Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nashireonnn

    @nashireonnn

    なしれおです。
    名前をよく間違われます。
    文字を書きます。
    その時好きなものをもちょもちょ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🍙 👏 👍
    POIPOI 13

    nashireonnn

    ☆quiet follow

    おにぎり屋する月島と常連の鯉登の話。鯉→月

    ##鯉月

    🍙「鯉登課長、お昼一緒にどうですか?」
     昼休みの時間、幾人かの部下たちから伝えられるお決まりの誘い文句に、慌てて身支度を整えながら答える。
    「すまん、今日は先約があるっ!」
     そう言いながら、走るようにオフィスを飛び出る。何度も何度も歩んだ道を、人にぶつからないよう、しかし誰よりも早く速くと駆けていく。そうして辿り着いた一軒の店の前で、鯉登は立ち止まって呼吸と乱れた髪を整えた。
     こじんまりとした小料理屋のような店の引き戸に手を掛けると、カラカラと軽やかな音を立てて扉が開く。掲げられた暖簾を潜れば、見知った顔が出迎えた。
    「いらっしゃいませ。鯉登さん、早いですね」
    「うん、走ってきたからな!」
     カウンター席に腰掛けながらそう言えば、すぐに冷たいおしぼりと少しぬるめ水がスッと差し出される。それらを受け取り、慣れた手つきで手を拭いて水を飲み干す。そんな鯉登の姿に、店主が二杯目の冷たい水をコップに差し入れながらほんの少し眉を下げて笑う。
    「そんなに慌てていらっしゃらなくても、飯は逃げませんよ」
     その言葉に、二杯目の水を受け取りながら鯉登は反論する。
    「何を言う!月島さんの月一おにぎり定食屋だぞ、ファンとしていの一番に来たいではないか」
    「ふ、それは、嬉しいですね」
     鯉登の言葉に、店主の月島は照れたようにもう一度笑うと「今日はどうされますか」と尋ねた。
    「おすすめを二つ頼む。あと、持ち帰り用にいつものを」
    「かしこまりました」
     手短な注文を終えると、月島は慣れた手つきで調理に入る。店内には雰囲気を邪魔しないボリュームで民放のラジオが流れていて、鯉登はそれを耳に流しながら月島の作業姿を眺めた。
     鯉登がおにぎり専門店の【つきや】に通い始めたのは二年ほど前になる。当時大きなプロジェクトを抱えていた鯉登は心身共に疲れ果て、食事もままならない状態だった。そんな時、たまたま目に入った店の握り飯をなんとなく買い、仕事をしながら食べた瞬間、あまりの美味さに衝撃を受けて椅子を倒しながら立ち上がった日が始まりだった。
     それから鯉登は毎朝、本当に毎日【つきや】に通うようになった。あっという間に常連になり、あっという間に「いつもの」が通じるようになったのだ。わかりやすくハマっている様子に、店主の月島も最初は戸惑っている様子だったが、裏のない無邪気さと手放しで商品を褒めてくれる鯉登に次第に心を許していっていた。
     【つきや】は通常持ち帰りのおにぎり専門店ではあるが、半年ほど前から月に一度だけの「おにぎり定食」を始めた。月に一度、昼の時間限定で、こじんまりとした小料理屋を間借りする形で営業を行う。出されるものはもちろん握り飯と、旬の野菜を取り入れた味噌汁に漬物、小鉢が一つ。至ってシンプルな内容だが、出来立てのおにぎりが食べられるのが最高だと、鯉登をはじめとした常連からの評判は上々であった。
     月島は愛想の良い男ではないが、冷たいわけではない。暑い日にはさりげなく冷たいお茶をくれるし、雨の日は握り飯を入れる袋をビニールで包んでくれる。寒い日は小さなカイロを添えて「足下、気を付けてくださいね」と優しい一言も添えてくれる。仕事が立て込み、心が荒んでも、月島の握り飯を食べると元気が出たし、月島とほんの少しの会話をして小さな優しさを受け取ると気分が上がった。
     誰にも言っていないし、言うつもりもないが、鯉登は月島のことをいつしか憎からず思うようになっていた。月に一度の「おにぎり定食屋」は、いつもと違う月島の姿を見られる格別な日だった。小さな背丈だが大きな手で優しく握られた白米を月島に見守られながら食すのは少々面映いが、それもまた普段は言えない感謝の気持ちを伝えられる瞬間なのだ。
    「お待たせしました」
     ぼんやりと月島を眺めていれば、あっという間に目の前に握り飯の乗った盆が置かれる。ふわりと湯気が立ち、炊きたての米と優しい味噌汁の匂いがなんとも食欲を唆る。
    「いただきます」
     あたたかな握り飯を手に取り、ゆっくり、じっくりと味わう。暫くすれば、他の常連であっという間に店は賑やかになる。それまでのほんのひと時、鯉登は月島との食事を楽しむのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍙🍙🍙
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nashireonnn

    DONE一個前のやつの続き。
    間に合わなかった鬼太郎と親父が水木の肉と骨をせっせと集めてる話。
    ほぼ鬼太郎しかいない。鬼→水への愛を語るだけの話。
    このままならずっと一緒にいられるけどやっぱり生身の身体にも触れたい、心がふたつある〜!って話。
    もう一個オマケが出来たらまとめるかもしれない
    美味なるものよ、此処へ ──カラン、カラン。
     蛙がゲコゲコと鳴き、鈴虫がリィリィとさざめく。天辺には青白く輝く満月がいて、薄暗闇の世界を照らし続けている。
     ──カラン、カラン。
     小さな生き物たちの声だけが支配する空間に、鉄の筒に木を打ち付ける軽快な音が響き渡る。使われなくなって久しい廃工場のタンクの上に、一人小柄な少年が座って夜空を眺めていた。
     何かを待っているような、ただただぼんやりとしているような、どちらとも取れる様子の少年はカランカランと一定のリズムで足に履いた下駄の踵をタンクに打ち付けて鳴らす。
     ──カラン。
     足を動かすのを止めれば、途端に世界の音は自然のものだけになる。ゲコゲコ、リィリィ、さざめく音と、ザァとゆるやかに吹く風が少年の髪を揺らす。それらをジッと肌で感じながら、少年は腕に抱いた桐の箱をするりと撫でた。
    4144

    nashireonnn

    DONE「しつこくて頑固なシミみたいなもんですよ、困りますね!」

    人外鯉登対人間鯉登×人間月島(転生パロ)
    夢の中で黄泉竈食ひさせようとするヤンデレ味の強い人外鯉登と、人間らしい感情で月島を愛してる鯉登がバチバチしてる話。またしても何も知らない月島さん
    (細かい設定はついったに画像で投げます)
    白無垢に落ちた血のように 広く、広く。果てなどないように見える白い空間になんとはなしに佇んでいると、不意に声を掛けられた。
    「どうした、月島軍曹?」
     掛けられた言葉に、ぼんやりとしていた意識を取り戻す。目の前にいつの間にか現れた男が、椅子に腰掛けながら優雅な手付きでティーカップを持ち上げている。静かにカップを傾けて中身を飲む仕草をすると、男は月島を見上げて言った。
    「突っ立っていないで貴様も座れ。上官命令だ」
    「……は」
     軍服に身を包んだ男にそう言われ、月島は椅子を引いて向かい側に腰掛ける。被っていた軍帽を脱いで机の端に置き、背筋を正して向かい合う。月島が着席したのを見て、男は机に置かれたティーポットを傾けてその中身を空いていたもう一つのカップに注いだ。それを月島に差し出し、男はもう一度手元のカップの中身を煽った。
    3232