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    cheng_lyd

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    cheng_lyd

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    現パロside杉元①
    杉元と鯉登が互いを一方的に認識しながら人生を生きている。途中モブが出てきます。小学生・高校生編。

    眉毛が変な男と傷が凄い男の話【side杉元】
     
     ずっと気になっているやつがいる。
    そいつは浅黒い肌をしていて、背は俺よりも少し小さい。身体は細いわけじゃないけど、俺に比べたらヒョロッとしてる。
     芯の強そうな目をしているし顔はスゲー美人だけど、口を開いたらめちゃくちゃ我儘。だから俺の頭にずっと残っている理由は、きっとあいつの眉毛が特徴的で変わっているからだ。断じて好みのタイプだったからとかじゃない。
     
     初めてそいつを見かけたのは、俺がまだ小学生の時だった。あの日俺は、二人の幼馴染と三人でちょっと遠くのデカい公園に遊びに行っていた。そこは遊具もたくさんあるけど、原っぱが広くて自然が豊かだったから、俺たちみたいな子どもに大人気な場所だった。何よりたまに来る移動動物園ってのが更に子ども心をワクワクさせるようなところだった。
     「今日は晴れてよかったな‼」
     その日は長雨が続いていた時期の待ちに待った快晴で、久しぶりに公園で遊べることに俺達は朝から出掛けていた。
     「うわー‼︎すっげー人いる‼︎」
     久々の快晴に考えることはみんな同じだったのか、公園はいつもよりも人が多いように感じた。
     「遊具使ってるやつも多いなあ、何して遊ぶ?」
     「原っぱの方はまだあんまり人いないしそっちで遊ぼうぜ‼」
     「今日は久しぶりにお天気だけど、動物園の人来るかな?」
     「どうかなぁ、掲示板には何にも書いてなかったよな?俺も遊びたいから来てほしいけど」
     なんてワイワイ騒ぎながら、久しぶりの外での遊びに大はしゃぎしていた。
     暫く広場や遊具で遊んだりしていたのだが、急にどこからか泣き声が聞こえてきた。
     「あのさ、なんか泣き声?みたいなの聞こえない?」
     「ほんとだ、誰か泣いてるのかな?」
     キョロキョロしながら泣き声の主を探していると、少し離れたところで背の高い大きなお兄さんに抱っこされながらすごい体勢で泣いているやつがいた。
     「……あいつかな?」
     
