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    14februaryyy

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    14februaryyy

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    響伊
    着物セする響伊ちゃんの導入話
    (※着物セはしません)

    だらだら書いてたら長くなったので、とりまここだけ放出しときます。これの話の先に以前投げた制約付けた話が来ます。
    今回はセッシーンはないです。今後投げるかは未定です。

    『伊織って女王様みたいなとこあるよね』
     そう榊が言っていたのは何時のことだったのか。あまり記憶にないが。確か何かの個展で灰島と組む機会があって、その際によくそうこぼしていた筈だ。
     卒業してしばらく経つが、榊も榊なりに色々なアーティストと組んでいたから、『一級品な皇帝様と組めるなんてラッキー』なんて、最初こそは喜んでいたが。個展の準備が終わる頃には大分げっそりとしていて。なかなかの見物だった。普段はのらりくらりと、どんな相手にも適度な距離感を保ち、余裕綽々を地で行く男でも。灰島伊織という男は鬼門であると知って。──少しだけホッとしたのを覚えている。榊程の男でも振り回されるなら、俺が振り回されるのも仕方がないということだ。……別に、俺が人とうまく関係を構築できないのが原因ってわけじゃない。あいつが規格外なだけだ。そう自分に言い聞かせることが出来るわけだし。──そうだ、俺は悪くない。全部あいつのせいだ。そうやって責任を押しつけて、逃げられる。──そう思っていた。
     まあ、榊も、斑鳩と組んだ後から随分と丸くなっていたから。そういうところもあったのかもしれないが。ともかく。
    『今度の個展さ、伊織、女王陛下やりなよ。絶対似合うって』
     本人の前で、面と向かってそんなことを言い出して。
    『伊織の顔立ちって美人な部類に入るし。派手に装えば華やかになるから良いんじゃない?』
     なんて。無責任極まりない発言をしていたのも、榊だった筈だ。

     ──振り回されて、頭にきて。大分苛ついていたからとしても。
     あいつを更に調子に乗せるよう焚き付ける辺り、榊の性格の悪さが滲み出てるわけだが。……丸くなった、なんてやっぱり幻想だったんじゃないのか? いや、物理的な手段に出なかっただけマシなのか。
     まあ何にせよ、そんなことを、榊が言っていた。それは確かで。

     それならば。最後まで面倒を見てほしかったと思いたくもなって。
     ──だって。

     結局、それに巻き込まれるのは何時だって俺の方だから。



     ******



    「で。」
    「で、ってなんだよ」
     目の前に座る灰島はそう言って首を傾ける。それと共にシャランと軽い涼やかな金属音がして。何故か、俺は余計に頭が痛くなる。
    「なんでそんな格好してんだ」
     ……いや、分かってる。分かりたくないが、分かってる。本当はツッコミたくもないが、言及しなければ話が進まないと、俺は渋々口を開き。目の前の灰島に訪ねる。
     ──クソ。そもそも、襖を開けた時点で引き返せば良かったんだ、俺は。なんで律儀にそこを跨いで部屋にはいってしまったんだか……と、その瞬間に掠めたとある映像を思い出して、俺は頭を振る。違う。別に。そうじゃない、俺は──。
    「なんでって。次の個展の為の衣裳合わせに決まってんだろ」
     一人、思考の渦に入りかけた俺を遮るように、灰島が声をかけてくる。いつもの不遜な態度で。さも当然というように鼻を鳴らしながら、堂々と説明をしてくれる。が。
    「……お前、本当に頭がイカれたのか?」
     目の前の、変わることのない光景に溜め息をつく。
    「似合ってんだろ?」
     そんな俺を嘲笑うかのように灰島はまた首を傾けて。シャランと一つ、涼やかな音を鳴らす。
     ──似合う、似合わないで言えば確かに。──いや、違和感はない。これは頭に付けたそれも関係しているのかもしれないが、ともかく。違和感がないからと言って、なんでまた……。
     その発端が何であるか分かるが故に、俺は頭を押さえる。──本当に頭痛がしそうだった。
    「なんだよ多岐瀬。様になってんだろ?」
     豪華絢爛。正に、その四字熟語が見事に映えるように派手で鮮やかで。
     煌びやかで華やかな格好が、目の前にあった。──その衣裳の綾羅錦繍さに埋もれることなく、むしろ負けず劣らずの灰島の顔立ちが、端正ではっきりしているからか。双方で際立て合って、より一層、絢爛華麗に拍車がかかっていた。
    「……それを着るのか……」
     使われている色は、ある一部分を覗いて、そこまで派手ではなく。むしろ硬い落ち着いた色合いばかり使われているというのに、明らかに良質と分かる布の光沢と上品さが──金が掛かってると分かるその感じが──、こちらを圧倒させるような煌びやかで華やかな装いになっていて。
     これを次の個展時に着るという灰島に。俺はやはり頭が痛くなり。溜め息をつくしかない。
    「ああ。良いだろ?」
     俺が嫌そうに顔を諫め続けるのにも関わらず──いや、だからだろう。俺が嫌がれば嫌がる程、こいつは調子に乗る。──最近、特にそれが顕著で──。溜め息を何度ついたところで、目の前のこいつは嬉しそうに俺に感想を求め続ける。いや、『似合う』と、そう言えと迫ってくる。

