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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    フロ梶のバカンス2

    フロ梶 バカンス_2「バカンスってのは、何にもしないのが一番の贅沢なんだよ」
    フロイドにも贅沢するって感覚あるんだ、と茶化すとけらけらと笑って返された。
    「日本で主流な旅行ってのはどこそこに行くって予定を立てて、あれこれに乗って、へとへとで宿に帰ってくるんだろ?」
    「何その偏見。まあ、そんなもんかもしれないけどさ」
    脳内にるるぶや旅行代理店のパッケージツアーが浮かぶ。確かに動き回るのが前提のプランの提案が多いように思う。

    「で…何もしないって何をするの?もうこんな格好なワケだけど?」
    「おっと、色気がないな」
    ドライヤーの場所がわからなくて濡れたままの前髪をかき上げる。ついでに言えばバスローブもなくて、腰にタオルを雑に巻いて出て来た。
    「裸で来ても良かったのに奥ゆかしいな」
    「フロイドの大好きな日本人ぽさだよ…ドライヤーわざわざそっちに持って行ったな?」
    不敵に笑うフロイドの隣、空いている枕の上にドライヤーが鎮座していた。
    「こっちに来い、乾かしてやる」
    「もー…」
    まだ体に水気が残っているからとベッドに乗り上げないでいると伸びて来た腕につかまり、そのまま膝でシーツを擦った。
    自分でやろうとして先に掴んだドライヤーは日本製で、どこだかわからないなりに外国に来ているというのに変な心地がした。
    「カジより先に着いてたからあちこちがザラザラでな。一緒に入ってもよかったんだぞ?」
    「…まだ独り占めの序盤だけど?」
    少し町を歩いてアイスを食べてから車に戻り、それからチェックインしてすぐにシャワーに入った。シャワーを浴びていた時間は二人合わせても一時間もかかっていない。
    「ねえ…あと70時間…もないか。僕がずっと寝込んでてもいいならめちゃくちゃにしていいよ」
    「それはちょっとな。俺は寂しがり屋なんだ」
    「そうなんだ。情報屋だと思ってた」
    静音が売りのそれは売り文句の通り空気を吐き出す音が会話を邪魔することはない。
    滴り落ちていた水気は早々に無くなり、髪を覆っていたタオルが梶の胡坐の上に落ちた。
    背中にフロイドの胸がぴったりと重ねられる。そこには今日に至るまでまだ傷ひとつない。

    「こっち向けよ。お前が怪我するなって言ったから健気に粛々と暮らしてたんだぜ?隅々まで見て確認しなくていいのか?」
    緩んだ腕の中で膝立ちになりフロイドと向き合う。
    ――何が粛々とだ。誰が暴いたのかは巧妙に隠されていても、誰が壊したのかはすぐにわかる。そんな仕事ばかりしておいて。
    梶はフロイドを見下ろしてやろうかなと思ってその姿勢になったが、それより先に胸に耳をぴったりとあてられてしまった。
    「カジも、嘘喰いのために今日までちゃんと生きてたみたいだな」
    心音をじっと聞きながら、フロイドの手が前腕と二の腕の傷に触れる。
    皮膚が僅かに固くなって残ったそこを爪が軽くひっかいて、輪のようになっている傷の縁を指の腹がなぞってゆく。
    「…ベッドでほかの男の名前を出すのはマナー違反だって、言ってたのはフロイドだろ」
    心臓の上にくちづけが落ちる。フロイドの腿の上に乗り上げていた梶の脚が強く引かれ、二人はそのままシーツの海に埋もれた。

    *
    キスをして、ペッティングして、その中で少しずつ衣服を剥がしていく。
    部屋に入ったら即挿入、なんてお熱い事もやってきた身としてはその儀式めいた流れに最初はまだるっこさを感じた。
    会うたびに「はじめまして」と挨拶と自己紹介をするみたいじゃないかと笑ってしまいたくなったこともあったが、今ではもうこれが正規の手順としてこの手にも馴染んでいる。
    だってそのほうがカジが安心するから。

    「ん…、フロイド、ねむい?手があつい…」
    今日は”服を脱ぐ”はカット。二人とも最初から服らしい服なんか着ていない。
    「カジが出てくるのを待ってシャンパンも開けてないんだよ。手はずっとこの調子さ」
    「…?、あける?氷とけちゃうし…あっ」
    シーツの皺を掴んでシャンパンクーラーのある方に伸ばそうとした手を捕まえ、その手の甲にキスをする。
    「お前が握るのはこっち」
    ヘッドボードとマットレスの隙間からスキンを引っ張り出してカジの手に握らせると、小さく「ばか」と言われてしまった。
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    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001

    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615