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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「犬」「ひざまくら」お借りしました!シバコです。公式の”愛犬の日”があまりにもかわいくてですね……シバコは何でも知ってるんですよ。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「犬」「ひざまくら」5/21 こうやって、だれかのおひざのうえでねるのはきもちがいい。あんまりきもちがよくてスグねむたくなっちゃうけれど、ほんとうは、あたまをなでてくれるてとか、ほっぺたをむにむにしてくれるゆびとか、やさしいめとか、もっとかんじていたい。でもやっぱりがまんができなくて、あくびがでちゃう。
     いろいろなひとのおひざのうえでねむったことがあるけれど、どのおひざも、みんなきもちがいい。やさしくて、いいにおいのするいちばんだいすきなこずえさんのおひざ。そのおひざのうえでねむっていると、いろいろなひとがやってくる。みんなもこずえさんがだいすきなんだ。
     たまに、だれもいないときに、あたまをなでてくれるてがあった。そのひとは、とおくの、ずっととおくのおそらのむこうをぼんやりとながめるようなめで、だまって、あたまをなでてくれた。そう、そのひとはこの“そらいろのしゅりけん”をくれたひとだ。でも、さいきんもうずっと、なでてもらってない。どうしたのかなあ。またいつか、あのおっきなてでなでてほしいな。
     まわりがとってもにぎやかになって、しらないひとたちがいっぱいやってきた。そう、そして、あのひとにあったんだ。はじめてあったのに、なんだかずっとまえからしっているような、なつかしくて、あたたかくて、おかあさんをおもいだす。もしかして、きょうだいなんじゃないかしら。そうおもったけど、でも、ちょっとちがう。ちがうけど、いまいちばんおきにいりなのは、このひとのおひざ。だから、このだいすきなだいすきなおひざを、きょうもひとりじめ!

    「……アーロン、なんでさっきからシバコのこと睨んでるんだ」
     釣りあがった眉の下の眼光は新月の夜に獲物を狙うが如く爛々として、揺籠のなかで微睡む無垢の犬をその光で射抜かんばかりに睨めつけていた。
    「ああ、そうか、……はい」
     ルークは、自分の膝の上ですやすやと眠るシバコが目を覚ましてしまわないように、そっ、と両腕をアーロンに向かって伸ばした。
    「何、」
    「いま、僕の膝の上はシバコの場所だから君にあげることはできないけれど、腕のなかはあいてるよ。だから、ここにおいで」
    「……意味がわからねえ」
    「だって君、すねているんだろう。僕の膝の上をシバコにとられちゃったから。ほんとうにあまえんぼうだなあ。ひざまくらはしてあげられないけれど、抱っこしてあげるよ」
    「何でそうなるんだよてめえは! 誰がこんな、犬に、……」
     アーロンが少し声を荒げたところでまったく起きる様子のないシバコはルークの膝の上にそのやわらかな腹も、ふわふわの尻尾も、小さな頭もすっかりと預けて、この世は太平ばかり也と鼻をぷうぷうと鳴らして眠っていた。そうしてもう一時間ばかりシバコはルークの膝の上で眠っている。ルークはシバコの頭を撫で、時折、楽しそうに微笑って飽くことなくその寝顔を眺めていた。そしてアーロンも、そんなルークをかれこれ一時間くらいずっと眺めていた。
     夕食の後、シバコはルークのまわりをぐるぐるとまわりながら鼻をぐい、と押しつけて、はやく遊ぼうと言わんばかりにまあるい黒い瞳をきらきらとさせていた。シバコに急かされて立ち上がったルークは早々に食事を終えていたアーロンに声を掛けて、まだ食事の途中のチェズレイと、既に徳利を一本空にして二本目に手をだそうとしているモクマをのこして部屋を後にした。満たされた腹を抱えた二人は、広い屋敷の廊下を自由気ままに歩いてゆくシバコのあとを、緋色とすみれ色の混じりあうまだ仄かに明るい空をぼんやりとながめながらついて行く。昏い緑の葉のあいだから白い小さな花がほろり、とこぼれて縁側の隅にひとつ、ふたつ、落ちる。いつの間にか二人と一匹は、静かで、人もあまり来ないような屋敷の奥へと入込んでしまい、ルークがシバコに戻ろうと声をかけてもシバコは構わず歩いて行く。どうやらシバコにとっては馴染みの場所らしい。アーロンが大きな欠伸をひとつ、ルークは戸惑いながら、シバコはそんな二人を先導して意気揚々と歩いて行く。程なくして辿り着いた部屋はシバコの隠れ処であるらしく、シバコは、秘密基地へようこそ !さあ! 遊びましょう! と言うように一声、鳴いた。
