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    幻班 UGNとの接触妄想

    #さざれゆき又鬼奇譚

    19XX ●

     風の噂。
     東京郊外に建つその旧い邸宅には、『怪物狩り』が居るという。

     二十世紀末期。
     UGNという立ち上げられたばかりの組織のエージェントは、朧な情報を頼りに車を走らせ――そして、昭和以前の旧い邸宅へと辿り着く。建築当初の時代らしい、どこか和洋折衷の趣をした洋館だ。
     時間帯は夕暮れ、逢魔ヶ時。周囲の木々の暗闇に、得も言われぬ雰囲気を醸し出している。飾り窓に黄昏が映り込み、妖しげな陰影を移ろわせていた。
     一見して――廃墟ではなさそうだ。割れている硝子はなく、雑草が繁茂していることもない。手入れがされている。……住人か使用者が居るのだ。エージェントは息を呑み、車から降りると邸宅へと歩き出した。

    「誰か来はるよ」
     そろそろ夕刻なので明かりを点けんとしてた、薄闇の中で青年の輪郭が向こう側へと呼びかける。返事がなかったので――無視ではなく聞こえていないと認識し――『音』で捉えた彼の居場所へ軽快に向かいつつ、もう一度。
    「ねえ先生ぇ、お客さん」
    「客?」
     薬品棚を整理していた男が怪訝げに振り返る。
    「男の人。一人やわ。どないする? 一応ハナシ聞いてきたろか?」
     いそいそ声を弾ませる青年に、男は溜息を返した。
    「押し売りとか宗教勧誘でなければ」
    「うい!」
     ひらり、風のように青年は部屋を後にして――

    「いらっしゃーい! どちらさまー」

     エージェントが今まさに開けんとしていた扉を開け放ち、青年はニコーッと懐っこい笑顔を向けた。エージェントは思わぬ奇襲にビクリと肩を跳ねさせる。
    「っ……ええと、こんにちは」
    「はいこんにちは〜」
     青年が挨拶を返したところで――エージェントはワーディングを展開した。空気がピリつき、途端、青年の笑顔がフッと消える。
    「ワレ超人か。うちに何の用や」
     威圧。見た目は青年だが、放たれるプレッシャーは百戦錬磨の古兵。「俺も超人だぞ」と言わんばかり、パリッと電気火花が散った。
    「――貴方は『怪物狩り』、ですか?」
     緊張しつつ、慎重にエージェントは尋ねた。「敵意はありません」と両手を上げる。
     対する青年は――ギラリと笑った。
    「ワレ何モンや?」
    「……貴方の仰るところの超人、オーヴァードによる組織『UGNユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク』のエージェントです。我々は同胞を探しております……貴方のような、異能を持つ超人オーヴァードを」
    「っていう新興宗教……なワケでもなさそやな。ワレの目ぇと心臓は真剣や。……マジな奴な好きやで、上がってけや」
     青年が顎で示す。「失礼します」、とエージェントは屋敷へと脚を踏み込んだ。

     ――掃除は行き届いている。
     家の中は荒れた様子は欠片もない。しかし調度品に凝っているとか、そういうブルジョワな趣味もない。生きる為に必要なものが置いてあるという印象だった。

    (生活環境にジャーム化の兆しはないな……)
     それとなく見回しつつ、エージェントは思う。ジャームのねぐらは片付けもままならずに荒れているか、病的なほど整理されているか、極端な例が多い。
     それからエージェントは応接間らしき部屋のソファに腰を下ろした。正面、「八代侠太郎」と名乗った青年が我が物顔でどっかと座る。洒落た洋館の持ち主、にはあまり似合わぬ雰囲気だが、慣れきった様子は長年ここに住んでいる趣である。
    「ここんとこ、『普通やない』事件がよう起きとるが――」
     侠太郎が切り出すのは、テレビやラジオで連日報道されている不可解にして大規模な事件の話だ。ビルが爆破された、軍艦が沈んだ、大火災が発生した、集団規模の失踪や大量殺人、ハッキングに情報漏洩……ある日を境に、世界中で混乱が巻き起こっていた。
    「やっぱ俺らみたいな『人間やない存在』の事件なんか? 自分らユージーエヌちゅうんは、それとなんか関係しとるんか?」
    「ええ……話が早くて助かります。我々は――」
     エージェントはレネゲイドウイルスのこと、その拡散事件のこと、オーヴァードやジャームのこと、UGNやFHのことを包み隠さず話した。侠太郎はそれを、じっと見澄ますように聴いていた。
    「――どうかUGNにご協力頂けませんでしょうか。もちろん対価や社会的保証などバックアップも致します」
    「つまり怪物を――自分らの仰るジャームちゅうんを、俺にようけブチ殺して欲しいんやな?」
     ニコッ、と侠太郎は心から嬉しそうに笑った。好感触にエージェントは安堵の顔を浮かべる。
    「戦闘任務にご協力頂けるのであれば非常に助かります! 是非――」
     その瞬間だ。「失礼します」とドアが開き――西洋人であろう金髪碧眼の男が現れる。日本語は流暢だ。
    「勝手ながらお話はおうかがいさせて頂きました。続きは私が承ります――……ああ、私も『オーヴァード』ですよ」
     この通り、とテーブルの上に魔法のように珈琲とクッキーが現れる。そして彼は、少し身を屈めソファの侠太郎に耳打ちをする。
    「侠太郎さん、」
     席を外すよう目配せをする。青年が片眉を上げた。
    「なんでえ〜?」
    「……悪いようにはしません」
    「ほんまにい〜?」
     首を傾ける侠太郎に、男はニコリと人畜無害に微笑んだ。
     ――現時点の『交渉内容』では、向こうだけが得をする。まあ侠太郎にとっては怪物を殺戮できれば既に得なのかもしれないが――そこに付け込まれて道具扱いされて使い潰されるのは、流石に看過できない。
     侠太郎は名前の通り義侠心に溢れた男だ。助けてくれと言われたら、即断即決で「ええよ」と頷く。頷いてしまう。だからこそ、ここからは交代だ。
    「しゃあないのう」
     やれやれと立ち上がり、出されていたクッキーを一枚強奪して、ポリポリ齧りながら……侠太郎は部屋から出ていった。
    「さて」
     代わってエージェントの前に座る笑顔の男。細められた青い瞳が、相対する者を見据える。
    「少し、話をしましょうか」

