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    DB 展示c【ヒロルク。とルクアロ】※ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りして投稿したものの再掲。

    お題:「噛み癖」「ぬいぐるみ」3/27 真夜中にフと、目が覚めて気がついた。ルークが、抱きしめて眠っている仔犬のぬいぐるみの耳をかじっていることを。たらん、とたれた大きなまあるい耳の先を噛んで、ときどきもぐもぐと口を動かしている。おなかがすいているのだろうかと思ったのだけれど夕食はたっぷりと二人ともおかわりをしてたくさん食べたはず。そう思ってヒーローは自分のおなかの具合を確認してみたけれど、やはり、空腹感はない。ルークはたりなかったのだろうか、それともぬいぐるみの耳がおいしいのだろうか。ヒーローは仔犬のぬいぐるみのもう片方の耳の端を噛んでみた。ぬいぐるみの毛を構成する繊維を噛む歯がきしきしとするだけで特にあまくもおいしくもない。ヒーローはすぐに口をはなした。それからしばらく、ぬいぐるみの耳をもぐもぐしながら傍らで眠るルークを凝、とみつめながらいつのまにかうとうとと、眠ってしまった。

     次の日の夜。ルークがいつも眠るときに抱きしめている仔犬のぬいぐるみをこっそりと、つやつやの毛並みが美しいクロネコのぬいぐるみと取替てみた。ルークの寝息がすう、と深くなったところでそっとぬいぐるみを交換する。ごめんね、そう、小さな声であやまりながらルークの顔をのぞきこむとルークの髪の毛からお陽さまの匂いがして、ヒーローは鼻をすん、と鳴らした。クロネコのぬいぐるみを抱きしめて眠るルークのとなりでヒーロは何度もくっついてしまいそうになるまぶたと格闘していた。ルークの寝息がヒーローの睫毛をゆらす。くすぐったいけれど何だか心地がよく、ヒーローはうっとりとその寝息を聴きながらルークのおでこにそっ、とじぶんのおでこをくっつけた。突然、がぶり、とルークがクロネコの顔に噛みつく。もぐもぐと、クロネコの顔を噛んでいる。クロネコも噛むのか。ヒーローはまじまじとルークの様子をながめながら、どうやら仔犬のぬいぐるみ以外も噛むらしい。ぬいぐるみなら何でもいいのだろうか。色は、カタチは、匂いは。大きさはどうだろう。もぐもぐするだけで食べているわけではないから、噛みごごち?ぬいぐるみの噛みごごちとは。ヒーローは、うーんと唸ってあれやこれやと考えながら、思いだしたようにあわてて、ルークがちょっと口をはなした隙にクロネコのぬいぐるみと仔犬のぬいぐるみをすり替えた。そして先ほどまでルークがかじっていたクロネコのぬいぐるみを抱きかかえてふたたび、うーんうーんと、何かとても重要なことを考えているみたいに真剣な顔で唸った。

     結局、昨日は答えを見つけるまえに眠ってしまったので今夜はこの問題を解決するまでは寝ないぞと意気込み、ヒーローは夕食のスープをスプーンですくいながらヒヨコ豆のころがる銀の小さなスプーンを見た。ぬいぐるみ以外も噛むのだろうか。そんな興味がヒーローの頭のなかをよぎる。
    「こら、だめよ、スプーンを噛んでは」
     ヒーローはびっくりして握っていたスプーンをがちゃん、とスープ皿の上に置いた。注意をされていたのは後ろのテーブルの年少の子だった。
    「噛み癖がついてしまって困ったわね、歯がだめになってしまうわ」
     噛み癖。歯がだめになってしまう。
    「…ヒーロー、どうしたの、」
     ルークは、先ほどからくるくるといろいろな顔をしているヒーローのとなりでパンにバタをぬりながら、ヒーローはどんな顔をしていても見ているだけで楽しくなっちゃうなあ、そう思ってヒーローの顔を覗き込む。ヒーローはルークに何かを言いかけて、そして、あけた口をそのままとじて首をぶんぶん横に振りながら、何でもない、そう言うと、スープ皿に残ったヒヨコ豆をいっきにすくって口のなかへ放り込んだ。