     「音〜〜、そげん泣かんでんよかじゃろ〜」
     「なんでどうぶつどんおらんのじゃ〜〜‼あにさあいっていった〜〜〜〜‼」
     「兄さあもいっち思うたたっどん、ごめんなあ音〜」
     キエエエエエエとかよくわからない泣き声を響かせながら泣いているやつと、それを抱っこしながら困った顔をしているお兄さんが俺は無性に気になってしまい、話しかけに行ってしまった。
     「すごい泣いてるけど、どうしたの?」
     急に話しかけたもんだから、お兄さんはビックリしていたけれどすぐに「ああ、ごめんじゃうるさかったかな?」と謝ってきた。かなりのイケメンだったけど、変わった眉毛をしている人だった。
     「そうだ、ねえ君この公園にはよく来るのかい?ここには動物が来たりするって聞いたんだけれど、今日は来るかどうかとかわかったりするかな?」
     どうやら変な眉毛のお兄さんたちはこの辺の人じゃないらしく、ここについてはあまり詳しくないみたいだった。
     「動物園はいつもたまにしか来ないよ。来る時はあそこの掲示板に書いてあったりするけど、今日なんにも書いてなかったしいつも来る時間過ぎてるから来ないと思う」
     「そうなのかあ、丁寧に教えてくれてありがとう。音、今日はやっぱい動物どんは来んのじゃって。兄さあがちゃんと調べんやったでごめんなあ」
     腕の中でぐんにゃりしているやつにそう言うと、「いやじゃ‼おいはきょうどうぶつどんあにさあとみっとじゃ‼」と、キエエエエエエとまたよくわからない奇声をあげて泣きだしてしまった。
     俺はというと、泣きべそかいてる顔を見て思い出したことがあり、ゴソゴソと自分のポケットを探っていた。
     「これ‼やるからもう泣くなよ‼」
     ポケットから出したのは、その移動動物園で遊ぶと貰えるウサギのキーホルダーだった。
     キーホルダーを見たそいつは「うさぎどんじゃ…」と言ってやっと泣き止んだ。
     「可愛いだろ?お前にやるよ」
     「ほんのこて?よかか?」
     「いいよ、それにこのウサギなんかお前に似てるじゃん」
     俺が渡したウサギは、茶色の色したフワフワの手触りのやつだった。そいつは俺の手からウサギを受け取ると、「あにさあ‼︎おいのうさぎどんじゃ‼︎」とめちゃくちゃ嬉しそうに報告していた。
     「君、このキーホルダー本当に貰っても良いのかい?」
     そう聞かれたから、俺は頷いて答えた。
     「ありがとう、優しい子だね。ほら、音、彼にきちんとあいがとを言いやんせ」
     「あいがと‼」
     そう言ってニコニコと嬉しそうに笑った。その顔を見たらなんだか胸がポカポカしてきて、嬉しいような照れ臭いような気持ちになった。
     「佐一‼」「佐一ちゃん‼」
     その時幼馴染二人が呼んでる声が聞こえ、俺は「すぐ行く‼」と言った。
     「じゃあな‼あんまり兄ちゃん困らせたりすんなよ‼」
     「そげんこっせん‼」
     「あっ、君何かお礼を…‼」
     そんなんいらないよ‼︎と言いながら俺は幼馴染達のところへ戻った。
     「突然行くからどうしたのかと思ったぞ」
     「あの子泣き止んでたね、佐一ちゃんいったいなにしてきたの?」
     俺は「別に何にもしてないよ」と二人に言いながら、あいつも変な眉毛だったなあと考えていた。
     「泣いてた子どんな子だったの?」
     「なんか、変な眉毛のやつだった‼」
     なあにそれ〜と三人でケラケラ笑いながら俺達はまた遊びに夢中になっていった。
     
     「あにさあ、うさぎどんおいににちょっ?むぜ?」
     「音に似てむぜね。良かもんをもろうたね、大事にしやんせ」
     向こうでそんな会話がされていたことなんて、俺はもちろん知らない。


     
     
