満ちるときぎし、とベッドが軋んで高峯が俺の上へと覆い被さってくる。そのまま唇へと降ってきた熱に思わずびくりと肩が跳ねた。構えてはいたけれど、未だ慣れはしない。そんなガチガチな俺を気遣うように繰り返される優しい口付けに、無意識に強張っていた身体がゆっくりと解けていく。出会った頃よりもうんと広くなった背中に手を回せば、嬉しそうな吐息が溢れた。
ちゅっ、とリップ音を立て、顔を離した高峯の瞳は一段と蕩けている。親しい友人にも、大好きなゆるキャラ相手にも、ファンにも、誰にも見せない俺にだけ向けられる顔。入学したばかりのあの頃、今にも死にそうな表情をしていた彼からは想像もつかない。ましてやそれを一身に向けられるようなことになるなんて。
そんなことを考えていると、こっちに集中しろとでも言うように高峯の手がするすると身体の輪郭をなぞるようにして、下へ下へと降りていく。俺の身体は、たったそれだけですっかり一方的に植え付けられた期待に身震いした。
「っ、あ……」
ざわつき始めていた腰の裏側に強く入り込む指に、堪らず声が漏れる。思いがけず零れた甘い声を慌てて噛み締めようとするも、今度は腹筋の筋を指先で、つ、となぞられて邪魔をされた。
浮き上がりそうになる腰を必死に堪える俺を、甘く溶かすように、下腹部をすりすりと手のひらで撫でられる。
続くだろうこの先の行為を予想し、やめさせようと高峯を見上げるも、嬉しそうに碧色の瞳を細める男の方が速かった。
「ひっ、ぁ……！」
ぐ、と体重を軽くかけて押さえられたそこは苦しいはずなのに、じわりと甘い痺れのような熱が広がる。繰り返されるそれに堪え切れず腰がびくんびくんと跳ねた。
向けられる劣情の色と形を、この度に思い知らされる。
俺の反応に味をしめた高峯は、指先にますます力を込めると、臍から下腹部の間をゆっくりと上下させて外からじわじわと腹の内を蕩かそうとしてきた。
「あっ、ッア、は……、んッ……」
高峯の指に押される度、情けない声がどうしても溢れてしまう。
「守沢先輩……」
シーツの上をみっともなく掻くつま先を掴まれ、高峯に熱っぽく名前を呼ばれた。されるがままに開かされる脚の間に高峯の身体が割り込む。
そうしてぴたりとくっつけられる腰。布越しでもはっきりと分かる昂り。その欲の硬さと熱に、今にもくらりと眩暈を起こしそうだ。
「た、かみね……ぁ、んっ」
滑り込んだ指が臀部を通り後孔を服の上からなぞり上げる。そっと押して、とんとん指先で叩いて、かと思えば丁寧になぞって。そんな些細な刺激なのに、高峯の指の動きに合わせてあられもない声が漏れてしまった。
理由はもう、とっくに分かっている。それから目を背けることに限界が来ていることも。
「ぁ、やっ、も……！」
「あーあ、早く欲しいな……」
先輩もそうでしょう？そう囁くどろりとした声が、腹の奥を確かにきゅんと収縮させた。
高峯の卒業まであと少し。
とろりとろりと融けゆく思考の中、自分の意思で腰をゆらりと揺らす。疼く其処を、早く埋めて欲しいと願いながら。