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    Lei

    @PkjLei

    妄想や幻覚を捏造たっぷりで書いてます

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    Lei

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    憑依型俳優の🦊が役に引っ張られて、拒食、不眠気味になる話

    安息の周囲からの期待は嬉しく力になるものだが、過度な期待はその人を苦しめる毒になる。俺が今回演じるのは病弱な天才画家。病に侵され自暴自棄になった彼と、彼の遺産を狙う親戚、愛する恋人、幼馴染で彼をサポートし続けた親友。目まぐるしく変わっていく人間関係。そんな中で彼が死の間際にどんな作品を描き、どんな言葉を残すのか。最近話題になった小説が元になった映画だ。原作者はどうやら気難しい人らしく、映画の制作許可を貰うのにだいぶ苦労したらしい。おかげで映画製作側は原作者サイドの顔色を伺いながら、監督やキャスト、脚本家などを決めたらしい。
    「君なら、この難しい役も完璧に演じきれると思っているよ」
    オーディションではなく監督の一存で決められた俺は、そう笑顔を浮かべながらかけられる言葉に精一杯頑張らせていただきますと答えるしかない。

    役のためにまず求められたのは10kgの減量。もともとやせ型ではあるが、余命末期の患者のリアリティを出すためにさらなる減量を命じられた。俺はとりあえず、1日1食に食事を減らし、更にその食事もサラダがメインという貧相なものにすることにした。減量を始めた最初の頃は物足りなさを感じていたが、次第に慣れ段々と食欲そのものが失せていってしまった。するすると落ちていく体重に、期待を裏切らないで済むと安心していた。
    その次に求められたのは、役に関する高い理解。それ自体は別にどの役でも同じように思えるが、原作者に話を聞き、脚本家にも話を聞いた。そして感じたのは、両者の間には相いれない理解の溝があるというもの。脚本家は俺の役の最後の言葉を恋人に向けたものと解釈していた。しかし原作者はあの言葉は、恋人ではなく生まれた時からともにいた親友に向けてのものだと。この解釈の違いは小さなものに見えて、大きい。“恋愛”に結び付けたがるのは、映像関係者のよくない癖だ。この違う解釈を持つ両者を満足させるには、どうしたらいいのか。それを悩み、演技を試行錯誤しては分からなくなり自信を失うという負のループに入ってしまった。最近は寝る間も惜しみ、台本や原作を読み込み続けていた。

    「いいねぇ~。理想通りの体型だよ!」
    ニマニマと上機嫌で笑う監督に、ありがとうございますと愛想笑いを浮かべながら答える。結局撮影前の減量で15㎏体重を落としたのだ。マネージャーからは、落としすぎと怒られちょっと太りましょうと言われたがそうもいかない。冒頭部分で痩せていたのに、命の灯が消えかける終盤で太ってはいけないだろう。マネージャーの制止を振り切り、俺は1日1食生活を続けていた。もはやサラダを取ることも煩わしく、スムージーになっているが。役について悩みすぎた結果、俺は不眠気味になり目の下には立派なクマが住んでしまっていた。しかしそれも、役にピッタリだ言われああ寝られなくなってしまったなと思う。きっと寝てクマが無くなれば、監督は困るだろう。
    「流石リアス君だ。理想道理の役作りをしてきてくれた!この調子で、演技の方も頼むよ~」
    そんな言葉をかけられ、なんだか無性に泣きたくなる。任せてくださいなんて見栄を張ってしまう。映画の撮影はこれから2ヶ月という長期間にわたって行われる。大丈夫だろうかなんて今更な心配を浮かべつつ、俺は撮影に臨んだ。

