「ダナフクロウというのは、一度つがいになると生涯それは変わらないのですって」
    「相手を変えない?」
    「そう、ずっと一緒に」
     そう言うシオンの目はフクロウのつがいに向けられていて、それは穏やかではあったがその奥に垣間見えるのは、羨望、あるいは憧れ。そう見えたのは、アルフェンの気のせいだったのだろうか。
    「シオ……」
    「……あなたがいてくれれば、いいの」
     呼びかけた名前は最後まで音にならず、独白のような声がひとつ落とされた。
    「こうしてそばにいてくれれば、それでいいの」
     その声は、願いは、誰のものか。誰に向けられた言葉なのか。
    「……フクロウの話よ」
     そう言って見せる表情が、とてもきれいな、けれどひどく寂しげなものだということにシオンは気付いているだろうか。
     伸ばしたアルフェンの手に、無情にも<荊>が走る。覚悟していた痛みはけれど確かに指を苛む。表情には出さずにいられたと思うが、シオンはその顔を歪ませ声を上げる。
    「お願い。触れないで……今は」
     残酷なことを言う。今この瞬間に両腕に閉じ込めて、きつく抱きしめられたらどんなに楽だろう。そんな顔をしなくても良いのだと伝えるのに、言葉では到底足りないのに。
    「……すまなかった」
     ただ触れることさえもシオンを傷つけるだけにしかならない。<荊>が発現しない距離が、これほどまでに遠いなんて。
     それをゼロにする。そう決めた。
     触れるものをなくした自らの手のひらを見つめ、アルフェンは一瞬力を込める。今シオンに差し出せるものなんて、取るに足らない、ほんの些細なものでしかなかった。
    「……いるよ。ずっとそばにいる」
     弾かれたようにシオンが顔を上げる。綺麗な青の瞳が見開かれてアルフェンを映し出している。
    「フクロウの話、だ」
    「フクロウの、ね?」
     シオンのどこか含むような問いかけに、アルフェンは言葉ではなく笑みを返す。
     白く雄大な翼を持つ王は、満ち足りたような低い鳴き声を響かせている。見ている方が気恥ずかしくなるほどの情熱的な愛撫は続いていたが。
     さすがにお暇した方が良さそうね、とシオンは笑ってアルフェンと向かい合う。
    「そろそろ行きましょうか、皆待っているわ」
    「ああ」
     そうしてシオンはアルフェンの向こう側へと足を進める。すれ違うその一瞬、耳を掠めるようなささやき。
     アルフェンが振り返ってその背中を見遣る。彼女は振り返らず、背筋をまっすぐに伸ばして歩いている。
    「……あー、もー……」
     振り回されている自覚はある。あちらに振り回している自覚があるのかは知らないが。
     少し強く吹き抜ける風が今はありがたい。頭を冷やすにはちょうどよかった。
    「<荊>が消えたら……ほんとどうするんだよ」
     頬の熱さを覚え、思わず両手で覆った。仲間のもとに戻るには、もう少しだけ落ち着かせる時間が欲しかった。

    (次は、あなたの言葉で聞かせて)
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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