Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    cheng_lyd

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    cheng_lyd

    ☆quiet follow

    再掲。月→鯉→平の話。
    全員一方通行誰も報われない。

    彼の人「お慕いしております、鯉登少尉殿」
    常と変わらぬ顔で目の前の男、月島はそう言った。
    「ああ、私も好きだぞ月島‼お前は気が利くし、鶴見中尉殿に信頼されている。部下にも慕われているな。背が少し低いが……」
    「わかっておられるのでしょう?人が悪いですね」
    感情の読めぬ声ではあったが、冗談や揶揄いの様子はなく、ましてや友愛や敬愛でもないのは目を見れば明らかだった。
    「…気持ちはありがたいが、私はそれに応えることはできん」
    私がそう言えば、断られると思っていなかったのか月島は少し目を見開き「何故です?」と問うた。
    「何故?私が聯隊旗手を志しているのはお前も知っているだろう?恋人などを作るつもりはない」
    これは本当のことだ。
    「あんな目を、私に向けながら…?」
    ボソリと月島が呟いた言葉は私には聞こえなかった。
    「あんな熱の籠った目を向けておきながら恋人を作るつもりはない?どの口が言っているんですか。何故私の気持ちに応えられないんです?あなたも私と同じ気持ちでしょう‼」
    掴み握り締められた両肩がギシリと軋んだ。
    『こいつはこんな顔もするのか』と、どこか他人事のように少し冷めた頭で思った。
    「忘れられない人がいる」
    「……は?」
    これも本当のことだ。
    「何故、と言っただろう。簡単なことだ。私には忘れられない人がいるのだ」
    掴まれている両肩に更に力が入り、骨が折れそうな気配がした。
    「鶴見中尉ですか…?」
    「……いいや違う」
    「では「鯉登平之丞……私の、兄だ」
    「兄、君…?」
    流石の月島も驚いているようだった。それはそうだろう、恋愛感情が関わる話に出てくるような人ではないからな。
    「どういうことですか」
    「熱の籠った目を向けていたのなら謝ろう。勘違いをさせてしまったな。だが、生きていれば、兄さあは三十四歳…お前と同じくらいなのだ月島…」
    「兄君と、重ねていたのですか」
    「そんなつもりはなかったんだが…すまない」
    兄と重ねていた自負はあったが、そこまで酷い目を向けていたとは思っていなかった。
    私は兄の代わりを探したいわけではない。兄の代わりが欲しいわけではない。兄が、欲しいだけなのだ。もう何処にもいない、私の、私だけの兄が。
     
    「兄君の代わりで構いません。私を、あなたの特別にしていただけませんか?」
    「…何を言っているのかわかってるのか、月島」
    「私はあなたが好きです。あの視線を受ける前にはもう戻れないのです」
    「お前は…酷い男だな」

    兄の代わりを探したいわけじゃない——

    「好いた男が好いてる男に重ねられるのだぞ。私に、心で留めさせておいてくれないとは」

    兄の代わりが欲しいわけじゃない——

    「私は兄さあを忘れることはできない。生涯唯一人の私の愛した人だ。お前はずっと兄さあの皮を被っていることになるのだぞ」
    「それでもあなたの目は私に向いているでしょう?」
    「…やはりお前は、酷い男だ」

    兄しか愛せない私もまた、酷い男だ——
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    cheng_lyd

    DONE現パロside鯉登②
    杉元と鯉登が互いを一方的に認識しながら人生を生きている。途中モブが出てきます。中学生・高校生編。
    眉毛が変な男と傷が凄い男の話【side鯉登】
     
     ずっと気になっている男がいる。
    その者はいつも帽子を被っていて、身長は私よりも少し大きい。身体つきも何か運動をやっていたのか厚みもあり、ガタイもいい。
     パッと見は強面に見えるが、よく見れば男前な顔立ちをしている。誰にでも優しく、無類の可愛いもの好きでもあるようで周りからの評判も悪くない。しかし私の頭にずっと残っている理由は、そんなものなどではなく単にあの男の顔に走る大きな傷が目につくからなのだ。それしかありえない。
     
     私が初めてあの男を目にしたのは、確か私が中学生の頃だっただろうか。そう、あれは剣道の強化合宿に行っていた時だった。
     あの日は他の友人達と朝から集合し、合宿場所へ向かっていた。駅からマイクロバスで移動している途中、外を眺めている時だった。信号で停まった際に高齢のご婦人に手を貸している男が見えた。典型的な人助けをするやつもいるもんだと思いながら、なんとなくその男をじっと見つめていると、ふと被っていた帽子をあげた拍子に男の顔が見えた。
    3040

    recommended works