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    ルアwebオンリーStarlight Sparkle展示作品①

    #ルクアロ
    rquaro.

    「ある冬の日、君とふたりで」「アーロン、ピザ何にする?」
     ルークがデリバリー用ピザ店のメニューをひらいてアーロンに見せる。アーロンはソファに寝転がったままメニューを一瞥すると、肉、とだけ言って欠伸をした。
    「肉のピザたくさんあるぞ、選ばなくていいのか?」
    「全部」
     ルークはため息をついて、あらためてメニューに目を通した。
    「じゃあこの、生クリィムどか盛りイチゴとダークチェリーのせチョコレートトッピング&バニラアイス添えピザにするぞ」
    「そんなピザねえだろ!」
     結局、照焼きチキンとサラミたっぷりのディアボラとパルマには生ハムを追加して、 アーロンが「ドギー用だ」と選んだのはバンビーノ。サイドメニューはステーキ三百グラムとフレンチクルーラーを注文した。ルークが昨日、購入しておいたチョコレート五倍がけドーナツの箱をうきうきしながら開封する様子を横目にアーロンは電気ポットのスイッチを押す。明日はこの冬いちばんの大寒波がエリントンを襲うというニュースを聞いた二人は絶対に明日は家から一歩も出ないと決めて前日にたっぷりと食料を買込み、更に今日は追加でピザを注文した。
    「アーロン、おいで」
     ソファの上で毛布をひろげてルークがアーロンを誘う。
    「……寒いなら温度上げるか」
    「この大寒波で電気の供給が足りなくなるかもしれないって。節電しなくちゃね。だから、ほら、……おいで」
     ウールのやわらかな肌触りと暖かさと、ルークの腕に抱かれる気持ちよさに身体が抗えるわけもなく、しかし誘われるままその腕に抱かれに行くほど素直にもなれず、心とはうらはらにすました顔でアーロンは挑発するように微笑う。
    「節電の為かよ?」
    「いいえ、君といちゃいちゃしたいからです」
     まっすぐにその心を相手にさらけだし、心のままを言葉にする。あまりにも無防備だけれど、それはこの男の強さでもある。そんな最強の男に、勝てるわけなどない。
    「……仕方ねえな」
     アーロンはソファに腰を下ろすと、ルークの腕にたっぷりと体重をかけて背中を押付けた。ほんのすこし腕の長さが足りないけれど、ルークはアーロンを抱きしめて、毛布で包み込む。二人の体がすっかり収まるくらい大きな毛布に包まれて、頬と頬をくっつけて、二人は身体を寄合う。
    「君はあたたかいなあ、太陽を抱いているみたいだ」
     太陽はおまえだ。そう、言葉にする代わりにアーロンはルークに口吻けをした。アーロンから積極的にキスをしてくれるなんて! ルークは嬉しくて目眩がしそうになりながら、もっとその熱が欲しくて、アーロンの唇を追いかける。下唇を喰んで、わずかにひらいたアーロンの唇をわって口中に舌を挿入れた。ざらり、としたぶ厚い舌を舐め、舌先を吸うと、アーロンの舌はとろとろにとけたチョコレートみたいにあまくなって、ルークは夢中でアーロンの舌にしゃぶりつき唇に何度も何度も噛みつく。あまえて、じゃれついて、そしてまるごとぜんぶ食べてしまいたいとばかりに、ルークはアーロンにキスをする。
    「……っ、ルーク、……これ以上は、マズいんじゃねえか」
    「何で、もっと欲しい、君が」
     逃げるアーロンの唇を追いかけて、もっと欲しいと強請るルークの猛攻に抗う術をアーロンは知らない。そして、どうしようもないくらい欲しくてたまらないと渇望しているのは自分も同じだった。はやくルークに身体を拓いて欲しくて、肉が疼く。
     不意に、玄関のインターホンが鳴った。快楽に満ち々た泥濘の底から首根っこを掴まれて現の岸辺へ引戻された二人は目を見開く。もう三十分近くもそうしていちゃいちゃしていた二人は、先刻、ピザを注文したばかりだった。
    「……、だから言ったろ」
