Little Traveler浮奇は丘の上でひとり、静かに夕日が落ちるのを眺めていた。
さぁっと吹く風になびく草原と紫色の髪。
空を見上げると、キラキラと輝く星たち。
星がひとつもなくなったあの日のことが嘘のように感じる。
浮奇の視界は、ただただ現実を写すのみ。
「_もう一度、魔法をかけて」
空に手を伸ばしても、星が自分に降ってくることはなかった。
目を閉じると、楽しそうに笑う、4人の影。
胸がじぃんと温かくなる。
「サニー、アルバーン、ユーゴ・・・フー、ちゃん・・・」
何度名前を呼んでも返事は聞こえてこない。
でも、この記憶は嘘でも、偽物でもない。
俺たちは、今、自分たちの世界に帰ってきただけなのだから。
きっと、この空がつながっている先には、みんながいるから。
「会いたいなぁ・・・。」
ぽつりとつぶやいた声は風に乗って飛んでいく。
もう一度星が自分に力を与えたら、何を望むだろう。
答えはひとつしか思い浮かばなかった。
「もう二度と、魔法を解かないで」
それぞれがいろんな理由を抱えて未来からやってきて、あの日出会って、たくさんの思い出を作った。
あのままずっと一緒に居たいとも思ったこともあったが、やっぱりみんなは元の世界に思い入れがあり、帰る方法を探していた。
浮奇は正直、今の世界に戻ってきても寂しいだけだから帰りたくないと思っていた。
帰りたいというメンバーがいたので告げることはなかったが。
そして、やっとのことで元の世界に帰る方法を見つけたのである。
別れるその時は、全員で泣き崩れた。
寂しいね、離れたくないね。
何度も手を握って、体を寄せ合って。
涙も鼻水もぐちゃぐちゃになるのも気にせずに、5人でひたすら触れ合った。
最後まで泣いていたのは浮奇だった。
みんながじゃあね、って笑って帰っていくのを見て、本当は笑って送りたかったのに、そんなことはできなかった。
きっとみんなには、僕の泣き顔が焼き付いているかもしれない。
でも、4人の笑顔が心の中に染み付いているのが、浮奇には幸せだった。
最後まで残ってくれたファルガーは、帰る前にこう言った。
「俺たちはきっとまた出会える。同じ空の下にいるんだから。」
優しく頭を撫でてくれた硬い機械の感覚が、まだ残っている。
いつの間にか日が落ちて、暗闇が浮奇を包んでいた。
星達が自分を見つめている気がする。
浮奇は深く息を吸い込み、空に向かって叫んだ。
「サニー!アルバーン!ユーゴ!フーちゃん!俺はここにいるよ!」
渾身の叫びは星空へと消えていく。
みんなに、届いていればいいな、と願いながら。
浮奇はその場から歩き出した。
また夕方になれば、浮奇はここに来るだろう。
そして空を見上げて、4人のことを思い出す。
たとえ「大切なものは、目に見えない」としても。