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    parvus_yuu

    @parvus_yuu

    ウォロシマに沼ったオタク。
    ここでは、ウォロシマ現パロの短編練習をしたものをアップしています。

    基本的にイチャラブしてるバカップルな話しかないです。
    思いつくままに書いているため、時系列はめちゃくちゃです。
    一つ一つ、独立した話としてお考え下さい。

    無断転載は固くお断り致します。
    ネタ被りはぜひとも拝見したいです(自分の話、定番ネタが多いから被ると思うので…ネタ被っても書き手さんで個性出るし、ウォロシマたくさん見たい…)

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    parvus_yuu

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    ウォロシマの現パロ再会編その3。
    ボシさん中学2年生。

    ボシさんは転生前の記憶持ちとはいっても子供なので、原作より考えが甘かったり強引だったりしてもいいんじゃないかな…と個人的に思ってる。

    #ウォロシマ
    wolosima
    #現パロ
    parodyingTheReality
    ##現パロなれそめ

    今度こそ、再会シマボシは夕飯と風呂を手早く済ませると、宿題をするからと自室に戻った。
    「さて」
    途中まで綴っていた手紙を最後まで書ききると、飾り気のない白い封筒に入れてケーシィに渡す。
    「これを頼む」
    表にはヒスイの文字で『ウォロ殿』と。裏には『シマボシより』と明記してあった。
    「ケェ!」
    元気に返事をしたケーシィの周りの空間がぐにゃりと歪み、その姿が見えなくなる。
    ヴォン…
    そして一分も経たないうちにケーシィは戻り、その手には淡いブルーの封筒が握られていた。
    表には『シマボシ殿』、裏には『ウォロより』と明記してある。
    「ケェ」
    「ありがとう、ケーシィ」
    お礼に手作りのコトブキマフィンを渡すと、ケーシィは嬉しそうに食べ始めた。
    その様子を微笑ましく見守りながら、シマボシは封筒を丁寧に開封する。
    ペラ…
    丁寧に折り畳まれた便箋を、胸を高鳴らせながら開いていく。
    ──秋も深まってきましたが、寒くて風邪をひいたりしていませんか?──
    いつもどおり季節の挨拶から始まって、ウォロの現状が綴られていた。



    シマボシが三歳の時に公園で再会した後、二人はケーシィを経由して手紙のやり取りを始めた。
    誰かに見られても大丈夫なようにヒスイ時代の文字を使用し、月に一度は近況を連絡し合う。
    ウォロは現在、ホウエンではなくジョウトにいた。
    シマボシが生まれてから側に住みたいとは思っていたようだが、彼の外見が変化しない事を周囲から不審がられないよう敢えて遠方を転々としている。
    彼の特性が無かったとしても、幼いシマボシが親の目を掻い潜って会いに行くのは難しい。
    特にこの辺りはやや田舎という事もあり、親の目を逃れても近所の目から逃れるのは困難だった。
    人の無責任な好奇心がいかに厄介なものであるかはウォロもシマボシも重々承知していたので、会えない事に対する不満を漏らす事は無い。
    会えなくとも連絡を取る手段があり、今は中学二年生のシマボシが成人になれば堂々と会える。
    それまでの時間、文通で愛を育むというのも情緒がある……と、お互いこの状況を楽しんでいた。


    「特に変わりは無さそうだな……」
    机の上でウォロからの手紙を見るシマボシの表情は柔らかい。
    現在の彼は単発アルバイトや契約社員等の仕事で生活費を稼ぎつつ、趣味で各地の遺跡を巡っていた。
    現在はアルフの遺跡が気に入っており、三年ほど通い詰めているらしい。
    「遺跡の調査内容を纏めるのか…読みたいな」
    次回の手紙にその旨を書こうと思いながら読み進めていくと、待ち続けていた一文が最後に明記されていた。
    「……ケーシィ」
    「ケェ?」
    名を呼ばれたケーシィが近づくと、シマボシはぎゅうっとその身体を抱き締める。
    「ウォロと、ちゃんと会えるかもしれない…!」
    ──来年の四月から、ホウエンに住む事にしました──
    どこに住むのか等の詳細は一切無かったが、彼の手紙には確かにそう書かれていた。
    「しばらく堂々とは会えないだろうが、少しでも話せればいいな」
    頬を染めて嬉しそうに呟く主に複雑な気持ちを抱きつつも、ケーシィは良かったねという気持ちを込めてその頭を優しく撫でた。




