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    ようかい

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    ようかい

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    mハウスショックでなんかできました
    2時間です

    怪文書

    好転帰ろう。依頼を終えたリメアティアは小雨が降り少し柔らかくなった土を踏みしめる。

    依頼は、リメアティアに回ってくるものは主にベビーシッターや雑用等。冒険者とはなんだろうと首を傾げたくもなるが、そこはリメアティア。冒険者登録こそすれど一切冒険をしないのでwin-winと言ったところだろう。

    ここは黒衣森であるから、家に帰る前に一度グリダニアに寄ろう。そう考えて何気なく空を見上げた。

    ふと目に飛び込んだのは木々の隙間から見える七色の束。虹だった。
    それを見た瞬間リメアティアは目を見開く。

    虹がこんなにきれいなものだったなんて知らなかった。

    いつもは気にもとめない七色のそれが空にこんなに映えるなんて
    なにか特別なものを見ているような、そんな心地すらする。
    無意識に手はリンクパールに伸びていた。

    実のところ、木々の隙間から見える虹に人を魅了する力なぞ無い。開けた空で見る大きな虹であれば誰もが指差し立ち止まるだろう。
    しかしこの虹は細く、木に遮られた小さいキャンバスの間を縫うように光っていたので、リメアティア以外に気付かれることはなかったのだ。

    それでも、リメアティアにとっては十分すぎるほど鮮やかな虹であった。

    パールから呼び出し音がなる。その間も虹から目をはなさず、ただじっとその場に立っていた。

    コール音が切れ、呼び出した相手の名前を呼ぶ。
    どうしてもこの美しい虹があったことを共有したい、と思ったのだ。

    「シラノ」
    「うん。どうしたのメア」
    「今、虹が」
    「うん」
    「虹が綺麗なんだ。東部森林のほうで、枝の隙間から見えてる。」
    「わ!それはすてきだね」
    「………おう。」

    しまった。

    リメアティアには、語彙がなかった。
    読み書きを覚えたのは最近で、育った環境に詩なんてものはなく、あまつさえ最後に聞いた歌は祖母の子守唄だ。

    どれだけ美しいかを説いても、馬鹿の一つ覚えのように綺麗としか言えない。
    自分以外を攻撃する手段しか学んでこなかった自分をこれほどまでに憎らしく思ったことはないだろう。

    「まぁそれだけだが。なんか、言いたくなって」
    「…うん。うれしいよ。ありがとう。」

    ないものは仕方ないと諦めて話を締め、シラノはいつもよりさらに柔らかな口調で感謝を述べた。

    おう、と軽く返事をして沈黙が流れる。
    よく考えれば(考えなくても)おかしな話だ。虹が見えるから来いでもなく、グルポを取って見せるでもなく、ただ虹を見たというだけの報告。

    大体の人間は「は?」ってなるだろう。
    こいつどこまでも俺に甘いな。

    そんなことをぼんやり考えつつ虹を眺めていると色が薄れ始めていることに気づく。

    「……あ、消える」
    「虹ってすぐ消えちゃうからね」
    「いつもは気にしねーからな、知らなかった。消えたわ」
    「そっか。でもきっといいことあるよ」
    「虹見たぐらいで大袈裟だろ。じゃあ切る」
    「あ、うん。気をつけて帰ってね」
    「言われなくても」

    ぷつ、と通話を切る。

    きっといいことがある、ね。
    どうだか。

    そう考えるリメアティアの口角は上がっていた。

    リメアティアは気づいている。
    いつもは気にしない虹に気づいた、ならば、見落としてきたなにかに気づけるのだと。

    そう、気づいている。
    変わっていく自分自身に気づいているのだ。
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    ようかい

    TRAINING雨だけになんかしっとりしました

    前提知識
    ・エリックという男は一回死んで死ぬ前にデュナミスで自身の再現体を作成してある男に取りつかせている
    ・アーテリスでは実体化できず、存在が知覚できないのでミニオンの魔導ビットを改造して(発音)それを操作することで意思疎通している
    ・イヴォカという少年は前世がガレマール市民で前世の記憶がある

    頓智気な自覚はあります!
    どうしてふぉろわ限定できないの!?
    通り雨エリック・セローは雨が苦手だった。
    自分の死因だからだろうか、それとも自分が一番想う人が雨を好きではないからだろうか、あるいはデュナミスの再現体となった自分が周囲の人間の想いを無意識のうちに感じているからだろうか。
    理由は全くの不明であったが、おそらくそのどれもが少しずつ作用してそうなっているんだろうと考えていた。

    苦手というほどでもない、と自分に言い聞かせていたし、彼は自分がおもうよりも精神的に老成してしまっているので(アーテリスで彼の表を見れるのは世界で一人だけだが)表に出していないだけであった。

    そんな雨の日、エリックとイヴォカが東部森林で雨宿りをしていた。

    しまわれないまま持ち主が居なくなってしまった小さな天幕の下に、突然降ってきた雨から避難して暇そうに雑談をしている。
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