謎のイデアで入れ替わっちゃったお話ヒュトロダエウスは己の命の危機に直面していた。
理由は明白。
自身の仕事場である創造物管理局の局長室にいる2人の人物がその原因だ。
「お前なら『視て』分かるだろう、ヒュトロダエウス」
とソファに座り両手を膝の上で組み、不機嫌を隠そうともしない表情でこちらを見上げる『アゼム』と。
「なあ、すごいだろうヒュトロダエウス! ほらほら!」
満面の笑顔で自分に向かって全力アピールをしてくる『エメトセルク』。
「……もう無理……っ」
ヒュトロダエウスはその絵面を見てもう耐えられずに笑い出した。このままの状況が続けば笑い死にそうだ。確実にこれは己の命の危機だ。
「笑いごとじゃない! お前、何か把握しているだろう!」
声を荒げてこちらをにらみ上げてくる『アゼム(中身エメトセルク)』だが、ヒュトロダエウスは笑いが止まらず返事ができない。一方、
「えー、俺は面白いと思うんだけどなぁこういうの。今なら俺、めちゃくちゃ魔法使えるのかなぁ」
興味津々で自分の両手を見つめる『エメトセルク(中身アゼム)』を、『アゼム(中身エメトセルク)』は𠮟りつける。
「アゼムお前、何がどうなっているのか分からないうちに、勝手なことをするな!」
しかし叱られてもどこ吹く風の『エメトセルク(中身アゼム)』である。自分の身体を動かしながら状況を把握している。
「うーん。肩痛いし、腰も痛いし……。エメトセルク、お前仕事しすぎなんじゃないの?」
「お・ま・え・が! 仕事をサボっていたから私のところにお前の分の書類が回って来たんだろうが!」
『エメトセルク』に説教をする『アゼム』という、世にも珍しい様を見て、ヒュトロダエウスは呼吸を整えながら話しかけた。
「はー……死ぬかと思った……。で、一体どんな面白いことがあったの?」