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    Cherry_7396

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    八月に出す予定の処女新刊、【ハイポクシフィリア・マゾヒズム】の冒頭部分。お見せできるところまで。多分これがサンプルになる気がします。
    現パロ長晋、特殊性癖、性的犯罪表現注意。年上×年下です。

    ハイポクシフィリア・マゾヒズム 高杉晋作が己の性的嗜好に気付いたのは大学を入学した頃のことだ。それまでは自転車と徒歩で通学していたのだが、初めて満員電車に乗った時にそれを知った。

    「ぁ…………」

     か細い声が漏れる。はっと息が詰まって、押し寄せる人の波に圧迫される。態と位置取ったドアの前。しばらくは反対側のドアしか開かない満員電車の中。つまり高杉は、自身の目的の駅に着くまで人の波とガラスに挟まれて圧迫されるということだ。その間およそ一時間。
     ドアに押し付けられ、息が詰まる。ドクドクと鼓動が高鳴る。頬が高揚して、興奮していくのが分かる。じわ、と下着が濡れる感触がする。
     ガラス張りの電車のドアには発情した男の顔が写っていた。
     
     大まかに分類するならば、窒息性愛ということになるのだろうか。物理的に圧迫され、息が詰まるような感覚が快感となる。
     高杉はそれまで、自身の性癖は至って普通だと思っていた。
     初めて大学へ通学する時に利用した電車で初めて満員電車に乗り込んだ瞬間、妙に心が騒めいた。気のせいだと思っていたが、降りる頃には覚えのある感覚が蘇り、まさかと思ってトイレに駆け込めば下半身はハッキリと反応していた。繰り返すこと一年。高杉は自身の性癖を認めるしかなく、受け入れるしかなかった。
     受け入れてしまえば幾分か楽になれたが、その分犠牲となるものが増えた。
     当時付き合っていた彼女と別れた。理由はセックスの相性というより高杉の性癖だ。人並みにある羞恥心と人並み以上にある秩序が自らの性壁を曝け出すことを許さなかった。だからといって手を抜いていたわけではない。高杉は己の持てる全てで彼女を愛したし最大級に優しく抱いていたと自負している。
     しかし、それでは物足りなかったらしい。「つまらなさそう」と言われ、振られたのだ。何故と思う事すらなく頷いてしまったのだから、おそらく高杉本人が思っているより、高杉の中で性的価値観の一致というものは大きかったのだろう。

     駅の障害者専用公衆トイレで張り詰めた性器を慰める。ほんの少しの刺激で達しそうになるのを我慢して、息を止める。脳内に回る酸素の量が少なくなって、途切れていって、くらりと眩暈がする頃に息を吸った。一拍遅れて、手のひらに濡れた感触が広がる。イキたいのであれば勝手にイケば良いのに、高杉はこうして毎回自分を追い詰める。我慢して耐えて堪えて解放された絶頂は格別で、恍惚に酔う。
     ティッシュで乱雑に拭き取り、一息付く頃にはいつも通りの自己嫌悪の時間が始まる。
     何故、こんな真似を。こんなことを。何度繰り返せば気が済むのか。だけど、一度得た快楽を手放すには遅すぎて。一人だけではイクことすらままならない。まるで中毒のように体内を巡り、脳を侵食する快楽が身体を燻らせ続けている。だから、こんな真似を続けている。
     普通ではないことを理解している。一般的ではない真似をしている。他所様に迷惑をかけてはいない、だなんて言い切れない。実際、満員電車の中で誰とも知らない人に押し潰されて得る快楽は、きっと異常であり、普通ではない。それでも、普通には戻れない。僕にはこうするしか道がない。
     若々しい二十代の身体は簡単に性欲に負けてしまう。肉欲を持て余し、今日こそはと思えど繰り返して。どうしてだろう。どうして僕は。考えたところで思考回路の着地する先は決まっている。どうしようもない。これに尽きるのだ。何度も何度も考えて。受け入れたとはいえ、何故、どうしては常に付き纏う。それでも僕は。こうやって生きるしかないのだと駅の薄汚れた公衆トイレで溜息を吐いた。

     そしてまた今日も繰り返す。分かっている。乗らなければ良い。態々人に押し潰されるような真似を。こんな誰かに気づかれるかもしれないところで自慰行為に耽るなんて。して良いものか。咎めるのは良心か倫理観か。そんなものが最初から備わっているのであれば。備わっていたのであれば。僕はこんな身体になりたくはなかった。自覚したくなかった。追い詰められた果てに受け入れるしかなかったから受け入れた。でも、さあ。僕だって普通に快感を得られるのであればそうでありたい。なのに自宅で何度試しても僕の性器が反応することはない。人気のAVを見ても興奮することはなくて。思い出すのはいつだって満員電車の中で圧迫された記憶。それでもイクことはできなくて。幾分か楽になれたなんて大嘘だ。苦しい。ずっと苦しいままだ。
     人の波に押されるようにして定位置となってしまった窓側を陣取る。あっという間に人の壁が押し寄せて圧迫される。ぐっと息を詰める。冷たい窓ガラスの感触に熱に浮かされた息を吐いた。

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