     ●

     交渉事が上手いのは伊緒兵衛だ。信頼もしている。だから諸々は彼に任せよう。
     とはいえ、万が一に備えるのと、やり取りが気になるのとで、侠太郎はカウチソファに寝転がりつつ『音』を拾っていた。
     要約すると――侠太郎達はUGNには加入しないが協力関係を結ぶこと、伊緒兵衛の知識とUGNの情報を交換すること、侠太郎への『依頼』の要項は伊緒兵衛が目を通すこと、侠太郎に人殺しや裏切り者の粛清など汚れ仕事をさせないこと、などなどが概ね仮決定した。後日、改めて支部に赴くことも。
     異論はない。だから、話し合いが終わってエージェントが帰ってから、侠太郎は「お疲れさん、異論なしでーす」と伊緒兵衛に伝えた。
     それから一間。時代の移り変わりの渦中に居ることを感じつつ、青年は続ける。
    「それにしても……なんや、激動やねえ」
    「そうですね」
    「ええ感じになるとええのう!」
     侠太郎が焦点の合った笑顔で伊緒兵衛を見上げる。
    「たとえば、自分の呪いが解ける方法が人海戦術で見つかるとか――」
    「そうと決まれば、服を新調しましょうか」
    「服ぅ?」
     あー今『逸らした』なと笑顔に対して思いつつ、話題を合わせる。
    「スーツ。いい加減、デザインが昭和のままでしたし」
     ちょうどいい機会だと伊緒兵衛が言うので、「あ〜、はいはい成程ね」と侠太郎は納得する。確かに彼の言う通りなので、反駁しない。
    「……ま、ともかくアレや。なんかトラブったら俺が全部ブチ殺したるさかい。ペンは剣より強しというが……時には剣でしかどーにもならんこともあるからの」
     己は剣、おまえはペン。「ペン的な部分は頼りにしとるよ」、と伊緒兵衛の胸を拳でポフンと緩く叩いた。それから、新しいスーツはどういうのにしようかなと考えていた。


    『了』
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    Xpekeponpon

    DOODLE十三 暗殺お仕事
    初夏に呪われている ●

     初夏。
     日傘を差して、公園の片隅のベンチに座っている。真昼間の公園の賑やかさを遠巻きに眺めている。
     天使の外套を纏った今の十三は、他者からは子供を見守る母親の一人に見えているだろう。だが差している日傘は本物だ。日焼けしてしまうだろう、と天使が持たせてくれたのだ。ユニセックスなデザインは、変装をしていない姿でも別におかしくはなかった。だから、この日傘を今日はずっと差している。初夏とはいえ日射しは夏の気配を孕みはじめていた。

     子供達の幸せそうな笑顔。なんの気兼ねもなく笑ってはしゃいて大声を上げて走り回っている。きっと、殴られたことも蹴られたこともないんだろう。人格を否定されたことも、何日もマトモな餌を与えられなかったことも、目の前できょうだいが残虐に殺処分されたことも、変な薬を使われて体中が痛くなったことも、自分が吐いたゲロを枕に眠ったことも、……人を殺したことも。何もかも、ないんだろう。あんなに親に愛されて。祝福されて、望まれて、両親の愛のあるセックスの結果から生まれてきて。そして当たり前のように、普通の幸せの中で、普通に幸せに生きていくんだろう。世界の全ては自分の味方だと思いながら、自分を当然のように愛していきながら。
    2220

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