リューとの話水篠旬は死線にいた。
眼前に迫る無数の真紅。死の剣筋で埋められる空間。
避けなければ死ぬ。
対峙する男から向けられる、明確な殺気に襟首がひりつく。
久しく味わっていない「死」の感覚。
掠っただけでも無事では済まない、自分であっても致命症を負うほどの威力を持った一刀。
双方手加減なしの、殺し合い。命のやり取り。
無限の紅の中で身体は踊るように動き、襲い来る死を避け続ける。
それを万回繰り返す。
堪えきれず笑みが溢れる。
―楽しい。
―愉しい。
死線を捌く度に、旬の胸は熱く高鳴る。
―すごい。
―素晴らしい。
―「人間」が、ここまで極められるのか。
旬の胸に去来しているのは感動である。果てしない鍛錬により身につけた神の技を繰り出し続ける男。もはや「人間」を超えている。
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