人魚と画家と誕生日の話6月某日。絶都市のとある若者向け喫茶店にて。
駐車場に一台の赤い軽自動車が止まり運転席側のドアが開く。
白と青緑のグラデーションが目立つウェーブヘアの男、逢魔学園の非常勤講師 安達は反対側のドアに目を向ける。
視線の先では承和色を秘めた瞳のロマンスグレー…同校で美術を教える常勤講師 絵戸先生が助手席から降りてくるところだった。
「運転ありがとう、お疲れ様」
ふわりと微笑み労いの言葉をかけるこの紳士と
「俺が誘ったんスから運転くらいいくらでも任せてください」
こちらもニッと満面の笑みとサムズアップで応える若い男。
傍から見れば親子ほど歳の離れたこのふたりには共通点など見つからないだろう。
どういう関係かと問われれば友人と答えられる程度には進展したと安達は勝手に思っている。現にこうして休日を共に過ごしているのだから、あながち思い上がりでもない…かもしれない。
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