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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題をお借りしました。アーロンの過去の想いでとトラウマ。ルクアロです。ちゅーまで。

    #ルクアロ
    rquaro.

    お題:「火傷」「五分間」6/18 君の頬にふれて火傷した指は、少しづつ蝋燭のように溶けてゆき、手首、肩、背中、やがて全身が溶けて、僕のカタチは失くなり、跡形もなく消えてゆく。この世界から僕がいなくなる。誰も僕が在たことを憶えていない。僕は最初から在なかった存在のように、この世界からも、皆の記憶のなかからも失えてゆく。
     それでも、世界が僕を忘れても、忘れないで。君だけは、僕を忘れないで。僕のことを憶えていてほしい。夜空の星のように、道端に咲く花のように、萌えいずる新緑に吹く東風のように、フと、その存在に気付いて、一瞬でいいから、僕という存在が在たことを、想いだしてほしい。いつか君の世界が終焉る、その日まで。

    「アーロン、まだ痛む?」
     ルークの声に、白昼夢から目覚めたようにアーロンは頭を振って、自分の右腕を見た。微弱な電流が細い針となって腕を刺すような痛み。だが、ルークの大袈裟な処置が痛々しさを増しているだけで、さして痛くもなく、むしろむず痒いような、くすぐったいような感覚に、アーロンはこの大量にあてがわれた保冷剤とそれを固定するためにぐるぐると巻かれた包帯を退けてしまいたいと思ったが、ルークがしっかりと手を握っているためままならず、黙ってじっとしていた。
     ずいぶんと昔の事を思いだしていた。火傷なんてしたのは久振りだったからだろうか。遠く、置去りにしてきた想いで。
    「……そういえば、あのときも、君が僕の代わりに火傷したんだっけ」
     マグカップからこぼれたホットミルクは幼く細い腕にはあまりにも熱くて、気を失った。けれど、火傷をしたのが自分でよかった。君じゃなくてよかった、そう思った。皮膚を焼くその痛みは誇らしく、君を護ることが出来たことの歓びでいっぱいだった。
    「……そんなことあったかよ」
    「今日と同じように、あのときはコーヒーじゃなくてホットミルクだったな。僕が手をすべらせて膝のうえに落としそうになったカップを君が手で受けとめようとしてそのままこぼれたミルクが君の腕にかかってしまったんだ。君はそのまま気を失ってしまって」
    「てめぇがそそっかしいのは変わらない、ってことかよ」
    「変わらないのは、君が優しい、ってことだよ」
     少しづつ、やわらかくなってゆく保冷剤のぬるさと湿った包帯が雨に濡れたシャツのように気怠く腕にまとわりつく。
    「こんなのたいしたことじゃない。もっと、」
     言いかけて、黙る。しかし、ルークはその先に続く言葉を理解してしまった、そんな顔をして、包帯で巻かれたアーロンの腕を凝、と見た。
     火傷をする度に、思いだしていた。研究所でのあの日のことを。それは自分にとっては悪い思いでなどではなく、むしろ“ヒーローを護ることが出来た”誇らしい想いでだった。けれど、いつしかその想いでには別の記憶が侵入り込み、歪んでいった。
     街が爆撃される度、衣服や、皮膚や、髪が炎に焼かれた。火傷をしてもその傷をろくに癒すことも出来ず、焼けた皮膚の熱さに眠れない夜もあった。その度に、これは、この痛みはあのときの名誉の負傷だ、そう思ってその痛みに耐えてきた。けれど、幾度も眠れない夜を過ごして、ヒーローのいない世界でただひとり痛みに耐えているうちに、だんだん、この熱が全身にひろがって、いつか自分の身体がまるごと灼かれて失えてしまうんじゃないかという恐怖に苛まれるようになった。
     自分が失えてしまったら、もう、ヒーローに会えない。肉も、骨も、すべてが跡形もなく焼かれてしまったら、もう、ヒーローが僕を見つけることができなくなってしまう。ヒーローに忘れられてしまう。それは、火傷なんかよりもずっと、ずっと痛くて、苦しくて、耐えられない。
     だから、炎に妬かれる度に、想いだしていた。いつかの日、君の頬にふれた、その指の熱さを。君の頬にはじめてふれたとき、真夏の太陽よりもホットミルクよりも、熱いと思った。全身が燃えるように、熱くなった。これは君の熱だ。君を想う、熱さだ。そう思いながら、この世界から失えてしまいそうになる自分を何度も何度も奮い立たせた。
    「……もう、思いだすこともねえと思っていたが」
    「辛いことを、思いださせてしまったな。……ご免」
    「……違う、そうじゃねえ」
     アーロンは、包帯の端をつかむルークの蒼褪めた手を強く握って、真直ぐにルークの目をみた。
    「火傷はな、俺の“名誉”なんだよ。てめえを護ることができた。そして、俺はコーヒーよりもホットミルクよりも、炎よりも、熱いモノを知っている。その熱さにくらべたら、こんな火傷くらいなんてことねえんだよ」
     熱い、熱くて熱くて、握った手も、見つめた燃える緑の瞳も、その、無遠慮に押しつけてくる唇も。
    「……なんで、このタイミングでキスしてくるんだてめえは」
    「……したくて、……僕も、その熱さを知りたくて、君の、熱を知りたい」
     灼けた銅のように熱い唇を噛んで分厚い舌を捩込むと、口中は熔けだしたマグマのようにどろどろになって、そのマグマを呑み干さんばかりに吸いついてくる唇と絡まりあった舌はもうどちらのモノかわからなくなるくらい溶合い、喉を降りて堕ちてくる唾液が腹のなかを灼いた。
    「……、ッこれくらいに、しろ、……、とまらねぇ」
    「……あと五分間だけ、このままキスしていたい。君のなかにいさせて」
     五分間、この熱がそれで終わるはずがないことを解っていながら、二人は、あと少し、少しの間だけこうしてお互いの熱を感じていたい、そうして、唇も肉体も内臓も骨も灼きつくしてしまうくらい、互いの熱を確かめあった。
      