    年が明けて、二月下旬。
    ほんの少しだけ春の気配を感じる時があると言っても、日が暮れてしまえばまだまだ寒さは厳しい。
    「寒い…タイツ…履きたいな」
    中学からの帰り道。
    アイボリーのマフラーを首にぐるぐる巻き付け、紺色のPコートを身に纏ったシマボシが隣の友人に話しかけた。
    「セーラー服、寒いもんね…ほんと、タイツ履きたい…。なんで白のくるぶし丈ソックスしかダメなんだよぉ…」
    相変わらずコミュニケーションを取るのは得意ではなかったが、前世での経験と反省を踏まえて努力した結果、友人とも良好な関係を築けている。
    「シマちゃん、また明日!」
    「ああ、また明日」
    自宅が近い友人と別れて角を曲がると、シマボシはモンスターボールを取り出そうと鞄の中を探る。
    ここから自宅までは五分ほどかかるのだが、市街地から外れていて周囲には田畑が広がっており、人通りが少ない。
    街灯も薄暗くて心もとないため、シマボシが一人の時はケーシィを外に出して一緒に帰るようにしているのだ。
    「あれ…」
    今日は持ち帰る荷物が多く、なかなかボールが見つからない。
    スー…
    夢中になって探していたせいで、静かに近づき真横に止まったワゴン車に気づくのが少し遅れた。
    「…あ、あった…………ッ⁉」
    スライドドアが開くと同時に、太くてゴツゴツした腕がシマボシの腕を乱雑に掴んで引っ張る。
    コロン…
    そのはずみでモンスターボールが転がり落ちるが、残念ながらケーシィが出てくる事は無かった。
    「な…っ⁉」
    そのまま何かの布で口元を塞がれる。理由は不明だが、自分が拉致された事だけは理解できた。
    「……っ‼」
    ──何とか、外に出ないと……‼
    掴まれた腕を振りほどこうともがくが、自分の後ろにいるため姿が見えない相手の力はかなり強いらしく、びくともしない。
    「早く閉めろ!」
    「分かってる!」
    運転席にいる別の男が怒鳴る。そしてシマボシの腕を掴んでいた男の腕が身体に回されて、彼女はズルズルと車内に引きずり込まれていった。
    「んーッ‼」
    「暴れるな!」
    転生前が転生前だけにドスの効いた男の声程度でビビるシマボシではなかったが、あまりにも分が悪い状況には焦りを隠せない。
    ──どうしたらいいんだ…⁉
    得物があればもう少しまともに応戦出来たかもしれないが、帯刀が犯罪になってしまう世の中だ。
    転生後に両親へ剣術や武術を習いたいと頼んだが、危ないからと反対されて諦めたのも良くなかった。
    知識があっても身体は咄嗟に動いてくれない。今更ではあるが、両親を心配をかけさせまいと意見を譲ってしまった事が悔やまれる。
    「早く出せ…っ」
    ガシッ!
    もう少しで車のスライドドアが閉まるという所で、外から手が伸びてその動きを止めた。
    「……という誘拐事件が起きてますんで。おまわりさん、至急よろしくです!」
    この場にそぐわない陽気な声が聞こえ、スライドドアが勢いよく開かれる。
    「誰だ⁉」
    シマボシを捕えた男の質問には答えず、金髪で片目が隠れた男は彼の相棒に指示を出した。
    「トゲキッス、エアスラッシュ」
    「ほわぁん!」
    シュバババ‼と鋭い音が聞こえ、車体がガクッと下に下がった。
    「タイヤが!」
    運転席の男が慌てふためく。
    「すぐに助けますからね」
    そう言うと、彼はシマボシが落としたモンスターボールからケーシィを出した。
    「ケェッ!」
    ケーシィはすぐに己のやるべき事を理解して、テレポートを発動させる。
    「マズ…っ」
    即座にシマボシの身体はワゴン車の外に転送された。
    「ケェーッ」
    「大丈夫だ」
    しがみついてきたケーシィを抱き締めると、シマボシは顔を上げる。
    「なんで……」
    彼は振り向くと、いつものように右手の人差し指を突き出して小さく振った。
    「詳しくは後で。……トゲキッス、じんつうりき」
    「ほわぁぁ」
    「ぎ、ぎゃあああッ⁉」
    突然頭を抱えて苦しみだす犯人達を、ウォロは冷めた眼差しで見下す。
    「これでも、手加減して差し上げてるんですよ? ……っと、来ましたね」
    遠くからサイレンの音が聞こえ、赤い回転灯が近づいてきた。
    「トゲキッス、もういいですよ」
    「ほわぁん」
    その鳴き声とともに見えない力から開放された犯人達は、その場でパタリと気を失う。
    ウォロは地面に座り込んでいたシマボシの前にしゃがむと、柔らかい笑顔を向けた。
    「間に合って良かった」
    「ウォロ……」
    彼は、数百年前と変わらない大きな手で、シマボシの頭を優しく撫でる。
    「ゆっくり再会を喜び合いたいですが、まずはお片付けしちゃいましょう」