     ──そもそも、何故こんなことになったのか。
     頭を押さえながら、俺はここに呼ばれた経緯を思い返した。



     **********



     高校三年生の夏の終わりに。俺は灰島と恋人になった。
     和哉との仲を修復したとしても。あいつとの関係はあのまま、変わることがないと思っていた。いや、変えるつもりもなかった。
     だけど。
     和哉の横で生きてても良いのだという安堵は、思った以上に俺の在り方を変えて。『多岐瀬、不安定になること減ったよね』そう榊に言われて、『最近の響って、前みたいに笑うよな』と、和哉に言われて。『肩の荷でも降りたんじゃない?』何を背負ってたか知らないけど──そうあっけらかんと純に言われて。少しだけ自覚した。
     別に、自分を責めることがなくなったわけじゃない。時々、どうしようもなくあの時の光景を思い出して。前までの鬱々とした気持ちが胸を占めることもあった。それでも、和哉が、純がそばに居てくれるから。彼らのそばに居ても良いのだと思えるようになったから。俺は少しだけ息を吸うのが楽になる日が増えて。
     そして。その安堵と安心感が。今度は俺に別の欲を擡げさせた。

     俺の中にずっとあった蟠り。和哉とのことと同じくらい大きくなっていたあいつとのそれ。その痼りを。
     どうともするつもりはなかった。
     俺は、和哉の──あの頃のようにあいつらの──横に居れさえいれば良かったから。それだけだったから。──それだけだと思っていたのに。
     少しだけ生きてても良いと、そう思えた俺に。擡げさせた新たな欲。
     それでも最初はほんの少しだけ、持っても良いかとそう思える程度で。少しだけ呼吸がしやすくなって、周りを見る余裕が出てきたからこそ思い出した、先を行くあいつを追いかけること。和哉と一緒に追いかけても良いかと思ったこと。本当に最初はそんな程度で。それしかなくて。それしかなかった筈なのに。
     逃げたから。灰島が、あいつが先に逃げたから。

     だから、俺はあいつと恋人になることを選んだ。あの夏の終わりに。



     あれから月日も経って。後悔はしていないがそれでも時折、振り回されるあいつに辟易することは増えてきて。
     恋人同士、なんて言ったって。そう甘いものでもなく。むしろあいつとの甘かった日々なんてほとんどないんだが──何時だったかに、榊から『ピーマンくんのが恋人みたいだよね』なんて言われたこともあったが──、それでも、俺が恋人だと思うのはあいつだけで。好きだと、そういう意味で好きだと、そう思うのは灰島だけだったから。
     互いにパーセプションアートを生業として日々、仕事をしながら生きてく中で、忙しい毎日の合間を縫って、あいつに連絡を送って。時々、予定が合えば会う。そんなことを繰り返していた。

     別に何日も何ヵ月も会わなくても、俺もあいつも特に気にしないから。
     何ヵ月かの間、連絡しか取らない。ということもしばしばで。
     ──まあ、俺としては、その連絡だってそう頻繁に送るつもりはないのだが。何故かあいつから毎朝、今日はどういう予定だと送られてくるので、こちらもそれに倣って時々、同じように返す。それだけで。たまに、〔今日はオフ〕というメッセージに、〔そうか〕って返したら、〔だから時間空けろ〕なんて横暴な内容が届く時もあるが。半分は無視していた。こちらの予定を何とも思ってない、いつもの尊大さが気に入らなくて。ムカつくことも多かったから。例え休みの日が重なっていたとしても、そういう時の俺は元から入ってた和哉や純との予定を優先させて。

     まあ、そうやって。ここ最近は互いに忙しくしていたので。俺もあいつもメッセージのやり取りだけで。顔だって見てなかったのだが。

    〔今日は個展の衣裳合わせだ〕

     そう端的に送られてきたそれを。特に返信もせず俺は放置した。
     今、ちょうど抱えている幾つかのグレーダーとしての案件は、昨日の時点で一段落ついていたのだが。あいつは仕事みたいだし、別に、問題ないかと特に何も報告しないでいて。一人のゆったりとした束の間の休日を味わっていた。──それがいけなかったのか。
     何故か昼過ぎに、〔ここな〕という文章と共にとある場所がピン留めされた地図のリンクが送られてきて。〔お前、今日暇だろ? 見に来いよ〕と続けて送信されてきたメッセージに、眉をしかめる。