      
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「はちみつ」「恋」をおかりしました!ルクアロがいちゃいちゃいちゃいちゃしています。
    お題:「はちみつ」「恋」5/7 はちみつみたいに、あまい、あまい恋をしたの。
     それは、パンケーキに蜂蜜のチューブをまるまる一本かけたくらいあまい?
     そう訊いたら、パンケーキに蜂蜜をそんなにかけたことないから解らない、そう言われた。それはある日の放課後、クラスメイトの女子たちがクラスで流行っていた小説の一節を読み上げて聴かせてくれたときの会話だ。別の女子が、きっともっともっとあまいわ、スーパーの棚に並んでいる蜂蜜をぜんぶパンケーキにかけたよりもずっとあまいのよ、そう言って胸のまえで両手を強くにぎりしめてため息をついた。
     スーパーの棚に並んでいる蜂蜜ぜんぶをパンケーキにかけたよりもあまい。
     それはどれくらいあまいのだろう。想像もつかない。けれど、蜂蜜のチューブ一本まるまるパンケーキにかけたとき、脳がしびれるくらいあまかった。父さんにみつかって、蜂蜜のチューブ一本をまるまるパンケーキにかけることは禁止されてしまったけれど、ときどき思いだす、あのあまさを。あの、脳がびりびりっとして舌がどろどろにとけてしまうくらいあまい、あまい、はちみつよりもあまい「恋」とはどんなものかしら。そんなにあまい「恋」をしたら僕の舌はとろけて蜜になって口のなかはあまいあまい蜜でいっぱいになって息ができなくなってしまいそう。いっぱいになった蜜は口のなかからあふれて僕の体がすっかりと蜂蜜の瓶のなかにもぐってしまったみたいになったら、僕の心臓もひとくちかじると歯がじんじんするくらいにあまくなって、おなかのなかも頭のなかもあまい蜜でぱんぱんになった僕は、僕自身が世界中の蜂蜜をぜんぶかけたあまくてふわっふわのパンケーキみたいになってしまうんじゃないかしら。
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