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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    CP表記迷うディアスとギレル。ひとりだった少年とくまのぬいぐるみ。ギレルくんの過去捏造注意。

    ゾワゼロ/ディアギレディア 彼の私物にしては、随分印象とかけ離れたものだと興味を引かれ、そっと手を伸ばしてみる。毛足の長い被毛がうっとりするような柔らかさで、もしかして相当な値打ちものなのだろうか、と考えを巡らせたところで声をかけられた。
    「……言っておくが、俺の趣味ではないからな」
    「まだ何も言っていない。別に個人の趣味嗜好まで、俺は口出ししないが」
     そう言いながらディアスは大きな掌でその毛玉を撫ぜる。つまり、子どもが片手で抱えられる程度のクマのぬいぐるみを。
    「ただ、この子の経緯は気になるかな」
     よく見ればタグに記されたロゴマークは共和国民でも知っている老舗の流れを汲む玩具メーカーのものだ。決して安価なものではないということは察せられた。
    「……父の形見、のようなものだ。もう二十年以上前のものだが、たまに虫干ししている」
     曰く、軍人だったギレルの父親が任務中の事故で亡くなり、その遺品の一つだったという。
    「父の趣味でも俺の好みでもなかったはずなんだが、どういうわけか俺宛の荷物だったらしくてな。……長期任務の合間に適当に用意したのかもしれないが、その辺りの事情はもうわからないな」
     思えば、彼の身内のことなど聞いたこともなかった。そもそもこんな個人的な関わりを持つつもりもなかったのだが、人生はわからない。
    「そうだったか。年数の割にきれいだから、余程大事にしていたのかと思って」
    「単にしまい込んでいただけだ。普段はすっかり忘れてる」
     ギレルもクマに視線を落としながら、
    「それ、今では希少価値が付いているから、出すところに出せば俺の手取りでも厳しいくらいの値になっているぞ」
     恐ろしいことをさらりと言ってのける。
    「そういうことは早く言ってくれ。……素手で雑に触ってしまっただろう」
     驚いたように手を引っ込めたディアスに、ギレルは笑う。
    「まあ、手放すつもりもないんだがな。――我ながら薄情だと思うが、家族との記憶などもう覚えてもいない。だから思い出の品とか、そういう類のものではないんだが、何だかんだでここまで持ってきてしまったから」
     その言葉に感傷的なものを見つけることはできなかった。
     彼のことを何も知らないのだということを、突きつけられているようだった。反射的にぐしゃぐしゃと自分よりやや低いところにある頭を撫でる。
    「……おい」
     眉をしかめながら手を振り払うようにして、ギレルはこちらを睨んでいる。
    「君にではないよ。あの頃のクリストファー君にだ」
    「何を言って……どちらも俺だろう」
    「違う。その頃の君を俺は知らない」
    「知っているわけないだろう」
     そうだ、知るはずもない。彼がひとりだった頃の自分は、暢気に毎日をただ遊び回っていた子どもに過ぎなかった。それはもうどうにもならないことで、今更知ったところで何が変わるわけでもない。
     ただ、この柔らかなクマの子だけが知っている彼の孤独は、確かに存在するのだ。
    「たまには少しくらい甘やかさせてくれたっていいだろう?」
    「どの口が言っている?」
     いつもだろう、と付け加えられた言葉に、これだから敵わないんだよなあ、とディアスはギレルの肩口に額を押しつけるように俯く。ぽんぽんと軽く叩くような手を感じたのは、その直後のことだった。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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