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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    2~Xrdのどこか。カイの誕生日にまつわるソルの思い出と、シンのはなし。

    GG/カイ誕生日2021 なぜそれを目にすることになったかはもう忘れた。掌にすっかり収められるほどの小さな二枚の金属片。打刻された情報だけが持ち主を定義するものになる。そうなる可能性が決して低くない作戦の前だったか。
    「あなた、ろくな情報が入ってないじゃないですか」
     呆れか苦言なのか、あるいはそのどちらも含めた物言いだった。
     生年月日も血液型も信仰も空白だ。明らかなのは所属と名前くらいだが、それさえ絶対のものではない。フレデリック・バルサラという名前はもはやこの世から消え去って久しく、仮に自分が消し炭になったところで、自分の存在を証明するものはどこにも無いわけだった。もっともそうなることは許されないわけだが。
    「別に必要ないだろ」
    「余程生きて帰る自信がお有りのようだ」
     これははっきり嫌味とわかる口調でカイは自らの金属片――認識票を取り出す。
    「私のものもあなたに預けておいた方が良いのかな」
    「冗談か? お前のが生き残る可能性が高いだろう」
     少なくとも、人間としての戦闘能力はカイの方がおそらく上だ(彼を人間と言うカテゴリーに属して良いと言うのであれば)。ソルが長いこと生き延びているのはその枠組から外れた力を持つゆえだった。
    「迷子札は自分で大事に持っとけ」
     そう言いながら、ソルは目の前で揺れる認識票を手に取った。
    「……十一月生まれだったのか」
    「そうですよ」
     別に誕生会を開くわけでもないのだから、同僚とは言え誕生日など知る必要もないし、知ったところで何がどうなるわけでもないのだが。
     個人的な感覚で言えば、彼は夏か冬、いずれにせよ苛烈な季節に生まれたのだろうと思っていた。さもなくばいっそ春だ。誰にとってもうつくしく、慕わしく、快い。そうであるならば、なるほどと思ったかもしれない。秋というのは、正直一番印象から遠い。静かに眠りゆく時節というのは、どうにも当てはまらないような気がしていた。
     穏やかで明るく朗らか。それもまた彼を定義する一面だろう。しかし、その本質はひどく熱いか冷たいかだ。触れたら焼かれる。
     何か? と訝るカイに、いや別に、とソルは話を展開させることはしなかった。
     なので、この話は終わりだ。

    「そんだけ?」
    「それだけだ」
     カイの誕生日っていつなんだろうな、とシンがふと呟いたので、「十一月二十日」と特に何も考えずに答えてしまったのだが、それを聞いたあとのシンの顔は怪訝を通り越して、まるで幽霊に遭ったかのような表情をしていた。
    『えっオヤジ何で知ってんだ? ていうか返事がめちゃくちゃ早くてそっちもびっくりしたんだけど』
     それほど意外だろうか。まあそうかもしれない。実際、人の誕生日までいちいち覚えている性質でもない。
     そういうわけで十数年前の、何と言うこともないやり取りを話す羽目になって今に至っている。
    「で、何かしたの?」
    「するわけねえだろ。良い大人が……」
     言いかけてソルは思い直す。大人ではなかった。少なくともあの頃のカイは。
    「まあ、そういう余裕があるような時期じゃなかったな」
     ふーん、とシンはしばらく考えるように黙っていたが、おもむろに口を開く。
    「誕生日ってどうすればいいんだ?」
     この場合は、おそらく『カイの誕生日』を指す。
    「知らねえ。……手紙でも送っておけば喜ぶんじゃねえか」
    「赤字で返って来そうでヤダ」
     やんわりと、頭ごなしに否定はしないが、割と容赦なくダメ出しをする。カイの教育方針はおおむねそういう方向だった。細かいスペルの間違いに、流れるような筆致で添削がされる。
    「しねえだろ、さすがに」
     真っ当な精神を持つ親であれば、子どもからの贈り物は何だって嬉しいのかもしれない。ましてそれが何年も会うことすらできなかった、たったひとりの子からであれば。
    「その頃が近くなって、覚えてたら送ってやれ」
    「……覚えてたらな」
     どこが憮然とした答えは、多分に照れ隠しだ。物覚え自体が悪い子ではないので、きっともう覚えてしまっただろうが。
     ふと、シンの横顔を見ると、父親の血が強いことがよくわかる。時折過る、あの頃の少年を見ているような奇妙な感覚。次の瞬間には、あれはもう人の親になったのだと、感慨とも言えない何かを覚えるのだった。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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