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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題「歩幅」「メガネ」お借りしました!ルクアロです。老眼鏡が必要になりはじめた頃のルクアロです。ルクアロはおじいちゃんになっても骨になってもずっとずっと一緒にいると思っています。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「歩幅」「メガネ」3/19「お前、メガネなんか掛けてたか」
     洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
    「読書をするときだけだよ」
    「なるほど、老眼鏡ってやつか」
     アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
    「アーロン、君には必要なさそうだな」
    「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
     数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
     こういうところ、本当に猫みたいだな。そして、昔と変わらない。
     ルークは本を閉じて、シャツ越しに肩をくすぐってくるアーロンの髪のひと房を、そ、と指でつまんだ。
    「散歩にでも行くか、アーロン」
    「本は?」
    「君が甘えてくるから集中できない」
     アーロンは何やら言いたげに眉間に皺をよせたが、ルークはかまわずアーロンの手をとり、本はそのまま椅子の上に残して、眠たげな午后の庭の門を開けた。

    「春が来たばかりだと思っていたのに、もうすっかり夏の匂いがする」
     休日で賑わう街には緑化計画により昔よりふえた街路樹が緑豊かな枝葉を茂らせている。いつのまにか新しい店が出来ていると思えばいつもの店の看板は何処にも見当たらない。この角地はなかなかいい立地なのにここ十年で三回も店が変わった。今はコーヒースタンドが芳しい香りで道行く人々を魅了している。とある家に今年も可憐な白い花が咲いているのを見つけたルークは、去年もこの花の名前を聞いたはずなのにまったく思いだせないと頭を抱えた。そんなふうに何という事もない会話をしながら、何ひとつ変わらぬものなどない、忙しなくもゆっくりと流れてゆく時のなかで、ルークとアーロンはうつろいゆく季節に彩られた街を歩いてゆく。
     ふと、妙なことに気がついたルークが一瞬、足を止めて、すぐにまた歩きだした。
     こんなに、アーロンの歩幅は狭かっただろうか
     自分は、いつも先を行くアーロンを追いかけていた。一緒に歩いていてもアーロンは数歩前を歩いていて、自分はアーロンに遅れをとらないよう一生懸命歩いた。君のその背中を、大好きだと思いながら、いつか君とならんで歩いてゆくに足る人間になりたいと、そう思っていた。
     気がつけば、君の歩幅と僕の歩幅は一緒で、僕たちはならんで歩いている。僕に合わせてくれているのだろうかとも思ったが、君は相変わらずマイペースで、そんな気を遣っている様子は少しもない。
    「アーロン、君……、足、短くなった?」
    「ぶっとばすぞてめえ」
     怒るというよりも呆れてため息をつくアーロンの足は歳を経てもなお、惚れ惚れとするくらい長い。それは見るだけでわかりすぎるくらいわかる。その健脚も昔と何ら変わらず、このまま何キロもずっと歩きつづけていられるだろう。むろん、自分の足が長くなったなどという奇跡が起こったわけでもない。ルークは自分の足と、アーロンのその見事な足を見た。
    「ルーク、何、下向いて歩いてんだ、転ぶぞ」
    「僕だって足はまだまだ丈夫だぞ」
     気をつけろよおじいちゃん、そう言って微笑うアーロンの目じりにできた皺が、ルークは大好きだった。アーロンの変わらないところも、アーロンの変わったところも、すべてが愛おしい。
    「歳をとるたびにどんどん君の好きなところがふえてゆくよ」
     肩をならべて、同じ歩幅で歩く傍らの相棒を、ルークは見上げた。アーロンはすました顔をして呆れた眼差しをルークに向けていたけれど、わずかに動揺しているのがわかった。ルークはそれに気づかないふりをして、だけれどきっと、自分が君のそんな反応を可愛くてたまらないと思っていることなどお見通しだろうアーロンの観察力が変わらずに鋭いことも解っていた。二人は黙ったまま、赤い煉瓦がどこまでもつづく歩道を歩いた。

     こうやって、いつまでもずっと、一緒に歩いて行けたらいいのに。二人でならんで、同じ歩幅で、ずっとずっと、何処までも。この道が何処へつづいているのか知らない。けれど、この先何があっても、二人で歩いて行きたい。十年先も、二十年先も、百年先も。天国へ行くか地獄へ行くか、でも、どちらへ行くとしても、二人の行き先は、同じだ。
    「来年も、あの白い花は咲くだろうか」
    「咲くだろうよ、それまでに花の名前、思いだしておけよ」
    「よし、来年までの課題だな。一年かけて思いだすぞ!」
    「ああ、来年また、楽しみにしてるよ」
       
       
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「バカップル」「たばこ」お借りしました!闇バもでてくる。ルクアロだけどBOND諸君がみんなで仲良く?しています。
    お題:「バカップル」「たばこ」7/16「キスしたときにたばこの味がすると、オトナのキスだな、て感じがするってむかし同級生の女の子が言っていたんだけど」
    「……女とそういう話するのか、意外だな」
    「ハイスクールのときだよ。隣の席の子が付き合いはじめたばかりの年上の彼氏の話をはじめると止まらなくて……それでさ、アーロンはどんな味がした」
    「何」
    「僕とキスをしたとき」
     午后の気怠さのなか、どうでもいい話をしながら、なんとなく唇がふれあって、舌先でつつくように唇を舐めたり、歯で唇をかるく喰んだり、唇と唇をすり合わせて、まるで小鳥が花の蜜を吸うように戯れていた二人は、だんだんとじれったくなってどちらからともなくそのまま深く口吻けをした。そうして白昼堂々、リビングのソファで長い々キスをして、ようやく唇を離したが、離れがたいとばかりに追いかける唇と、舌をのばしてその唇をむかえようとする唇は、いつ果てるともわからぬ情動のまま口吻けをくりかえした。このままではキスだけではすまなくなると思った二人はようやく唇を解いて呼吸を整えた。身体の疼きがおさまってきたそのとき、ルークが意味不明な問答を仕掛けてきた。アーロンは、まだ冷めやらぬ肉体の熱を無理矢理に抑込みながら寝起きでも元気に庭を走りまわる犬のような顔をしたルークの顔をまじまじと見た。
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