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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ 様よりお題をお借りしました!ルクアロです。みんなスイちゃんのことがだいすき。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「条件付き」「歌」9/11 ルークの歌、聴きたいな。
     何気なく、だけれど、世界が誇る歌姫からそう言われてしまったルークは、それが歌の世界ではいわゆる社交辞令のようなものなのか、実は定番の歌手ジョークなのか、それとも本当に僕の歌を聴きたいということなのか、スイとの通話のあと、しばらく悩んでいた。
    「なあ、どう思う、アーロン」
    「何で俺にそんなこと訊くんだよ」
     不機嫌そうな声で今すぐにでも通話を終了しようとするアーロンにルークはあわてて待ったをかけた。
    「待ってくれアーロン、スイさんが言った言葉には続きがあるんだ」
    「俺には関係ねえだろうが」
    「それが、関係あるんだな」
     ルークが思わせぶりな咳ばらいをひとつ、した。
    「”アーロンの歌も聴きたいな”」
    「あ?」
    「つまり、スイさんは僕の歌が聴きたい、そして君の歌も聴きたい、ということなんだ。君はとてもいい声をしているって、スイさん君のことをとても褒めていたぞ」
     切るぞ、冷たくそう言い放つアーロンにまたもやルークが待ったをかける。
    「世界の歌姫からのリクエストだぞ?!」
    「そんなの冗談に決まってるだろうが」
    「でも、スイさんがそんな冗談言うと思う?」
     清廉で、まっすぐな心そのままにその歌声は誰の心にも等しく届く、地上にも天上にも唯一無二の歌姫。スイがお世辞や酔狂で、ふたりの歌が聴きたい、そんな軽口をきくとはとうてい思えなかった。
    「……タチが悪ぃ」
     アーロンが深く、ため息をつく。でも、そのため息に拒絶は感じられなかった。
     自分では気づいていないのかもしれないけれど、アーロンがスイさんに接するときの態度はいつも丁寧で誠実だ。ほんの少し、口調もやわらかくなって、アーロンがスイさんのことをひとりの人間として尊敬しているのだということが解る。ルークはそんなアーロンの素直さをいつも好ましく思っていた。野獣よろしくのふるまいにごまかされてとてもわかりにくいけれど、アーロンはちゃんと、人を視ている。
    「……なんて、褒めすぎかな、いや、足りないくらいだな」
    「何がだよ?」
     タブレットのむこうでアーロンが訝しげに首を傾ける。ルークは微笑って、タブレット越しにキスをした。不意のキスに面食らったアーロンは、あまりの不意打ちに目をぱちぱちと瞬かせると、思わず吹きだしてしまった。突然、タブレットいっぱいにあふれたアーロンの笑顔に、ルークは不意打ちを仕掛けたのは自分の方なのに思わぬ反撃を喰らってしまい、あやうく手からタブレットを落としてしまいそうになって、寸でのところで何とか踏ん張った。
    「……もう、いきなりかわいい顔しないでよ、タブレットの危機だったぞ」
    「別に画面なんてバキバキに割れていても使えるぞ」
    「君のタブレットどうなってるんだ?!」
     アーロンのタブレットの様子が気になりつつも、どうやらスイとの約束をはたすことができそうだ、ルークは安堵と共に、何よりもアーロンの歌を聴きたかったのは自分も同じだったので嬉しくてたまらなく、うかれる気持ちを抑えきれずにいたが、同時に自分も歌わなくてはいけないということを思いだし、一気に心臓が冷や汗をかいて縮こまってしまった。
    「なあ、ドギーさんよ、仕方がねえから歌ってやってもいいが、条件付きだ」
    「ええ?!」
     条件……肉十キロか、まさか二十キロ?! 先程から心臓への負荷が大きすぎて自分の心臓がいささか心配になってきたルークは、深呼吸をしてシャツの上から心臓を撫でた。
    「俺と、一緒に歌え。俺はお前とふたりでなら歌ってもいい」
     撫でていた心臓を、思わず握りつぶしそうになる。
    「……僕と、君がいっしょに歌う、」
     それが条件だと、君は言うのか。つまり、それは、
    「……君が、僕といっしょに歌いたい」
    「誰が歌いたいなんて言ったんだよ、歌ってもいい、だ」
     アーロンの呆れた声すらもあまく、聴こえるほどルークは何がなんだかよくわからないまま昂る気持ちを抑えることができなくて、思わず声がうわずってしまい、握りしめた心臓を、もっと強く握りしめた。
    「予想外すぎる展開だけれど、僕でよければ喜んで君の相手をつとめさせてもらいたい」
    「……てめえはどうしてそう……」
     大袈裟すぎるんだよ、そう言おうとして、アーロン自身、今更ながらにもしかして自分はとんでもない事を言ってしまったんじゃないかと思えてきてしまい、ルークにつられて声がうわずってしまった。タブレット越しに何やら妙な雰囲気になってしまった二人は黙ってみつめ合ったまま、おちつかない、何とも居心地の悪いような、いたたまれなさが限界を超えて、とうとう叫んだのはアーロンだった。
    「いや、ただ歌うだけだろ?! 何で、何か、こう……妙な雰囲気になってんだ?! おかしいだろうが!」
    「そ、そうだよな、歌うだけだよな、君と僕でデュエットするだけだ、何もそんな照れるようなことじゃないよな!」
    「デュ……、妙な言い方すんじゃねえ」
    「ご、ごめん」
     二人がふたたびみつめ合った一瞬の沈黙のあと、とりあえず何の歌を歌うか決めよう、というルークの提案にアーロンも力強く頷いた。そして、世界に数多ある歌の中からルークが心も身体もとろけてしまいそうなあまったるいラブ・ソングばかりを選んで、アーロンが却下しつづけること数十回、最終決定に三日三晩を要することになろうとは、このときの二人は知る由もない。
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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