     次に会ったのは、高校にあがった後の修学旅行先だった。
     場所は鹿児島。まさかそんなところで見かけるだなんて思ってもいなかった俺は、とにかく驚いた。
     だって考えてもみろ、小学生の頃にちょっとした接点があっただけのようなやつだ。普通に考えたら忘れてるし、正直俺だって忘れてた。それでも思い出せた理由は、強烈に印象に残っていた奇声と、あの変な眉毛のおかげだろう。
     何で鹿児島で会ったのかっていうと、当時つるんでいた友達の一人が剣道に熱を入れているヤツだったってだけ。
     本当にたまたまだけど、修学旅行の日程と剣道の大会の日程が重なってたんだ。それに気付いたそいつが、「どうしても大会を観たい‼全部じゃなくていい、一人の試合が観れればいい‼」とあまりにも熱望するもんだからそんなに観たいなら行ってもいいよぉとなったのだ。
     俺は柔道一筋だったから剣道には全然詳しくないけど、そんなにしてでも観たい人がいる気持ちはなんとなくわかった。
     「お前の観たい人ってその大会出るの?」
     確証はないけど物凄く強い子だからきっと出る‼杉元ならこの気持ちわかってくれるよな‼一緒に行こうな‼と念を押され、あれよあれよと言う間に結局俺も行くことになった。
     教えてもらった情報によると、名前は『コイトくん』。小さい頃から大会の常連で、それはもうめちゃくちゃに強いらしい。一度戦ったことのある友人は、「コテンパンに叩きのめされたよ…」と遠い目をしていた。
     待ちに待った修学旅行当日、俺たちは鹿児島観光を楽しみながら大会会場に来ていた。ワクワクしている友人を横に、今更ながら俺は観に来たのが中学生の大会だったことに驚いていた。
     「なぁ、コイトくんって…」
     「大丈夫だって杉元、ちゃんと今日の大会に出るから‼」
     「や、コイトくんって中学生なの…?」
     俺言わなかったっけ?それは聞いてない。まあでも彼は中学生の次元じゃないから。
     中学生の次元ってなに?と思いつつもここまで来ちゃったしまあ行くか〜と中に足を踏み入れた。
     会場内は既に試合中だったこともあって結構な熱気だったが、こういうのってやっぱ悪くねえなぁと浸りながら席に座った。
     「杉元、鯉登の試合はもうちょっと後みたいだ」
     それならば、と折角なので試合を観ていたが中々と迫力があって面白かった。これならコイトくんの試合も楽しみだなと思っていたところで、一際歓声があがった。
     「杉元‼次だ‼見逃すなよ‼」どうやらコイトくんの試合が始まるようで、いかに注目を集めている選手なのかがわかった。
     結論を言うと、コイトくんは凄まじかった。試合が始まる前のピリッとした雰囲気、面で顔が見えないはずなのに強い目をしているとわかる姿、そしてキエエエエエエ‼と叫んだその声。何一つ、俺は目を離すことが出来なかった。
     隣で盛り上がっている友人に言葉を返すことすら出来ず、俺はひたすらコイトくんを見つめていた。心の奥底にある何かが蓋を開けて出てこようとしていた。それが何かはわからなかったけれど、俺は確かにコイトくんをいた。
     気付くと試合は全部終わっていて、優勝はやっぱりというかコイトくんだった。表彰式の際初めてコイトくんの顔を見た俺は、そこでようやく彼が泣きべそをかいていたかつて会った子どもであったことに気付いた。
     『あの顔って…間違いねえ‼あの時の泣きべそ小僧じゃん‼マジかよ、こんなとこで会うもん?』急に昔のことを思い出してそんなことあるもんなんだなぁとちょっと感動しながら、隣の友人と席を立った。
     「杉元、途中様子が変だったけどなんかあったか?」
     コイトくん昔会ったことあるかもしれねぇと思っただけと返しながら、さっさと戻ろうぜそろそろ時間だ。と急ぎ足で合流場所へ向かった。
     
     「杉元気付いてなかったかもしんねぇけど、表彰式の前鯉登がこっち見てたんだぜ?」
     「お前一応顔見知りなんだろ?お前に気付いただけじゃねえの」
     そう言いながらも、コイトくんが見ていたのはきっと俺だったって不思議と確信していた。

     
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    cheng_lyd

    DONE現パロside鯉登②
    杉元と鯉登が互いを一方的に認識しながら人生を生きている。途中モブが出てきます。中学生・高校生編。
    眉毛が変な男と傷が凄い男の話【side鯉登】
     
     ずっと気になっている男がいる。
    その者はいつも帽子を被っていて、身長は私よりも少し大きい。身体つきも何か運動をやっていたのか厚みもあり、ガタイもいい。
     パッと見は強面に見えるが、よく見れば男前な顔立ちをしている。誰にでも優しく、無類の可愛いもの好きでもあるようで周りからの評判も悪くない。しかし私の頭にずっと残っている理由は、そんなものなどではなく単にあの男の顔に走る大きな傷が目につくからなのだ。それしかありえない。
     
     私が初めてあの男を目にしたのは、確か私が中学生の頃だっただろうか。そう、あれは剣道の強化合宿に行っていた時だった。
     あの日は他の友人達と朝から集合し、合宿場所へ向かっていた。駅からマイクロバスで移動している途中、外を眺めている時だった。信号で停まった際に高齢のご婦人に手を貸している男が見えた。典型的な人助けをするやつもいるもんだと思いながら、なんとなくその男をじっと見つめていると、ふと被っていた帽子をあげた拍子に男の顔が見えた。
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