    結果で言うなら、無事に撮影を終わらせることは出来た。ただ体の方はぼろぼろで、撮影期間にさらに体重を落としてしまった。恐らく貧血だと思うが、演技中以外は立ち眩みやめまい、冷や汗が止まらなかった。しかし、マネージャーが少しでも食べてくれと持ってきてくれたゼリーなどを前にしてもろくに食べることが出来ず、更に心配をかけさせるだけだった。ごめんねと謝れば泣きそうな顔で謝らないでください!なんて言われてしまえば、それ以上言うこともできず黙り込む。休憩や移動時間は寝てくださいなんて言われても、目がさえていてろくに眠れない。睡眠不足と減量のせいで、どんどんと悪くなっていく体調に撮影を乗り切ることができるのかと心配したが、カメラの前に立てば不思議と演技に集中できた。おかげで原作者にも満足してもらえるものが出来たと思う。
    「リアスさん、クランクアップでーす!」
    そう言いながらスタッフが渡してきた花束を受け取り、礼を言って回る。今度打ち上げをしようという言葉に、そうですねなんて行けもしない体調で返事をする。挨拶もそこそこに、とりあえず2週間は休養です。寝てください!太ってください!と憤慨するマネージャーに車に運び込まれる。後部座席に押し込められブランケットを渡された。
    「家までちゃんと運びますから、せめて寝てください」
    有無を言わせぬ様子に、後部座席を倒しブランケットを首元までかける。走り出した車の振動に忘れていたはずの睡魔が呼び寄せられる。やっと寝られるなんて思いながら、そっと瞼を閉じた。

    家に着くまで寝ていた俺は、マネージャーに起こされた。彼はこれから事務所に行かなければならないらしいのだが、1日3食と睡眠を必ずとるようにと言って車で去っていった。俺にはもったいないマネージャーだよな。なんて思いながら、家の扉を開ける。するとリビングに明かりがともり、カチャカチャと物音がする。一応芸能人の俺はセキュリティのしっかりとしたマンションに住んでいるので、俺以外に勝手に家に入り込める人物は1人しかいない。
    「ヴォックス?」
    そーっとリビングの扉を開け、声をかける。見れば俺が誕生日にプレゼントした黒のエプロンを身につけたヴォックスがキッチンにいた。
    「ああ、おかえりミスタ」
    振り返ったヴォックスは俺を見るとにこやかに笑って、出迎えてくれた。そこでやっと俺は、長期間にわたった撮影のモードからやっと切り替えられた。どっと体がこれまで以上に重く、手に持った花束の入った袋をドサッと落とす。堪えていた貧血の症状も、極度の眠気もやってきて立てなくなってしまう。このままだと倒れちゃうななんて、どこか冷静な自分が思いながら痛みに耐えるために目を閉じる。しかしいつまで経っても痛みはやって来ず、代わりにぎゅうと暖かいものに抱きしめられていた。
    「あぶないぞ。撮影は無事に終わったのか?」
    「うん。ヴォックスの声聞いたら、一気に役抜けた」
    「今回は特に酷いな。体重も20㎏近く落としたと聞いているぞ」
    どうやらマネージャーがヴォックスにチクったらしい。心配させたくなくて、体重は10㎏減っただけと嘘をついていたのに。立てそうにない俺を、横抱きしたヴォックスがソファに座る。彼の胸元に顔をすりよせると、とくとくという一定の心音が聞こえてくる。
    「スープは作っておいたが、食べれそうか?」
    彼お手製のスープ。きっと野菜をふんだんにつかい、長時間クタクタになるまでじっくり煮込まれているのだろう。隠し味のしょうゆがコンソメと相まって、疲れた体に染み渡る。役に入り込みすぎて倒れ勝ちな俺のために、作ってくれる特別なスープ。きっと食べればお腹がぽかぽかしてしみわたるのだろう。でも彼のぬくもりにつつまれて、彼の心音を聞きながら、隣にいるのが彼だと実感すると瞼が重くなる。
    「おきたらたべる…」
    作ってくれていた彼に、食べる気はあるのだと伝える。するとふっと笑った気配がする。
    「分かっているさ。もう頑張らなくていいんだ。おやすみ」
    耐えていた瞼も、そっと目の辺りを大きな手でふさがれてしまえば陥落する。意識が真っ暗になる中で、かなわないななんて頭の片隅で思った。