    〔なんで知ってる〕
    〔和哉から聞いた〕

     至極もって単純明快。──確かに、和哉ならこいつに伝えるだろう。もちろん聞かれさえすればだが。

    〔聞いたのか〕
    〔個展の話聞いてきたからな〕

     握りしめた携帯電話の画面をじっと見つめながら。俺は更に眉間に皺を寄せる。
     ……。繋がりが見えない。

    〔和哉、今度初めて個展開くんだろ?〕

     そう思っていれば、ポコンと新しいメッセージが届き。
     ──ああ、そういえば。卒業してすぐに個展を開くことになっていた。次の春に卒業する和哉は、ようやくライセンスが手に入るからと喜んでいて。在学中の仮ライセンス状態でも個展を開こうと思えば開けるのだが──前例があるせいでな──、和哉はライセンスを取ってからにこだわっていた。
    『俺はやっぱり、ちゃんと認められてからやりたいんだ。父さんと母さんが伝えたかった新しい世界を早く伝えたいってのはあるけど。でもおじさんがこの学校作ったのって、父さんや母さんを守りたかったからだと思うから。だから、ここでちゃんと学んで、卒業して。それから俺はプロとしてやっていきたい』
     ライセンス制度があんのも、そうやって俺らを守るためじゃん──なんて、嬉しそうに笑って言うから。
    『じゃあ、お前の卒業、待ってる』
     そう言って。俺は和哉が卒業するのを待っていた。
    『先にプロになって。お前が安心してアーティストやれるよう、先に経験積んどく』
     それが、俺の、俺なりに選んで出した答えだったから。和哉の横で生きてく為に選んだ答えだったから。

     ──そう和哉とのことを思い返していたら。
     ポコン、ポコンと音がして。灰島から連続してメッセージが届く。

    〔まあ、開くのは卒業後でも、卒業と同時に開きたいつってたからな。〕
    〔なら、今からでも準備できることしとけよってメッセ送ったら、聞かれたんだよ〕

     続く言葉が何となく予想ができて。俺の眉間はどんどんと寄っていく。

    〔俺のな。〕
    〔今度はどんな個展を開くのかって。〕

     連続してメッセージが届き続ける為に、液晶画面が光ったまんまなので。その明るさに更に顔をしかめて。俺は目の前の画面を凝視する。

    〔で、こんな感じのやるぜ? って言ったら、和哉が興味持ってな。今日は衣裳合わせだから暇なら見に来いよ、って誘ったんだよ〕

     明るい画面を見続けた弊害か。(というか、そうだと思いたいが)どうやら頭まで痛くなってきて。

    〔したら、和哉、用事あるって言うからよ。何だよ多岐瀬とデートか? って聞いたら、別件だっつて、ついでにお前が今日はオフだって教えてくれた〕

     それで冒頭のあれか──と、メッセージを思い返しながら、俺は頭を押さえる。

    〔多岐瀬、オフなら教えろよ〕

     最後にもう一度。ポコンと鳴って、送られてきたそのメッセージは見なかったフリをして。
     俺はスマホを握りしめたまま、さてどうするかと悩んだのだった。

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    今回はセッシーンはないです。今後投げるかは未定です。
    『伊織って女王様みたいなとこあるよね』
     そう榊が言っていたのは何時のことだったのか。あまり記憶にないが。確か何かの個展で灰島と組む機会があって、その際によくそうこぼしていた筈だ。
     卒業してしばらく経つが、榊も榊なりに色々なアーティストと組んでいたから、『一級品な皇帝様と組めるなんてラッキー』なんて、最初こそは喜んでいたが。個展の準備が終わる頃には大分げっそりとしていて。なかなかの見物だった。普段はのらりくらりと、どんな相手にも適度な距離感を保ち、余裕綽々を地で行く男でも。灰島伊織という男は鬼門であると知って。──少しだけホッとしたのを覚えている。榊程の男でも振り回されるなら、俺が振り回されるのも仕方がないということだ。……別に、俺が人とうまく関係を構築できないのが原因ってわけじゃない。あいつが規格外なだけだ。そう自分に言い聞かせることが出来るわけだし。──そうだ、俺は悪くない。全部あいつのせいだ。そうやって責任を押しつけて、逃げられる。──そう思っていた。
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    14februaryyy

    MAIKING土斎
    スペース組ネタ
    ※スペ土×斎ではないです
    ※冒頭のみ

    土さん誕生日お祝いに置いときます🎂
    本当は年末にペーパーになる予定だった残骸です。
    これの続きというかオチはあるのですが、間がないので取り敢えずここまで。どっかで形にしたいな~~とは思ってます。
     一瞬、何が起こったのか分からなかった。僕はさっきまで目の前のスマートフォンをいじってた筈で。それ以上でもそれ以下でもなく。ただ目を開けたら、世界が一変していた。それだけで。現代社会に居た筈なのに、気付いたら知らない別世界に居る、とか。そんな小説じゃないんだから。
    「いや、ほんと。どういうこと?」
     眼前に広がる光景に、ただ目を丸くする。

     スマホが光った先で、異世界転生、なんて。とても洒落にはならないんだけど。



     それは本当にいきなりだった。
     特に変わったことがあった訳でもない。例えばこういう場合に(もちろん現実ではなく物語の中での話だが)よくありがちな、スマホ画面に何か変わった表示があったとか、余所見をしていて轢かれそうになったからとか、そういう事象が直前に起こった訳でもなく。ただただ目の前のスマホをいじっていた、それだけだったのに。
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