    「なんとお礼を言ってよいやら…本当にありがとうございました」
    警察署に行き、警察官へ事件について話しているとシマボシの母親が駆けつけた。
    娘に被害が無かった事に安堵し、命の恩人であるウォロへ丁寧に頭を下げる。
    「いえ、怪我も無くて本当に良かったです」
    犯人達は現在も取り調べが続いていた。シマボシ個人ではなく、いわゆる『いたずら目的』で女子学生を狙っていたらしいと聞かされている。
    「……ケェ」
    「キミを外に出すのが遅れて、すまなかった」
    「ケェ…っ」
    主を危険な目に遭わせてしまった罪悪感で落ち込むケーシィを、シマボシはぎゅっと抱き締めた。
    「母さん。これからもっと気をつけるけど、やっぱり何かあった時のために対処する方法を学びたい。護身術とか」
    「そ、そうね…危ないから反対したけど、知っておいた方がいいわね。帰ったら、お父さんに相談しましょう」
    話のキリが良さそうなタイミングで、ウォロは自分のリュックサックを背負う。
    「では、ジブンはそろそろ…」
    立ち去る気配を感じたシマボシは、彼の上着をぎゅっと掴んだ。
    「母さん。この人、旅行中だったんだ。もうだいぶ遅くなってしまったし、この辺は泊まる場所も無いし、家に泊めてあげて欲しい」
    「えっ」
    「……部屋は、余っているけど…」
    母親の目には明らかに戸惑いの色が浮かんでいた。
    娘の身を守ってくれた恩人とはいえ、母親からしたら得体の知れない男を家にあげるのは抵抗があるだろう。
    ──シマボシさん…ジブンと話したい気持ちは分かりますけど、やり方が稚拙なのは中学生だからですかねぇ…。
    「いえいえ、お気遣いなく…いざとなれば野宿」
    と言いかけ、ウォロは口を塞いだが遅かった。
    今は真冬、野宿するなんて言ったら──…。
    「この辺りは盆地だから、冷え込み厳しいですよ⁉」
    シマボシの母が青ざめた顔で叫ぶ。
    「あ、それは、その」
    「真冬に、命の恩人を野宿させるわけにはいかない」
    この機会を逃さないという強い意思を込めた指先が、ウォロのコートにがっちりと食い込んでいた。
    「父さんにも、今日の事は説明した方がいいと思うし」
    「そうね」
    母親の了承を得ると、シマボシはちらりとウォロの顔を見る。
    その有無を言わす気が無い視線に、ウォロは小さくため息をついた。
    「……も、もし迷惑でなければ…」
    「決まりだな」
    目論見通りの結果を導き出す事が出来たシマボシの表情は、満足感に溢れていた。



