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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をおかりしました。2023年初ルクアロなのでおめでたく?ラブコメです。チェズレイ活躍してます。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「ノーズキス」「こたつ」1/8 雪や こんこん 霰や こんこん
     降っても々 まだ降りやまぬ
     犬はよろこび庭かけまわり
     猫はこたつでまるくなる

     エリントンに初雪が降った。初雪の一片を手でうけとめようと路地で、家の庭先で、窓から身をのりだして、誰もが腕をいっぱいに伸ばし、天へとそのてのひらを向けた。ルーク・ウィリアムズも、どうりで寒いわけだ暖かくしていよう、と言いながら真っ先に庭へ跳びだして空に向かって手をのばしている。その火照った肌にふれた雪の欠片がとけて頬が濡れるのも厭わずにはしゃいでいるその様子を見て、アーロンはハスマリーの子供たちが歌っていた異国の歌を思いだした。子供たちは意味もよくわからないまま歌っていたが、それを聴きながらアーロンは、雪が降って喜びながら駆けまわるルークを想像して、微笑った。
    「……歌のまんまじゃねえか」
     まさかあの異国の歌がそのまま目の前で再現されるとは思っていなかったアーロンは何やら不思議な気持ちで、雪のなかを走りまわるルークを凝、と見ていた。そして、自分でも無意識にその歌を口ずさんでいたことに、雪のなかで口を開けたまま呆然と立ちすくんで自分を凝、と見ているルークの様子を見てようやく気づき、そのままいきおいよくリビングの窓を閉めた。
     アーロン何て素敵な声なんだ、君の歌を聴くことができるなんて、何の歌なんだ、もう一度歌って、お願いだよアーロン、そしてそろそろ窓を開けてほしいな、家に入れてくれ、さすがに寒くて凍えそうなんだが……
     ひとしきり歯の浮くような事を言い、庭できゃんきゃん吠えていたルークはようやく家の中へ入ることを許され雪まみれの服を着替えてリビングへ戻ってくると、アーロンのタブレットから先程の歌が聴こえてきた。異国の歌をその国の言葉に訳して配信する子供向けのサイトらしく、オリジナルの歌詞と、訳された歌詞も記載されていた。
    「……犬はよろこび庭かけまわる……、なるほど、君が思わずこの歌を口ずさんでしまった理由がわかったぞ。いや、僕は犬じゃないけどな?! 猫は……こたつでまるくなるんだってさ。アーロン、まるくなってよ」
    「何を莫迦な、……こたつ、て何だ」
    「……何だろう……」
     検索して解ったことは異国の暖房器具であるということ、だいたいの形状も知ることが出来たがいまいちイメージが掴めない。ハスマリーはもちろん、エリントンでも見たことはないその暖房器具についてもっと追及してみたくなったルークは困ったときの最終手段をとった。
    「ボス……ボスは私を検索サイトか百科事典か何かだと思っていますね?」
    「ごめん、忙しいのに迷惑だとは思ったんだけど……」
    「とんでもない、嬉しくて感極まっているところですよ。ボスがお困りのときに真っ先に私の事を思いだし、そして頼ってくれるなんて……このチェズレイ、よろこんで検索サイトにも百科事典にもなりましょう」
    「有難う! チェズレイなら知ってるかなあって思って。ついいつも頼っちゃうんだ」
    「……ボスは人を幸福な気持ちにさせる天才ですね。いつでも頼って下さい。横で不貞腐れている目つきの悪い猫ではこんなとき頼りになりませんものね」
     チェズレイと通話をしているルークの横で黙ったまま唸っていたアーロンはついに我慢が出来なくなりタブレットに向かって吠えた。
    「こたつですか……、わかりました、早急にお送りしますね。しばらくお待ち下さい。では、今日はこのへんで。駄猫のご機嫌が悪いようですのでね。それではボス、ごきげんよう」
     ルークは、え?と訊き返したが、もうすでに通話は途切れていた。
    「送る、て言ってたかチェズレイ……いや、別に現物が見たいと言ったわけではないのだが……」
    「てめえが悪い。あの常識外れ野郎に頼るからだ」
     もう、ヤキモチもたいがいにしろよまったく君は、ルークがそう言うやいなやアーロンの抱えていたクッションがルークの顔面に剛速球で飛んできた。

