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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    運命後。上司と部下のキラさんとシン。

    種/シン誕生日2021 おめでとう、とおもむろに言われたものだから、最初は何のことだかわからなかった。返事の言葉を探しているうちに、
    「誕生日でしょ、今日」
     と相手の方から答えが出てしまった。
    「ああ……、ええ、そうなんですけど、えっと、何で知ってるんです?」
    「一応ここの責任者だから。個人情報は頭に入れているよ」
     事も無げに向けられる涼し気な微笑に、嫌味かな、と本気で思った。
     マジか、このひとそこまで覚えてんのかよ、と苦々しい感情が表に出る前に、目の前のキラはそれまでの澄ました表情から一変、
    「なーんてね。さっきたまたま人事ファイル見てただけだよー」
     にこにこと悪戯が成功したような笑顔を向けるので、これだからこのひとは! という怒りなのか呆れなのか、それともあきらめなのかわからない何かを生成する壺に蓋をして、さようですか、とシンは返すに留めた。
    「えーと、ありがとうございます。まあ祝われて喜ぶような歳でもなくなりましたけど」
    「そんなことないよ。誕生日はいくつになっても嬉しいものじゃない?」
    「嬉しいんですか?」
    「嬉しいよ」
     そこだけ、至極真面目に、ともすれば絶対の信念を主張する断言のように。キラはそう口にした。
    「……そりゃあ、嬉しくないわけでもないですけど」
    「それは結構。じゃ、この決裁済み起案返すね。待ってたでしょ」
     確かに待っていた。少し重要度が高い案件だったから、最終決裁がかなり上の方までになっていて、しばらく時間がかかっていたものだ。なるべく早く戻って来てほしかったが、それはすなわち戻って来た時点で早急にとりかからなければいけないものだったので。
    「あ~……嬉しいけど、嬉しくない……」
     今日残業確定じゃん、とうなだれるシンに、いつものように緊張感の無い表情でキラは声を掛ける。
    「一緒に残ってあげるから頑張ってね」
    「一緒にやってくれるわけではない?」
    「それ、君がやってた案件だから、僕が下手に手を出すとめんどくさいことになるよ?」
    「そうなんですけど、そうなんですけどね…」
     正論だが、求めていたのはそういう答えではなかった。
    「終わったらケーキ買ってあげるから」
    「あんた、ほんといい性格してますよね……」
    「そうかな?」
     へらへらと緊張感無く返すキラからは、先刻の真摯な表情は読み取れず、まるで終わる夏の幻のようにその気配を消してしまっていた。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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