    案内された部屋の中で、どうしてこうなったんだ?とぼんやり思いながら、ウォロはリュックから着替えを取り出していた。
    定期的に貼り替えられているであろう、傷んでいない襖。い草の香りが少し残っている畳。
    廊下に面している方の水越障子も、穴一つホコリ一つ無く手入れが行き届いている。
    「さすが、分家とはいえ地主だけありますね…」
    「ウォロ」
    そんな感想を呟くと同時に外からシマボシの声が聞こえたので、彼は立ち上がって障子を開けた。
    「ずいぶんと強引でしたね」
    「……こうでもしないと話が出来ないだろう」
    ほんの少し罪悪感を感じている彼女の表情を、呆れながらも微笑ましく思う。
    同年代に比べれば表情の変化に乏しいシマボシだが、やはり幼いが故にポーカーフェイスを貫き通す事が難しいようだ。前世の彼女に比べれば、感情の機微が遥かに分かりやすい。
    「そうですね。さ、どうぞ」
    「失礼する」
    入室を許可されてホッとした表情を浮べたシマボシは、ケーシィと一緒に部屋の中へ入った。彼女が二人きりで話す機会を待ち望んでくれていた事に、ウォロは心が温まるのを感じる。
    「……でも、大丈夫ですか?」
    「何が?」
    「年頃の娘さんが、命の恩人とはいえ知らぬ男の部屋にいるというのは」
    彼女の父親とは、夕飯をご馳走になった際に対面した。
    規律と伝統を重んじるタイプ。厳つい顔で口数が少なく少々おっかない印象を与えるが、娘の事を大切にしているのは感じられた。
    「短時間なら問題無い。ケーシィがいるし」
    「信頼されてますねぇ」
    「ケ」
    当然だと言わんばかりの視線を送られ、ウォロはぐぬぬと唇を噛む。ヒスイ時代から相変わらずの生意気な態度は気に食わなかったが、シマボシとの手紙のやり取りはケーシィがいなくては成り立たないので、強くは言えなかった。
    バシュン!
    「ほわぁん!」
    その時、モンスターボールからトゲキッスが勝手に出てきて、愛おしそうにシマボシへ頭を擦り付ける。
    「トゲキッス⁉」
    「ほわぁぁん」
    「ヒスイでアナタが亡くなった後に、トゲピーが進化したんですよ」
    「そうか…! 元気だったか?」
    「ほわぁん」
    「ああ、また会えて嬉しい」
    シマボシがぎゅっとその身を抱き締めると、トゲキッスはその翼で器用に彼女を抱き締め返す。
    「ほわぁん」
    「ケェ」
    そこにケーシィも抱きつき、一人と二匹は再会の喜びを噛み締めた。
    「仲間外れにされるの辛いんですけど」
    「あ、す、すまない」
    「……」
    ポケモン達から離れたシマボシを、ウォロがぎゅっと抱き締める。その身体は緊張でびくりと大きく震える。
    「さすがに、これ以上は何もしないですよ」
    「あ、う、うむ」
    ウォロの言葉に、安堵と悔恨の混ざった声で答えるシマボシ。
    ──初々しい反応のシマボシさん、本当に可愛いですねぇ。
    額に口付けるくらいはいいだろうかと欲が出たものの、ケーシィとトゲキッスが無表情でこちらを見ていたのでやめておいた。
    「……と、時間が無くなる」
    照れで顔を真っ赤にしながら離れたシマボシは、部屋の隅に置いてある座布団を二つ取ると、一つをウォロに渡して、もう一つに自分が座る。
    「では、いくつか質問してもいいだろうか?」
    「どうぞ」
    「なぜホウエンに? まだ四月じゃないだろう?」
    「四月から住むために下見に来ていたんですよ。大学とか」
    「大学?」
    「ええ。四月からピチピチの大学一年生です」
    「……」
    ケーシィとシマボシはキョトンとしたまま、全ての動きを停止した。
    「……ボケたのに、引かないでくださいよ」
    「な、なぜ大学へ?」
    「十五年に一回くらいのペースで通ってるんですよ。情報は常にアップデートが必要ですから」
    ウォロの外見は、二十代くらいで変化が無い。
    そのため土地を移るとまず大学で学んで就職し、頃合いを見て退職し別の土地へ移る……というやり方で、情報更新と資金を増やしてきた。
    「身分証は……?」
    「その辺りは、どうとでもなります」
    公に出来ないネットワークにアクセスし、対価さえ用意できれば大抵の事は実行可能である。
    前世の記憶を持ち合わせている彼女はすぐに悟ったようで、それ以上追求する事はしなかった。
    「ホウエンを選んだ理由は?」
    「ジョウトにいる時間もだいぶ長くなって移動の必要があったのと、そろそろいいかなって」
    「何が?」
    「年齢差ですよ! シマボシさんが十四、ジブンが十八。四歳差のカップルなら不自然じゃないでしょう?」
    「かっ……」