     ルークは慌てて乱れたシャツを整え、玄関へと急いだ。アーロンはルークに受けた愛撫の痕がのこる肉の疼きをおさめようと足のあいだへ手を遣ったが、どうにも自分でおさめられる気がせず、仕方なく何とかやり過ごそうと深呼吸をする。ルークにあたえられた快楽は、ルークをこの肉体に受け入れることでしか満たされない。自分の肉体も心もすっかりルークの虜になっている。それはとても危ういことだとわかっていた。けれど、わかっていても、もうどうすることもできない。
    「どうしてこうなっちまったんだかな、」
     だけれど、もう、ルークを知らなかった頃には戻れない。戻る気も、ない。
     玄関が何やら騒がしく、会話の内容は解らないが、感謝の意を告げる大きな声が聴こえた。礼を言っているのはピザ店の配達人らしく、ルークの笑い声も聴こえる。
    「何かしたのか」
    「コーヒーを渡したんだよ。缶コーヒーだけど。この寒いなか配達してもらっちゃって申し訳ないなと思って」
    「……相変わらず誰にでも尾を振るな」
    「棘のある言い方だな?!」
    「そんなに誰にでも優しくして、惚れられちまったらどうすんだ」
     ルークが目をまるくしてアーロンを凝、と視る。アーロンはテーブルに積まれたピザの箱のふたを指で摘まみ、中身を確かめている。
    「アーロン、もしかして今のは、やきもち……?」
     アーロンは指についたピザソースを舐めて、そのままキッチンへ向かった。しかし、キッチンへ向かう足はそれ以上進むことは出来なかった。背中から伸びてきた腕に強引に引寄せられ、そしてその腕がアーロンを強く抱きしめる。
    「誰に惚れられても、僕が惚れるのはアーロンだけだよ」
     首に触れる息がくすぐったくて、アーロンが身を捩る。少し、汗ばんだ首はうっすらと赤く、熱い。
    「……ピザが冷める」
    「ピザよりこっちを食べたい」
    「……てめえの大好きなくっそ甘ぇモンもあるぞ」
    「君以上にあまいものなんてないよ」
     そして、君以上に大好きなものも。そう言って首に口吻けたルークに、俺だってそうだ、と、アーロンは声にはださず唇だけを動かして、そしてシャツの上から胸を這うルークの指に、指を絡めた。そして、そのまま二人でソファに倒込んでキスのつづきをしようとしたそのとき、焼き立ての肉の匂いととろける芳醇なチーズの香しさ、作りたての熱いピザの存在感は暴力的なまでに強く、あまりにも甘美で、ついに、ルークの腹の虫が鳴いた。
    「……てめえは、ほんとうに、」
    「ご、ごめん……」
     間髪入れず、アーロンの腹からも低くくぐもった音が響いた。二人は顔を見合わせて、笑う。
    「まあ、今日はまだはじまったばかりだし、まずは腹ごしらえをしよう」
     寒くて寒くて凍えそうな一日のはじまり。白金の太陽は空の彼方で息をひそめている。窓のそとを仰ぎみれば銀鼠色の曇天。風が吹く度に氷の欠片が皮膚に刺さるような冷たさで、樹氷の如く林立するビルとビルのあいだでこの体はたちまち氷の彫像のように凍ってしまうだろう。でも、君の隣で、風さえ吹く隙間もないくらい身体と身体をぴったりとくっつけていれば、どんな冬の嵐にだって凍えることはなく、冬を統べるオーディンの行軍と一戦を交えても勝利することができるだろう。君は、無敵のヒーローだから。二人でいれば、どんなことにも立ち向かっていける。
     そんなふうに勇ましく熱い心を奮い立たせて大寒波を乗りきる、特に何ということはない年の瀬の一日。君と過ごす、最高の、一日。
       
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    Replies from the creator

    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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