     そうしてたっぷりと遊んだあと、満足したのかシバコはルークの膝の上を占領してそのまま眠り込んでしまった。それから一時間ほど経過した今、シバコは豪快な欠伸と共にようやく目を覚まし、鼻を舌で舐めながらルークと目が合うと、嬉しそうに鳴いた。
    「ワン公、起きたんなら退け」
     ルークとシバコの前に仁王立ちしているアーロンが一人と一匹の上に重い視線を落とし、部屋ごと圧し潰さんばかりの圧力をかけてきたが、シバコは素知らぬ顔でふたたびルークの膝のあいだに顔を埋めた。アーロンの手が、シバコに伸びる。アーロンはシバコを抱きかかえて持ち上げようとしたが、シバコは一向に動こうとしない。鼻の頭にしわをよせて、低く唸りながらルークの膝にしがみついている。
    「すごい力で踏んばっとる!」
     ルークの膝のうえをずっと占領したいシバコと、しびれを切らし強行手段にでたアーロンとの攻防が始まった。
    「もう一時間もその場所貸してやったんだ、そろそろ退け」
    「がう! ぐるるるるる……ばうばう! ばう!」
     闘いは熾烈を極め、両者どちらも譲らない。
    「アーロンもシバコもそんなに僕のことを好いてくれているなんてとっても嬉しいけれど、喧嘩をするのはやめてくれ!」
    「てめえはひっこんでろ。これは縄張りをかけた闘いだ。ジャマすんじゃねえ」
    「ばう!」
    「縄張り?! 僕の奪い合いじゃなくて縄張り争いなのか?!」
     耳に聴こえるは花の落ちる音ばかりの静かであった部屋は天下分け目の合戦場と化し、その膝の陣にどちらの旗を立てるか、目には雷光、逆立つ毛は燃ゆる炎、牙は三日月、天地を揺るがす睨み合いは続く。
    「わりぃなワン公、このドギーの何処も彼処も、何もかも、ぜんぶ、ぜんぶ俺のもんなんだよ」
    「ぐるるるるるるるっるる……」
    「アーロン?! た……確かに僕のどこもかしこも何もかもぜんぶアーロンのものだけれどでも君、いま自分が何を言ったのか解ってるのか? 君からそんなこと言われたら僕、めちゃくちゃよろこんじゃうぞ!!」
     突然の流れ弾に心臓を射抜かれて、ひとり天上へと逝ってしまいそうになっているルークなどお構いなしに、鳴く、猫。吠える、犬。両雄、睨み合ったまま一歩も退く気はない。
     ……アーロン、僕のことドギーなんて呼んでいるけれど、君は、まるで、あまえんぼうでやきもちやきの、大きな大きな、猫みたいだ。可愛い可愛い、僕のキティ。
    「アーロン、おちついて」
     ルークは興奮して逆立った毛を慰撫するように、アーロンの髪を撫で、そして、牙を剥いて鳴く、その口に口吻けをした。
    「わう! わう! わう……くぅ」
    「シバコ、そんな声で鳴かないで。シバコのことももちろん大好きだよ」
     ルークはシバコのいい匂いのするふわふわの頭頂部に顔を埋めた。シバコが鼻を鳴らしてルークの頬を舐める。
    「……ワン公、マーキングのつもりか」
    「マ、マーキング?! シバコはあまえてるだけだよ。ほら、アーロンも好きなだけあまえていいぞ。そうだよな、今日は忙しくてなかなか二人きりになれなかったもんな。やっと二人きりになれたのにずっと放っておいてご免。さあ、いちゃいちゃしよう!」
    「わう!」
     ルークに飛びかかるシバコの横で、見えない鉤爪を出す音がする。
    「アーロン! その爪をしまってくれ、いや鉤爪は出ていないけれども。シバコも唸らないで! ああもう、ふたりとも、仲良くしてくれ!!」
     十六夜の月が煌々と啼く雲ひとつない空に、”ドギー”の咆哮が遠く々、轟いた。
      
      
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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