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    Cherry_7396

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    Cherry_7396

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    窒息性愛の短編話。
    バンドマンmrくんとマゾヒストな女王様tksgさんの話。ピロートークのような何か。短いです。

    #長晋
    changjin

    欲求 とある人によれば、事後の対応で男の内面は判断できるらしい。
     だとすれば、この男は百点満点の対応なのではないだろうか。なんてことをベットに転がりながら考える。
     情事後の気怠さが残る身体は本日も蹂躙され、喰い尽くされ、指一本動かせる気がしない。許したのは僕だが、毎回飽きもせず抱き潰すのは如何なものか。
     掠れた声しか出ない喉を労るためか、水を飲まされることにも慣れた。動けないからか、口移しになるのはもう諦めた。ほんの僅か回復して、男の胸板に背を預けるようにして支えられ、グラスを口元に近づけられるのにも。そこまで甲斐甲斐しくしなくて良いと言いたいのだが、この男は嫌がれば寂しそうな顔をするのだ。それがなんだか笑ってしまうくらい可愛いから、許してやることにした。
     火照りが冷め始めた身体に濡れタオルの感触が気持ち良い。とろとろ微睡む間に拭かれていく身体は情痕と噛み跡が散りばめられている。
     情事中の獣のような眼光は鳴りを潜め、ただ優しさに満ち溢れているな、とギャップを感じて擽ったくなる。
     図体が大きい割に繊細な一面を持つ男は、丁寧で優しい手付きとは裏腹に酷く加虐性に溢れていた。その癖、拒絶されることを極端に恐れている。強引に進めても構わないのに。
     遠慮しているわけではないことを知っている。最初は面白くなかった。誰と重ねているのか知らないが、不愉快だと感じていた。
     誰に対して加虐性を露わにし、誰に対して欲情し、誰を抱いてると思っている。君が抱いているのは、抱きたいのは誰だ。この僕だ。他でもないこの僕を抱くのであれば、余所見など許さない。僕を見ろ。僕だけを見て、溺れれば良い。それを僕は君に許したのだから。
     というようなことを情事中に言い放ち、男の繊細な心に無理矢理触れて以降は改善されている。それで良いと満足気に頷く僕に、男が情けなく笑ったことを覚えている。雄の色気を纏う男はサディスティックな本質を持つ癖に大変臆病で可愛らしい内面を兼ね備えている。ますます惹きつけられ、のめり込んでいる自覚はある。全ては格好良いのに可愛らしい男、森長可が悪い。なので責任を持って僕を愛してもらう。僕を愛することを許してやる。
     幾許か吹っ切れた男はそれでも強引なことをしようとはしない。それに多少のもどかしさはあれど、遠慮ではなく配慮しているのだと気付けば何も言えなくなった。
     だけどまあ、たまには。無理矢理でも良いかなと思うわけで。この男の新たな一面を見てみたいわけで。あくまで今夜は下準備。どんな反応をするだろうかとそれだけを目的としている。
     重たい腕を動かせば、些細な動作にすぐさま気づいた男が触れてくる。手を握りしめ、絡ませ、ゆるりと笑う。

    「………あれ、とって」

     目線だけで鞄を示せば、男は素直に応じた。不思議そうな表情のまま、高杉の前に鞄を置く。数秒後に高杉の身体を起こさせ、自分の胸元にもたれかからせる。見やすいようにとの気遣いだろうか。些細なことでキュンとする心を落ち着かせ、開いて、と促す。
     鞄を開けた男は中を見てピシリと固まった。

    「……君、使いたい?」
    「……………。」

     鞄の中に入っているのは真っ赤な縄。そういう目的で使用するものだ。身動きできないように押し潰されるのは毎回だ。高杉の性癖からして、やらない選択肢はない。くらくらするほどに気持ち良いのは事実だが、男の情事に不満はないが、満ち足りているが、たまにはこういうものを使っても良いのではないか。マンネリだとは思わない。思う隙間がないほどに抱かれているから。決して不満があるわけではないのだ。でも、男が途端に不安そうな顔をするから。

    「勘違いするなよ。僕は満たされている。ちゃんと君に愛されている。だから、君に抱かれることに不満があるわけじゃあない。勿論、物足りないわけでもない」
    「なら、なんで」
    「君、こういうのも好きだろう」

     は、と吐息が漏れた。男が呆然と高杉を見下ろす。馬鹿だなぁと思う。
     ラブホテルを利用する時、コンセプトルームを選ぶことがあった。部屋がなければ必然的に空いている部屋になる。その時、男がチラリと飾っている縄を見ていたことを知っている。使ってみたいのだろうかと考えたが、男が何も言わなかったので気のせいかと思っていた。それでも引っ掛かりはあったから、何度か態とそういう部屋を選んでみた。何度か利用して確信した。縛りたいのだと。ただ、何を思ったかその欲求を男は仕舞い込もうとしていた。今更何を考えているのか。全く世話の焼ける男だ。
     男は許されるのが好きだ。高杉に許可を得るのが好きだ。それは薄々気が付いていた。しかし、言わなければ許可を与えるどころではない。察しろというのは無理がある。何の為に口があると思っている。

    「僕が気付かないとでも思ったか。引くとでも思ったか。今更、引くわけがないだろう。君は僕を受け入れた。なら、僕が君を受け入れない道理はない。まあ、流石にあまりにハードなプレイは考えるけど……」

     握られた手を遊ばせる。指先を伝えば、絡め取られる。最初から男は僕の手を握るのが好きだったな、なんてどうでも良い事を考えた。
     
    「いつ言い出すのかと思えば何も言わない。仕方がないから僕が用意してやったんだ。それで、これ、使いたいかい?」

     真っ赤な縄を見つめ、男は躊躇いがちに口を開く。

    「……許してくれんのなら」
    「違うだろ」

     間髪入れず跳ね除ける。違う。聞きたいのはそれじゃない。泣き腫らした目で効果はあるのか定かでないが、じっとりと睨み付ける。途端にごくりと喉元を鳴らすから、男の欲を煽ったことを知る。

    「逃げるな。君は、僕をどうしたい。僕は君の口から聞かせろと言っている」

     はくり。声にならない声が発せられる。何度か口元を震わせ、男はやっと声を出した。

    「お前を縛りたい」

     情けないほど力のない声だったが、目だけはギラギラとしていて我欲に満ち溢れていた。
     そうだ。それが見たかった。
     握られた手に力を込める。それは合図。許しの応え。
     理解した男が高杉の首元に顔を埋める。嬉しいと思っているのは分かっていたから、どうしようもない男だと薄く微笑んだ。
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