    くたりと体の力を抜き、スースーと寝息を立てるミスタはすっかりやつれてしまっていた、無理な減量のせいで、頬はこけてしまっているし、髪もパサついてしまっている。目の下には黒くクマがあるし、抱きしめた体が以前に比べ格段に軽くなってしまっている。本当は寝る前に何か食べさせておきたかったが、限界だったのだろう。抱きしめたとたん、瞼が落ちてきてしまっていた。眠気に耐えながらあとでスープは食べると主張する彼に、愛おしさを感じつつもとりあえず強制的に寝かせることにする。目元に手を当ててやれば、ものの数秒で寝息が聞こえてくる。安心しきった表情で眠りにつく彼を、そっとベッドに運び布団をかける。傍で寝てやりたいが、今は彼のために食事を作ろう。スープ以外にも食べれそうなものを作って、早くフクフクにしてやるのだ。いわゆる憑依型の彼に、役に引っ張られるなとは言えない。だからせめて、役を背負っていない彼を癒せるようにしたいのだ。どうか、俺が彼にとって安息の地でありますように。
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    Lei

    DOODLE🦊の方が一枚上手な🦁🦊
    傾国ミスタ・リアスという男は自己評価が低い。様々な才能に溢れているのに、仲間たちやリスナーからの褒め言葉をちっとも受け取ろうとしないそんな男だ。しかし厄介なことにミスタは、ミスタ・リアスという外見が性的な意味で惹きつけるということだけは理解しているのであった。
    天使の輪が光つややかなミルクティーブロンドの髪に、白く真珠のように透き通った肌、空をそのまま落とし込んだような瞳、つんとした綺麗な形の唇は艶々と魅惑的である。彼はこの外見が人々を魅了することは理解している。それを活用することが特にうまい。それが本当に厄介なのだ。今自分が置かれている状況がいい例だ。
    「ねぇ、ルカ?俺と良いことしようよ」
    どこでミスタのスイッチが入ったのかは分からないが、今自分はミスタに誘惑されていた。ツーっとミスタの細く長い指が怪しく俺の太ももをなぞる。こそばゆい感触に背筋がぞくぞくするが、顔に出ないように必死に堪える。何をするんだと非難を込めて睨んでも、ミスタはただ微笑むだけだ。そして今の彼のほほえみはそれだけで、男をうんと頷かせてしまうくらいの力があった。だがしかし、ここで頷けばマフィアのボスとして、1人の男としての沽券に関わる。嫌だと首を振れば、駄々をこねる子供をなだめすかすような目で見られた。
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    Lei

    DOODLE🖊が死んだ後の👹の話(👹🖊)
    またいつか出会うまでアイクが死んでから何もする気が起きなかった。2人で暮らしていた家は、片づけもせずそのままの状態だった。アイクはいないのに、アイクのいた痕跡だけが残る家は寂しくて静かだった。そんな2人が暮らした家で、1人で何もせずに過ごす。リビングのソファーでただ座って1日過ごす。埃がつもりはじめているのは分かっていたけれど指一本動かす気にはなれなかった。このままではいけないことくらい、400年以上も生きた自分には分かっていた。しかし愛するものを失った衝撃は、自分を惰性でしか生きられなくした。

    そんな消えない喪失感を抱えたまま過ごしていたある日のこと、死んだはずのアイクから手紙が届いた。ピンポーンと呼び鈴が鳴り、アイク・イーヴランド様からのお手紙ですという配達員の声にソファから慌てて立ち上がった。そうやって受け取った封筒の中には綺麗だけど少し癖のあるアイクの字で“ちゃんとご飯を食べなさい”と書いてある一筆箋が入っていた。最初は意味が分からなかった。だけどアイクが言うならしょうがないなと思って、久しぶりに料理をした。食材を買いに、近くのスーパーに買い物に行った。そうして作ったのはアイクが好きだったハンバーガー。パンは出来合いの物だが、パティはちゃんと作った。アイクが死んでから、人外であることをいいことに食事を取っていなかった。久しぶりの食事は美味しかったが、それでも一緒に食べる相手がいないことに胸が痛んだ。
    1996

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