一年後に叶う願いを君へ今年も七夕の季節がやってきた。
小さな長方形に切られた画用紙の上にボールペンを置き、遙はううんと唸る。
昔から神様に願い事というものをあまりしてきたことがない。
大抵の願い事は自分で叶えてきたのだ、だけどと手に持ったままのボールペンは未だ文字を生み出すことを拒んでいた。
自分では叶えられない願い事がある。
いや、本当は自分でも叶えられるかもしれないが、思わず神頼みをしてしまいたくなるほど自分にとっては無謀な願いだ。
「はあ…」
思わず漏れたのは大きな溜息。
実を言うと自分には今、好きなやつがいる。
世間一般的には恋愛と呼ばれるであろうその感情に気が付いたのは一年ほど前のこと。
いつも怒ったような顔をして乱暴な言葉をかけるその男の何気なく見せた素の笑顔に心の中で何かが生まれたような、そんな感覚を覚えた。
1929