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    コーヒーブレイクの話

    #さざれゆき又鬼奇譚

    お茶請けみたいな小噺一つ●1
     コーヒーにドカ盛りの生クリームを乗せてチョコのソースまでかけている。「夜にコーヒー飲んだら寝れなくならねぇか」と「歯ァ磨いた後にそンなもん飲むのか」と「さっきもでけぇアイス食ってなかったか?」が渋滞したので、いっそ見なかったことにした。嬉しそうな「いただきます」が聞こえた。見なくても笑顔が想像できた。

    ●2
     こういうのをコーヒーブレイクって言うんですよ。そう言って差し出されるコーヒー。の上に魔法のように乗せられるバニラアイス。生クリーム。さあ召し上がれと彼が笑う。だからそうっと、銀のスプーンでコーヒーを混ぜた。熱い苦味に、甘い味わいが蕩けていって、ちょうどいい温度になる。人生と一緒ですね、なんて、彼は上手いこと言ってやったぜ顔をしていた。

    ●3
     ウインナーコーヒーって知ってるか銀次。ウインナーを添えたコーヒーだよ。飲むかい。東京じゃ若者を中心に大人気さ。……。あっ熱感知するなよおまえ、嘘なのがバレちゃったら面白くないだろ。しょうがないな……じゃあ本物のウインナーコーヒーを召し上がれ。お茶請けにウインナーもどうぞ。おいしいよ。

    ●4
     コーヒー飲める? 飲めないだろ。苦いもんなハハハ。おっとそんな目をするなよ。大丈夫大丈夫、そんな君の為にだね、牛乳とお砂糖を入れたものがこちらです。オマケであいすくりんも乗せてやろう。さくらんぼも乗せてやろう。さあ召し上がれ。甘くて美味しいぞ。クッキーもつけてやろうか? 

    ●5
     コーヒー、好き! ミルクとお砂糖をたっぷり入れて、上にクリームもホイップして、チョコレートソースもかけて……え? それってコーヒーのコーヒーらしさがほぼない気がするって? ブラックも好きだけど~ 甘い方がいいじゃない? 人生だってさあ、苦いより甘い方がいいじゃん。私今すごくいいこと言った気がする。むふー。

    ●6
     今日は紅茶の気分。それもミルクティー。フレーバーティーじゃなくて王道なセイロンがいい。お砂糖は入れないで。茶葉の甘みを楽しみたいの。だから今日のおやつは紅茶に合うものにして頂戴。そうなるとやっぱりスコーンかしら。焼き上がるまで本を読んでいるから、この席で。後で二人でアフタヌーンティーしましょ、権之助。

    ●7
     次の任務にあたって、UGNの資料室で調べ物をしていた、けれど、いい加減に集中力が切れてきた。ヤニ休憩の帰り、自販機でコーヒーを2つ買う。そーいや無糖も飲めるようになったよなぁ清志郎、まあ買ったのは微糖なんだけどね。資料室に戻る。眉間を揉んでいる相棒がいる。ちょっと休憩しようよ。お菓子もつけてあげるからさ。

    ●幻
     紅茶ができるまでの5分間。カバーをかけられたティーポットを前に「まだ?」「まだ?」と何度も繰り返してくるし、手持ち無沙汰だからと腹や胸や肩や背中を「デュクシ、デュクシ」だのドスドス突っついてくる。綺麗な砂の砂時計を導入したら改善された。青い砂がこぼれ落ちていくのを、5分間、飽きもせず静かに眺めている。
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    DOODLE十三 暗殺お仕事
    初夏に呪われている ●

     初夏。
     日傘を差して、公園の片隅のベンチに座っている。真昼間の公園の賑やかさを遠巻きに眺めている。
     天使の外套を纏った今の十三は、他者からは子供を見守る母親の一人に見えているだろう。だが差している日傘は本物だ。日焼けしてしまうだろう、と天使が持たせてくれたのだ。ユニセックスなデザインは、変装をしていない姿でも別におかしくはなかった。だから、この日傘を今日はずっと差している。初夏とはいえ日射しは夏の気配を孕みはじめていた。

     子供達の幸せそうな笑顔。なんの気兼ねもなく笑ってはしゃいて大声を上げて走り回っている。きっと、殴られたことも蹴られたこともないんだろう。人格を否定されたことも、何日もマトモな餌を与えられなかったことも、目の前できょうだいが残虐に殺処分されたことも、変な薬を使われて体中が痛くなったことも、自分が吐いたゲロを枕に眠ったことも、……人を殺したことも。何もかも、ないんだろう。あんなに親に愛されて。祝福されて、望まれて、両親の愛のあるセックスの結果から生まれてきて。そして当たり前のように、普通の幸せの中で、普通に幸せに生きていくんだろう。世界の全ては自分の味方だと思いながら、自分を当然のように愛していきながら。
    2220

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