サーカスの幕間に ●
調味料が切れちゃって。ちょっとひとっ走り買ってきてくれない?
というワケで。
小柄な座長をその背に乗せて、白い獅子が街道を疾駆している。風に揺らめく草原の中、きらきら輝く白い毛皮は人目を引く――
「まあ、見て。白いライオンが走っているわ!」
街道を行く馬車。それに乗った貴婦人が、驚きの声で御者に言う。
「なんぞ聞いたことがございます、奥様。なんでも『サーカス団』だとか――」
「サーカス? まあ! 昔々、小さな頃に見たことがあるわ!」
御者の声に、貴婦人は思わずと車窓から顔を覗かせた。その目はかつてサーカスを見た時のように輝いている――
「パパ、あのひと僕らのこと見てる!」
「そうだね、少しご挨拶しようか」
2867