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    notyokkk

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    【創作企画AOG】
    冷慈vsニヒツさん(孤鴉ん家)
    お名前だけブラッドくんも

    悪敵手。 惑星アクライアのとある街角、ヤンキー漫画でよく出てきそうな倉庫の中で厚い靴底でアスファルトを踏みにじる音が一つ鳴った。
    とある別の惑星の女子生徒からとんでもないデートの誘いをもらい、英雄色を好むという言葉通り、それを受け取ったアクライアの銀狼に甘い空気などはありはしないのだが。
    むしろ彼から出るのは存在感だけで、そこに立っているだけでただのファッションヤンキーであれば逃げ出してしまうだろう。そんな恐ろしい空気を纏う男に怯みもせず、デートの申し込みをしてきたのはセロスファクトリー在住の同い年の女子生徒、AHEADに所属しているらしいニヒツ・グリュック・リーベルノだ。
     彼女からの誘いが来た時点で面倒な予感にかられたアクライアのヤンキーアニキ満田冷慈は事前に自身の後輩であり友人であり戦友であり好敵手であるブラッド・ベロニカへと情報を求めにいった。なんでも部の部長であるあの男であれば、頼めば動いてくれるだろうとわかりきっていた。どういうわけか、いや、ブラッド・ベロニカも目をつけられていたというべきか、彼はニヒツのことを知っているようでその部分を語ってくれた。

    (アイツがあー見えて冷静な戦闘狂で助かったぜ)

     そのことを思い返しながら、一人で今日の最悪のデートプランを練ってみる。
    相手が男であれば遠慮も不要だというのに。まったく最悪のご縁ができてしまったようだ。腐っても相手は女性だということは十分に冷慈の価値観にかかわってくる問題だった。
    (女子供に手を出すのは男がやることじゃねぇよ)
     テキトーにオハナシを受け流して帰るのが一番だ。とため息をついて一歩踏み出した瞬間空気がヒリついたのを感じた。

    いる。

    すぐそこに、おそらくは自分と同じかその近辺の実力を持ち合わせた厄介者が。

    「時間通りじゃないか。アクライアの不良生徒」
    「お前らみてーなスーパーポールのおままごと組織の連中は面倒な奴しかいねぇじゃねぇか」

     すでに冷慈の戦闘意欲は彼女を見たことによってそがれにそがれてしまっており、ダルそうに飄々と彼女の会話を受け流していく。

    「貴様……我々の意志を!ただの真似事だと抜かすか!!!!」
    「お前らの意志があれば、そうやって不良狩りして許されるってわけ?」
    「うるさい!私たちは間違いを正してやるだけだ!!抜刀ッ!!!!」
    「…………。そんなんだからおままごとなんだよ」

     彼女の持っていた剣が、抜かれる。一瞬で距離を詰めてきた白髪の少女はやはり迷いがなくそれが戦闘狂の気すら感じさせる。
    近くのコンテナを盾に斬撃を幾度も交わせど自身の自慢の腕は振るわずに防戦一方、いやすでに数発は掠っており、彼は相応の怪我を負っているのだが。それでも防戦を繰り替えす冷慈を見て、彼女は更に剣を深く握り怒りを声に滲ませる。

    「何故!貴様はやり返してこない!ブラッド・ベロニカは応戦をしてきたぞ!」
    「…………。」

     確かに、彼女の言う通り、ブラッド・ベロニカのした通り、応戦をして文字通りの真剣勝負をしてこそ成立するのが喧嘩である。

    「お前さ、つまんねーこと言うなよ。俺はお前が俺を「粛清」しにきたんだろうと思ってるから相手にしねーんだよ。」
    「ー……は?」

     馬鹿にしているのか、そう声に出そうとしたその一瞬だった。
    視界が高速で下がり、背面全身に壁の存在を感じニヒツはハッとする。自身の腕は冷慈の腕に捕まっており、頭上で捕らえられたままなのだ。
    酷くつまらなさそうに、冷めきった目で彼女を見下した冷慈の目からは一種の軽蔑すら感じた。

