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    ミカド

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    ミカド

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    全校集会前にネクタイ結びで新婚さんごっこしてる
    杏こは要素。攻めズと瑞希がよく喋る

    #彰冬
    akitoya
    ##彰冬

    彰冬 今日のHR後には全校集会があった。新学期ぶりの今回は、集会後、ついでに頭髪検査もやるらしく、クラスの女子は化粧がどうので賑わっていた。
     オレが体育館に着くと、ひとクラスぶんくれえの生徒しか集まっていなかった。そんな中で見慣れた後ろ姿を見つける。
     ちょうど体育館全体的の真ん中、その先頭に冬弥がいた。HRの終わりが早かったのか、冬弥のクラスは集まりがいい。昼休みにちょっと教室に入るくれえだから知り合いもいねえし、冬弥のところまで一直線に向かう。
    「——冬弥、おはよ」
    「彰人か。おはよう」
    「お前のクラス、集まりいいな。オレのとこはこの後の頭髪検査にビビって全然来てねえぞ」
    「風紀委員の正門チェックとは別にあると、少し緊張してしまうからな。その気持ちはわかる」
    「お前は緊張しなくてもいいだろ。手本みてえにぴしっとしてんだし」
    「……」
     オレの言葉に冬弥は黙りこくった。前で腕を組んで、オレの頭から上履きまでじっくり観察するかのように目を細める。
    (あー…これ…)
     冬弥の鋭い目つきから、オレはこの後の展開が予測できた。今更逃げられねえのは確かだから、腰に手を当てて待つことにする。
    「彰人、ネクタイを締めるんだ。それと、その両耳のピアスも外してしまっておいた方がいい」
    「ピアスもかよ?」
    「そうだ」
     たまに注意してくる先生もいるが、別に校則違反なわけじゃねえ。風紀委員にも言われたことねえし——。とまぁ、いろいろと反発する言葉は浮かぶわけだが、オレの黙る時間が増えるたびに冬弥の顔が険しくなっていく。
    「こういう場面でも先生方からの内申点は左右される。その場しのぎをあまり勧めたくはないが、メリハリのつく生徒だと、感心を持たれるかもしれない。使わない手はないだろう」
     優等生の冬弥らしからぬ戦略法だが、きっとこいつもオレのことを思って言ってくれてる。ここまで言われちゃ、まるでオレが駄々を捏ねてるみてえだ。
    「……わぁったよ」
     そういえば、今回の頭髪検査の担当は三年の生活指導をやってるヤツだったような気がする。いや、多分そうだ。だから冬弥も口酸っぱく言ってくれてるんだろう。
     ピアスを外す。ポケットに入れたらチェーンが絡まったり無くしたりしそうだし、財布にでも入れるか。
    「…っ」
     ズボンのポケットから財布を取り出そうとしたら、正面に立つ冬弥の腕が伸びてきて、オレのネクタイを解き出した。
    「結べないわけではないんだろう? どうして緩めるんだ?」
    「…パーカー着てると苦しんだよ」
     解いたネクタイを手に巻き付けて、オレのワイシャツの襟を立てる。両腕が伸びてきたもんだから、なんかちげえことを想像しちまって、冬弥が目を離した隙に頭を振って邪心をはらった。
    「あー…冬弥、」
     別にお前がやらなくたっていいだろ、って言いかけるが、既に取り掛かってるところだった。「うん?」って顔が上がるが、無垢な表情を見たら途端に言葉に詰まる。もういいや、冬弥の好きにさせてやる、って投げやりな気持ちになった。
    「——あー! 彰人が冬弥にネクタイ結ばせてるー!」
    「……げっ」
     後ろから素早い足音が近づいてくると思ったら、杏の声が続いた。オレと冬弥の横に来る。教室で数人の女子と喋ってたってのに、妙なところでタイミングのいいヤツだ。
    「やだ弟くんってば、冬弥くんにネクタイ結ばせて新婚さんごっこしてる〜」
    「お前もいたのかよ…」
     杏の後ろからひょこっと現れたのは暁山だ。オレらを見上げて口元に手を添えて笑ってやがる。こいつらが揃うとめんどくせえし、うるせえんだよな。
    「違うんだ、白石、暁山。これは俺が勝手にやっているんだ。今日の全校集会の後は頭髪検査があるから、彰人にはきちっとしていてほしいと思ってな」
    「別にいいんじゃない? いつもピアスジャラジャラさせてんだし」
    「オレの内申点を気にしてんだよ。冬弥が」
    「優しいね、冬弥くん。弟くんの内申点まで気にしてくれてるなんて。…弟くんって先生に目つけられてるの?」
    「お前じゃねえんだし、んなわけあるか」
    「ちょっと〜! ボクは弟くんや杏と違って成績悪くないもん」
    「いやいや、全体的に見れば悪いわけじゃないし! 苦手な科目は…ちょっと…なだけ! 授業には出てるもん」
    「それはオレの台詞だ。こいつと一緒にすんな」
    「そういうとこだよね〜」
     成績のいい冬弥からしたら底辺な会話が繰り広げられる。まぁ、本人はそうは思わねえだろうし今は聞こえちゃいねえだろうが、無縁なことには違いねえ。
    「でもいいな〜! もしこはねが神高だったら私もネクタイ結んでもらいたいな…。『杏ちゃん、ネクタイ曲がってるよ?』なんて!」
    「あははっ。やっぱここはみんな仲良しだよね〜。こはねちゃんが神高だったら杏はずっとべったりだろうなぁ。想像つくよ」
    「前にこはねと制服交換したことあるんだけど、ブレザー着てるこはね、すっっごくかわいかったの! 私の制服、っていうのも味があってさぁ! 小柄だから私のサイズだとちょっとぶかぶかで萌え袖になっててね〜」
    「うんうん。杏ってば、こはねちゃんの話になると元気になるよね」
    「あったりまえじゃん! 大好きな相棒だもん♪」
    「おう。いつもこいつだけうるせえぞ」
    「はあ? 急に割り込んでこないでよ。いま私と瑞希が喋ってるんですけどー?」
    「…ど、どうどう〜バチバチしないでよ、ふたりとも…」
     いつもならここで冬弥が仲介に入ってくれるんだろうが、オレのタイ結びに夢中らしい。結んでは解いてを繰り返してる。手先が器用だしチャチャッと終えるかと思ってたから意外だ。
    「ずいぶん手こずってんな」
    「…ああ。自分でやりだしたんだが、正面からだと勝手が違ってな」
    「逆で考えねえといけねえからな」
    「ん……。自分で結ぶ時と同じ視点にすればできる気がする。彰人、俺が後ろに回って背後からやってみてもいいだろうか?」
    「……いや、そこまではいいっての」
    「わ〜…いま意味深な沈黙があったよね?」
    「ふっふっふ。弟くんってば何を想像したのかな〜?」
    「うぜえ…」
     結局、このまま続行することにしたらしい。できないからやめる、とか、途中で投げ出さないところは冬弥らしいが、そろそろ生徒が集まってきたし、ジロジロ見られるようになってきた。
    「——…うおっ」
     突然、ネクタイをぐっと引っ張られた。完全に不意打ちで、オレは情けねえ声を上げた挙句、ふらついて前のめりに倒れる。冬弥の足を踏まねえように、なんとか足を上げて左右についた。
     
