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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「初恋」「ギター」お借りしました。

    #ルクアロ
    rquaro.
    #ヒロルク
    heroin

    「初恋」「ギター」8/27「僕の初恋はきっと君なのだと思う」
     唐突に、朝食のスクランブルエッグをスプーンですくって口へはこぶついでのようにそう言ったルークの顔をまじまじと見ながら、フォークに刺したぶあついベーコンをうっかりと皿の上に落としてしまったアーロンは舌打ちをして、半熟卵のようにふわふわと笑っているルークを睨んだ。
     何て返せばいいんだよ
     ずいぶん遅い初恋だな
     いつの話だソレは
     俺もだよ
     俺の初恋も、
     言えるかそんなこと
     アーロンは何かを言うかわりに皿の上のベーコンをふたたびフォークで刺し、それを口の中へ放り込んだ。無言で二切れ目のベーコンにフォークを刺すアーロンをあいかわらずの笑顔で眺めながら、ルークはかまわずに話しつづける。
    「でもあのときはそれが恋だなんて知らなかったんだ。でも、君と再会して、ああ、僕は君に恋をしていたんだなあ、ってわかったんだ。あのときの僕が君に恋をしていただなんて、まったく気がつかなかったよ」
     そんな能天気な声で笑いながら言う話かそれは
     あのとき
     あのときっていつだよ
     それはハスマリーで?
     いや、いくらなんでも
     …………でも、俺は、
     口の中はベーコンがいっぱいで、言葉がでてこない。いや、いっぱいなのは口じゃない。そんなことを言われて何とこたえていいのか、解らなかった。アーロンは更に口のなかへベーコンを放り込むと口中の肉塊を無言で咀嚼して、一気に呑込んだ。もう口のなかにベーコンはない。けれど、いっぱいで、胸が、いっぱいで、上手く言葉がでてこない。
     そう、あのときのように
     大好きで、大好きでたまらない、この気持ちを何というのか気づいたあのとき。
     ”お姫さまはひと目で王子さまに恋をしたのです”
     お父さんへの好き、研究所のみんなへの好き、ワイルドパンサーへの好き。その他の誰への好きとも違う、ヒーローへの好き。自分のこの”好き”は、研究所の本棚で見つけた絵本のなかのお姫さまの気持ちと一緒だった。でも、その気持ちをどうしたらいいのかわからなかった。わからないまま、どんどんヒーローのことを好きになっていった。大好きで大好きで、あまりにも好きすぎてときどき苦しくなってしまったけれど、ただ、ヒーローの傍にいるだけで、それだけで嬉しくてたまらなかった。
    「アーロン?」
     空の皿を呆、と見つめているアーロンの視界にルークが入ってきた。
    「ベーコン、おかわりする?」
    「……いらねえよ、もう」
     もう、いっぱいだ。いまだって、こんなに胸がいっぱいになる。あのときの気持ちを想いだすと。そしてこの、陽だまりのように笑う、能天気で間抜けな”ヒーロー”の顔をみるたびに、自分のなかは、いっぱいになってしまう。
    「それで、学生のときに友人が習いたてのギターを抱えて初恋の子に自分の作ったラブソングを弾いてプレゼントしたことがあったんだ。そのとき、僕も絶対に好きな子ができたら真似をしようと思ったんだ」
    「……したのかよ」
    「まだしてない」
     ルークの瞳が何かを期待してキラキラしている。もうこれ以上は勘弁してくれとアーロンは思いながら、それでも、脈絡があるんだかないんだかよくわからない話をしながら迫ってくる輝くその双眸を無視することが出来ない。
    「……いま、君にプレゼントしてもいい?」
    「よくねぇよ」
     そんなクセぇこと真顔でやろうとする大人の男なんか天然記念物クラスだ。そう、悪態をつこうとして、アーロンは思いだした。
     ルーク! おれ、ルークのために歌をつくったんだ!
     半壊した、小さなおもちゃのピアノ。不揃いの鍵盤をいっしょうけんめい指で叩きながら、デタラメな旋律に意味のわからない言葉をのせて、ヒーローは歌った。その様子が何だか可笑しくて、でも、これはヒーローが自分のためにつくってくれた歌なんだと思うと嬉しくて、ルークも一緒に歌った。音程も歌詞もまったくバラバラで、とうてい歌とも音楽とも言えないような、そんな「歌」だった。
    「……もう、もらったよ」
    「え?」
     だいすきなだいすきなあまいチョコレート でももーっとだいすきなのはルーク ルークのわらったかおはチョコレートよりもずうっとおいしそう
    「……ガキの頃のまんまじゃねえか、てめぇは」
     アーロンは微笑った。随分と酷い言われようじゃないかとルークは言い返そうとしたが、そのアーロンの微笑った顔があまりにもやわらかく、優しくて、ルークは息をのんで、黙ってしまった。

     朝食もまだ途中の休日の朝なのに、二人の頭上をナイチンゲールが鳴きながら翔んでいる。その鳴声はふたりにしか聴こえない。ふたりのためだけに歌うナイチンゲール。彼の鳥が歌うのは、恋の歌。せつない想いでの恋の歌、炎のようにもえている恋の歌、そしてこれからもつづいてゆく永久の恋の、歌。
     
     
     
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。
    お題:「初夏」「脱ぎたての服」5/1【SIDE ルーク】

     床に、布らしき塊が落ちていた。洗濯物を落としたか、それにしては…と近づいて手にとった。それは見覚えのある裂目だらけのシャツ。どうしてこんなところに、ルークは脱ぎ捨てられたアーロンのシャツを拾って、シャツの持ち主を探した。バスルームをのぞいたが姿はない。リビングの窓辺に、今度はこれも見覚えのある、長い長い…どこまでも長いアーロンのデニムのパンツ。手にとると足の生地の分だけ余計に重く、これをアーロンは穿いているのかとルークは唸りながら、フと、そのデニムがまだ暖かいことに気づき、まじまじとデニムを見た。アーロンの、脱ぎたての服。その肉体に何度も触れ、アーロンの熱はもうとっくに知っているけれど、服からつたわってくる体温と云うものはまた、何か、こう、…端的に言ってしまうと、欲情する。そう自覚して、ルークはティーンエイジャーみたいな反応をする己の身体と理性の間で右往左往しながら、とある事に気が付いた。アーロンの服だけがここにあると云うことは、アーロンは今。初夏の風にカーテンがゆれている。ルークはわずかに開いていた窓を勢いよく全開にして庭へ飛びだした。
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