    シマボシが耳まで真っ赤に染めて動揺すると、ウォロはニヤリと笑う。
    「その辺の反応は、年相応なんですねぇ」
    「……ケェ」
    ビビビビビッ‼
    ケーシィが腕を前に伸ばすと、虹色の光の束がウォロの顔面に向かってピンポイントで飛んでいった。
    「ちょ、マジカルシャインはやめてください!」
    「ケーシィ、家が壊れるから止めてくれ」
    「ケェ」
    シマボシが静止すると、ケーシィは素直に両手を下ろす。
    「……この塩対応も、久しぶりだとご褒美ですね…」
    こうしているとヒスイの地で皆で暮らしていた日々が思い出され、ウォロの頬が緩んだ。
    「あ、住む所は決まったのか?」
    「ええ。駅の向こう側です……えーと、近くに高校がある…」
    「あの辺りか」
    ここから駅まで十分ちょっと、そこから該当の高校まで八分程。
    自宅から二十分圏内なら、悪くはない距離だった。
    「あの高校にシマボシさんが通えば、会いやすくなりますね。なーんて」
    「……決めた。第一志望はそこにする」
    「え」
    冗談めかして言った事に真面目な答えを返されてしまい、ウォロが固まる。
    「元々、進学候補には入れていたんだ。少し安全圏から外れているが、これからの努力で補えるレベルだ」
    「ご、ご両親の意見は?」
    「この辺りで一番偏差値が高い高校を目指すのだから、賛成こそすれ反対は無い」
    「あー……そ、そうです……か」
    自分に逢いたいからという理由で決めてもいいのかと言いかけたが、シマボシの目を見て諦めた。
    その程度の意見では、決断した彼女を止める事が出来ない。
    「ウォロ、バイトはやるのか?」
    「え? ええ…蓄えはいくらかありますけど、無理のない範囲で……」
    「なら、無理のない範囲で私の家庭教師をお願いしたい。以前、やった事があると手紙に書いていたよな?」
    「まぁ…中学・高校生相手の家庭教師のアルバイトは、何度もやった事がありますけど…」
    休日は遺跡の調査に当てたかったため、勤務時間が安定しており収入も悪くない家庭教師のアルバイトは定期的に行っていた。
    分かりやすい解説と容赦のない厳しい指導で、どこの地方へ行っても高評価を得る実力は持っている。
    「学習塾だと個別の対応がどうしても甘くなる。私には、苦手な部分をピンポイントで教えてくれる家庭教師の方がいいんだ」
    シマボシの成績は、常に上位グループには食い込んでいた。
    基本的な理解は申し分ないのだが、理数の引っ掛け問題に少々弱いため、応用問題を重点的に指導して欲しいという希望がある。
    「週一で構わない。金額はこれくらいで……」
    「ご両親に無断で報酬を決めて良いんですか⁉」
    家庭教師の報酬としてはそこそこ良い金額を提示され、ウォロは彼女の話を静止した。
    「この条件で探し始める所だったんだ」
    「そ、それならいいですけど……」
    「両親は女性の家庭教師が良いと言ってたんだが、条件が合う人がなかなかいなくて……」
    「そうですね…特に理数系を教える女性家庭教師は少ないですからね」
    かつて所属していた家庭教師の派遣業者も、頭を悩ませていた事を思い出す。
    「キミなら何も問題無い」
    「それ、シマボシさんだから言えるのであって……」
    「他の男性が私を指導するのは嫌だろう?」
    まだ中学生とはいえ、自分の嫁になる予定の女性が知らない男性と二人きりというのを想像すると、とても不快だった。
    「………………………………ジブンがやります」
    「いいのか⁉」
    「って、ジブンにやらせる方向に持っていってるでしょ⁉」
    ウォロがそう言うと、シマボシはついっと目を逸らす。
    「……そうすれば、自然に会えるじゃないか……」
    「……アナタって人は…」
    彼女がぷぅっと頬を膨らませる姿が可愛くて思わず抱き締めてキスしたくなるのを、ウォロは理性を総動員させて耐えた。
    「……やるからには徹底的に教えますからね? イチャイチャするのとか無しですよ?」
    「もちろんだ。恋愛にうつつを抜かして受験に失敗する気は、さらさら無い」
    ウォロとの逢瀬も高校合格も絶対に両立させる、という強い意思。
    彼女がそこまで覚悟を決めて己に向き合ってくれるのだから、応えないわけにはいかなかった。
    「じゃあ、ご両親にちゃんと説明して了解を得ないとですね」
    立ち上がったウォロは、シマボシに手を差し出す。
    「ああ。絶対に、良いと言わせてみせる」
    その手をしっかりと握ると、シマボシは力強く頷いた。
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