タイトル未定3月31日夜半。
人語を話す謎の意思天体に対する無力化、及び捕獲任務が終了した。
特別捕獲装置に入れられ天文台へと連行される意思天体を眺めるオクタビウスの横顔からはなんの感情も読み取れなかった。
普段はまんまるな目を鋭く細め、珍しく焦点の合った瞳は黒く黒く僅かの光も発していない。
戦いの熱気を連れ去った冷たい夜風に頭の花弁をいくつか舞わせ佇むコクシア嬢は急かすこともなくそれを見ていた。
ふと彼の身を包むオレンジ色のツナギと無機質な鉄の首輪が目に入る。
受刑者である事を示すそれら。
常にエージェントの監視下におかれ名前すら呼ばれない。あの意思天体と同じ。
この子もこうして捕まり収容されたのかもしれない。
…『自己検閲特性』という、自在に自身の存在を秘匿できる能力を持った彼が。
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