     どうしよう。このままだとルークの歯がだめになってしまう。ヒーローは夕食の時間に聞いたことを思いだしていた。今日もルークは仔犬のぬいぐるみを抱きしめながら気持ちよさそうにくうくうと寝息をたてている。ルークが身じろぎして仔犬のぬいぐるみをぎゅうと抱きしめると、小さな口がわずかにひらいて仔犬の鼻にかじりついた。仔犬のぬいぐるみはとてもやわらかいのだけれど、鼻の部分だけが少しかたくなっていた。ヒーローは咄嗟に仔犬のぬいぐるみをルークからはなした。かちん、と歯と歯がぶつかる音がする。歯と歯がこすれあい、小さな鼻の頭にほんのちょっとシワをよせてむずがるルークを見て、ヒーローは思わず、自分のひとさし指をルークの唇のあいだへ入れた。小鳥が餌を啄むようにルークの唇がヒーローの指先を吸う。僕の指も食べられちゃうのかな、ヒーローは少しどきどきしてぎゅ、と唇を噛んだ。ルークがヒーローの指を咥えて吸いはじめた。いつかのあたたかい春に仔猫をみつけたことがある。ミルクを指にのせてそっと口へ近づけると仔猫は指をちゅう、と吸った。あのときの仔猫みたいだなあと思いながらルークの舌が指を舐めるたびにくすぐったくて、ヒーローはもぞもぞとしながら、でもルークを起こしてしまわないようにそっと、身を捩る。ルークの小さい歯がヒーローの指を噛んだ。小さな歯はそのまま二、三度かるく噛むと、歯と歯のあいだに咥えた指をそのまま咀嚼するようにしゃぶりはじめた。一瞬、痛みを感じたけれど、痛みよりも、なんだか変なかんじがする、くすぐったいような、何か、とっても、変なかんじ。ヒーローは自分の指をいつまでもはなさずに舐めているルークのとなりで、動くことも出来ず、どうしたらいいのかもわからず、身体は何だかふわふわとして、ちょっと熱い。この熱は指を咥えているルークのなかからつたわってくるルークの熱なのか、自分のものなのか、自分の身体はどうなっているのだろう、ヒーローはよくわからないまま、眠れずに、くしゃくしゃになったシーツのうえで夜が深くなってゆく音を聴いていた。


    「…と、云う記憶を思いだしたんだ」
    「…クソどうでもいい記憶だな」
    「そんなことないぞ?!君との大切な想いでのひとつだ、まあ、もっとも君は憶えていないだろうけれど」
    「人が寝ているあいだにそんなことしてやがったのかてめぇは」
     呆れているアーロンの冷ややかな目に、当時の自分がいかに真剣に幼いアーロンの歯のことを心配して守ろうとしたかをルークは必死に説明した。少し、なんだか変な気持ちになってしまったあのあまくてせつない記憶は黙っていることにして。そして何故、毎晩そっと起きだしては“ルーク”の寝顔を見ていたのかと云うことも。もちろん「ぬいぐるみをかみかみ」していることも気になったけれど、月が煌々と鳴くある真夜中に偶然にも見てしまった“ルーク”の寝顔があまりにも可愛くてたまらなくて、ずっと見ていたいと思ってしまったからだなんて、絶対に言えない。そして今もときどき真夜中に、月灯りのなかで眠る君の寝顔をこっそりとみつめていると云うことも。言ったら君はどう云う顔をするだろう。やっぱり怒るだろうか。思案顔をしたりにやにやと笑ったりしているルークを横目に、相変わらずの百面相だな、アーロンは遠い記憶の彼方の少年の顔を思いだしていた。 
    「歯が痒かったんじゃねえか、歯が生えかわるとき子供はそのへんにあるもん適当によく噛むんだよ、マリーが机の脚に齧りついたときは慌てたけどな」
    「さすがワイルドだな…。でも、それだけじゃないような気がするなあ、だってアーロン、今もよく噛みつくじゃないか」
    「…誰がイツ、噛みついたってんだよ」
    「気がついていないのか?セックスしてるとき僕の首とか肩とかによく噛みついてくるぞ、」
     そう、言い終わらないうちにクッションがクッションとは思えぬ威力でルークの顔面にとんできたため、ルークはあえなくソファに、撃沈した。




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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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