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    七班 光の銃のやつ

    #さざれゆき又鬼奇譚

    分かち合えど陰らず ●

     朝起きたら伊緒が光っていた。

    「……なして……?」
     光量でいうとスマホの画面の明るさをマックスにした時ぐらい。カーテンを締めた薄暗さの中、清志郎の視線の先の伊緒は自らの両手を見つめている。
    「なんか光るようになった……」
    「だからなして……?」
    「ちんちんも光るのかな」
    「やめなせっ……」
     光った。
     さておき。
     伊緒の発光は身体やレネゲイドの異常ではなく、彼のシンドローム――ウロボロスの力に起因するものだった。
     長らくエンジェルハィロゥの清志郎と共に居たことで、その異能因子を得たのだろう……と伊緒は考察して清志郎に述べた。
    「へへ。なんか嬉しいな」
     ぽ、と掌に灯る光を見下ろして、伊緒は柔らかく笑っていた。
     その横顔を見ていると、清志郎もなんだか――柔らかい気持ちになった。

     ●

     帰宅したら家の中がめちゃくちゃ光っていた。

    「なっ、なんっ、」
     うおっまぶしっ。清志郎は思わず腕で顔を覆う。
    「おー清志郎おかえりー」
     ギンギラギンの光の中、光りすぎて白飛びして白抜き状態の伊緒が片手を上げる。
    「伊緒おめさん何やって……」
    「光の操作練習してたら超光るから楽しくなっちゃって」
    「ご近所さんに怪しまれるから……!」
     光量を落とした。伊緒の姿が現れる。――ハッ、と何か重大なことに気付いた神妙な顔。
    「清志郎これ……!」
    「な、なした……?」
    「全裸でも超光ってたらバレないんじゃない?」
    「やめなせ」
     このあと家の中で一回やった。清志郎にしっかりめに怒られた。なしてことあるごとに下半身を見せてくるんだこの鎌倉人。

     ●

     UGNの射撃訓練場。
     清志郎は定期的にここで鍛錬をする。復讐は終わったが、それは研鑽を辞める理由にはならない。
     鍛錬は専ら一人で行っているのだが、今日は隣に伊緒が居た。というか伊緒から呼び出されたのだ。
    「見ててくれ」
     得意気に。伊緒が片手を翳す――光が灯り、集まり――それは細長く、シルエットならば清志郎の愛銃と同じになる。
    「光使いの技に、こうやって光を集めて武器にする術があってね。僕の異能で模倣してみた」
     持ってみて、と差し出される。清志郎は驚きに半ば放心状態でそれを受け取った。光なのに『持てる』ものなのだなと心のどこか冷静な部分が呟く。厳密には物理的に持つというより、手の中で浮いて留まっているといった雰囲気か。光ゆえ質量や重みはない。不思議な感じだが、エンジェルハィロゥゆえか、違和感はなかった。
    「使ってみて」
     そう言われて。分かった、と頷いた清志郎はいつものように得物を構える。重みがないのが少し慣れないが――自らの異能の因子にはよく馴染む。的を狙い、引き金を引く。感触はないが、感覚の問題だ。
     銃声はないが、代わりに閃光。
     放たれる光が、遠くの的を射抜く。真ん中から少しズレている。
    「う〜ん……やっぱり威力も精度も、君の銃には劣るなぁ……まあ、改善点ということでこれから調整していくさ」
     的を見て、片眉を上げ、伊緒は後頭部を掻いた。それから清志郎を見る。
    「四六時中、武器を持ってるワケじゃないだろ、君。でもジャームや異能は君の都合を待ってくれない――今の時代、大きい銃を担いでうろつくことがそもそもリスキーだしね。だから、この銃はそういう時の為の緊急用護身銃ってことで」
    「伊緒……、」
     手の中の静かな光を見る。柔らかくて、なんだかあたたかくも感じる。
     ――清志郎の為だけに作られた、世界でただひとつの銃。
    「ふ、」
     この感情は、きっと、「嬉しい」だ。清志郎は顔を上げ、伊緒に笑みを浮かべた。
    「ありがとう」
    「どういたしまして。ほら、練習しよう。付き合ってくれ」


    『了』
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    DOODLE十三 暗殺お仕事
    初夏に呪われている ●

     初夏。
     日傘を差して、公園の片隅のベンチに座っている。真昼間の公園の賑やかさを遠巻きに眺めている。
     天使の外套を纏った今の十三は、他者からは子供を見守る母親の一人に見えているだろう。だが差している日傘は本物だ。日焼けしてしまうだろう、と天使が持たせてくれたのだ。ユニセックスなデザインは、変装をしていない姿でも別におかしくはなかった。だから、この日傘を今日はずっと差している。初夏とはいえ日射しは夏の気配を孕みはじめていた。

     子供達の幸せそうな笑顔。なんの気兼ねもなく笑ってはしゃいて大声を上げて走り回っている。きっと、殴られたことも蹴られたこともないんだろう。人格を否定されたことも、何日もマトモな餌を与えられなかったことも、目の前できょうだいが残虐に殺処分されたことも、変な薬を使われて体中が痛くなったことも、自分が吐いたゲロを枕に眠ったことも、……人を殺したことも。何もかも、ないんだろう。あんなに親に愛されて。祝福されて、望まれて、両親の愛のあるセックスの結果から生まれてきて。そして当たり前のように、普通の幸せの中で、普通に幸せに生きていくんだろう。世界の全ては自分の味方だと思いながら、自分を当然のように愛していきながら。
    2220

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