出来損ない それは半節に一度やってくる。どうせ今回も徒労に終わるのだ。
「出来損ないで、申し訳ありません」
それでも父上はこの言葉を嫌う。出来損ないに出来損ないだとは決して言わない。ごく近くで掛けられる声はやはり静かだったが、隠しきれない怒りが今日も滲んでいる。
潜められた、地を這うような低い声が殊更響く。どうしてそんなに怒っているのだろう。それはやはり、俺が出来損ないだからじゃあないのか。
父上は〝出来損ない〟を嫌う。けれども、決して、「お前は出来損ないではない」などとは口にしない。
優しさなんかじゃあない。知っている。
「口にするなと言っているだろう」
それでも、それが父上なりの優しさなのだと受け入れる。
「……父上」
額面通りに受け取る子どもはもう、この腕のなかにはいない。それでも互いに徒労を重ねる。重ね続ける。
出来損ない──。
その言葉は、父上にも跳ね返るのだ。