     翌日、ルークの家のリビングには「こたつ」が鎮座していた。
    「もう届いたよ……チェズレイ宅配便はどういう仕組みになっているんだろうか」
    「ブラックすぎるにもほどがあんだろうが」
     二人はチェズレイがルークの為につくった動画の説明を視ながら何とかパーツを組み立て、スイッチを入れた。ルークとアーロンは動画の説明通りに「こたつ」をはさんで向かい合って座り、こたつの中へと足を入れた。
    「あ、…………ったかーい!! 何だこの、この……ふんわりとした優しいあたたかさは……それでいて身体の芯からしっかりとあたたまる……こんなものがこの世界にあったなんて!!」
    「相変わらず大袈裟だな、こんなもん別に、………………」
     こたつの魅力にはさしもの大怪盗も、そしてこの世界の何者も、抗うことは出来ない。ルークはまるで世界の真理にたどりついたような顔で「こたつ」という神器がこの世界のあらゆる生きとし生ける者たちへもたらす恩恵を全身で感じていた。そう、口にはださずともルークはどうせそのくらいたいそう大袈裟なことを考えているのだろうと呆れていたアーロンも、なかなかどうしてこの「こたつ」からでることができない自分にいまいましく思いながらも、やはり、どうしても、脱け出すことは出来なかった。
    「……しかし、狭いな」
    「そうか? じゅうぶん中は広い……」
     ああ、足の長さの差か……、言わずともそう悟ったルークはそれ以上、何か言うことをやめた。

    「ああ、アーロン、あったかくて気持ちいいなあ、ねえ……アーロン、顔をもっと近づけて、キスしたい」
    「突然だな、脳みそまで溶けちまったか」
    「そうみたい」
     脳も、身体も、あたたかくて気持ちがよくてすっかりとろけてしまった二人は、こたつにもぐったまま、向かい合って顔を近づけた。だが、顔を近づけようと身をのりだすと、こたつから体がでてしまう。かといってこの状態でこたつ蒲団にくるまったままだと唇と唇のあいだの距離はどうしても縮まらない。
    「アーロン、こたつに入ったまま何としてもキスするぞ、限界にチャレンジだ」
    「何のスイッチが入ってんだよ、てめえは」
     その距離がもどかしくて、でも、もう少しで唇と唇がくっつきそうになる、胸がどきどきして、頬が熱い。相手のかすかな吐息が顔にかかると、なんだかくすぐったくて目をとじた。静かな時間、胸の鼓動だけが聴こえてくる。これは、自分の胸の音、それとも、目のまえにいる、愛おしい恋人の胸の音。鼻の先端に、相手の鼻の先がふれた。
    「……ノーズキス、できたな、アーロンの鼻が高くてよかった」
     ふたりは、鼻のあたまと、鼻のあたまをこすりつけ合い、何度も々、キスをした。
    「……これだけでいいのかよ」
    「よくありません」
     でも、どうやらこの体勢のままではこれが限界のようだ。すっかりと火がついてしまった身体がこのままおさまるはずもなく、二人はこたつから脱けだして、脱けだそうとして、脱けだそうと、した。
    「……無理!! こたつ! あったかい!!」
    「あのクソ詐欺師、なんて恐ろしいもんよこしやがったんだ……」
     わずか一メートルほどの距離、しかしそれはルビコン川を渡るが如くの決断が必要なほどの距離。二日間降りつづけた雪で窓のそとはすっかりと真っ白で、何も見えない。世界は雪に支配されていた。心臓さえ氷になってしまいそうなほど凍てついた世界で、恋人たちは常春の国に住んでいる。あたたかい部屋の「こたつ」という楽園のなかで、悪魔の誘惑に悩みながら。しかし、向かい合って座らずに、二人並んで座ってこたつの中へ入ればその悩みは解決するということに、二人はいつ、気付くのか。それは神さまも、知らぬこと。
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題「歩幅」「メガネ」お借りしました!ルクアロです。老眼鏡が必要になりはじめた頃のルクアロです。ルクアロはおじいちゃんになっても骨になってもずっとずっと一緒にいると思っています。
    お題:「歩幅」「メガネ」3/19「お前、メガネなんか掛けてたか」
     洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
    「読書をするときだけだよ」
    「なるほど、老眼鏡ってやつか」
     アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
    「アーロン、君には必要なさそうだな」
    「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
     数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
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