    「わかんねーこと言ってんなよ。喧嘩ってのはこうやってするもんじゃねぇよ。お望み通り粛清されてやろうとジッっとしてりゃ好き勝手言いやがって」
    「真剣勝負で手を抜くような男に文句を言われる筋合いはないが」
    「話がわかんねぇ女だな。お前らがやってることは真剣勝負なんかじゃないって言ってんだよ。」

     絶対に交わらない価値観が、空き倉庫で飛び交い凍てついた空気だけが二人の間を流れるばかりの空間で、先に目を閉じたのは冷慈の方だった。

    「はぁ。…………真剣勝負がしてほしいなら普通に喧嘩しに来いよ。まぁそれをするとお前らもお前らが嫌う『不良者』と同じことになるわけだけどな」

     もう喋る気もなくしたといわんばかりに外された手頸も痛くはない。
    壁際へと押し込められた瞬間も壁にぶつけられることはなかった。
    それは案に自身が【手加減】をされたということだった。それを許せるほどニヒツのプライドは安くない。なぜ、『不良者』のこの男にここまでコケにされなければならないのか。
    まるで戦力外通告をくらったスポーツ選手のような気分だった。
     だから、落とした獲物を拾い上げ、握り直し、歯を食いしばり。彼を見据えた。

    「私を、馬鹿にするな…………!」

     しっかりと握り、全力でこの一撃を叩き込めば。
    そうだ。私は、秩序を乱すものが許せない。だからこの場所で、そんな人間を合法で叩き潰せるのなら、と。
    この一撃で、沈めてしまえばいいのだ。

    「…………。」

    クラクラとした感情ひとつで本能のまま、その剣を振り下ろした。
    彼はそれを避けもせずにもろに一撃を受け、先ほどよりも多くの血を流し、吐き、倒れ伏しながら今度は感情のある目でニヒツをとらえた。

    ーここにきて、初めて本当の意味で目が合った気がした。ー

    「俺が、何も考えずに、避けてるだけだと、…………ッ思ったのかよ、クソアマ」

    酷く歪んだその顔は、まるで悪人だった。
    やはり悪は断罪するに限るのだ。といまだに脳内に響く謎の警鐘をかき消そうと、一歩を踏み出したその瞬間ハッとする。
    自分が彼を粛清するべく放った幾つもの斬撃を交わすべくコンテナを盾にしていたその意味を。

    「こ、これは…………。」
    「ってぇ……。あーこれ能力使ってなかったら死んでたな俺」

     疲れた。と倒れ伏したはずの冷慈は血をぬぐいながら起き上がり、倉庫内の惨状をニヒツと並び見、笑う。

    「あのコンテナはここから惑星ニューロに輸送されるはずのモンだったらしい。…………どこから出たのかは知らないが違法の解除鍵さ。お前からここに来るように指定を受けた日、丁度俺はスーパーポールのお兄さん方に呼ばれててよ。なんでもアクライアからニューロに違法物が流れてるらしいがその現場を押さえるのに証拠が出てこねぇってんでね、心当たりがないかって聞かれてよ。色々苦労したんだぜ、丁度指定された場所が重なってたこと、謎のコンテナが入ってくる日、お前との決闘の日、全部調べなきゃならなかった。まぁ偶然それがタイミングよく揃いそうだったから乗ったのさ。俺はさすがに刃物の扱いは得意じゃなくてな。ブラッドからお前の得物を聞いたときはラッキーだと思ったね。」

    「お前が勝手に暴れて勝手にコンテナを開けてくれれば俺はこれを告げるだけでいい」











    「アンタ、扱いやすくて助かったぜ、ニヒツ・グリュック・リーベルノ」
    「な!待て!話は終わってないだろう!」
    「残念、俺の【お仕事】は終わったんだ。もう終いだ。帰れよ。助かったぜ、コンテナ破壊女。じゃあな」
    「私を騙した貴様のことだけは許さないからな!!!!!」


    彼女の言葉を耳に入れているかは定かではないが冷慈はコンテナの間をすり抜け近場に停めてあったらしいバイクに跨りうるさいほどにふかしてから、爆音を鳴らしながらその銀髪を風に靡かせ走り去っていく。

     髣髴とするこの感情は、怒りだ。

    最後まで徹底的に自身のプライドをへし折りにきたあの男だけは。


    「待っていろ、次こそは貴様をつぶしてやる」


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