    (あっっぶねえ………!)
     
    「す、すまない彰人…! 強く引きすぎてしまった…」
     足元を見下ろしてたところだったから、咄嗟に冬弥の肩を掴んで支えにしちまった。冬弥の気配と声がすげえ近くからする。
     頭突きにならずには済んだのはよかったが、息がかかるぐれえの至近距離だ。オレはすぐさま後ろに数歩下がった。
    「びっくりした……ふたりとも頭ぶつけてない? 大丈夫?」
    「おう…」
    「ああ。俺も平気だ」
    「よかった…。弟くんの運動神経のおかげだね。危機一髪!」
    「だねー。結構顔近かったし、彰人、惜しかったよー」
    「ラッキーだったね〜弟くん♪」
    「冬弥、後はオレが調節するからいいぞ。ありがとな」
    「ああ…いや、時間を掛けてしまって悪かった」
    「ちょっと、無視しないでよ!」
     冬弥のやりかけを調節してきっちり結びあげる。こんなにきつく結んだのは、入学前に家で練習して以来だ。襟を直したら余計に苦しくなる。せっかく冬弥がやってくれたんだし、文句を言うつもりはねえけど。
    「…ふふ。彰人がネクタイをきちんと結んでいるところを見るのは初めてだ。かっこいいな」
    「…なんだよ? オレの制服姿なんて見慣れてんだろ」
    「そうなんだが、…新鮮で、つい」
    「もう〜弟くん、冬弥くんに『かっこいい』って言ってもらったんだから、素直に受け取らないと」
     ふたりで喋りながら、オレらの会話も聞いてたらしい。間延びた声を出す暁山に横から肘をつつかれる。その隣で杏もニヤニヤしやがって、ホントにうぜえ。
     チャイムが鳴ると、クラス別で整列をしろって指示がマイクを通して体育館中に響いた。隣の列を見ると、いつの間にかオレのクラスのヤツらも揃ってきてた。
    「ねえ瑞希、今日は一緒にお昼食べようよ!」
    「おっ、いいよいいよ! 今日はボクお弁当なんだ♪」
    「やったー! じゃあまたお昼にね! 冬弥もバイバイ」
    「ああ」
    「また後でね、杏! 弟くんも」
    「おー」
     自分のクラスの固まりに戻って、オレの前の番号のヤツの後ろについて床に座った。胡座をかいて息をつくが、首元の苦しさにいい加減耐えられなくて顔を顰める。
     後ろから肩を叩かれた。オレの後ろは杏だ。
    「なんだよ」
     肩越しに振り返ると、オレじゃなくて斜めの方向を向いた杏が目先のものを指でさしてた。「ねえ彰人、冬弥が呼んでるよ」杏にならってオレもそっちを向くと、先頭の前後で並んだ冬弥と暁山がふたりしてこっちを見てた。
     こっちに手を振ってくる暁山を真似て、冬弥も控えめにそれをした。先頭だし後ろには教頭が立ってるからか、少し困ったような顔をしてる。無理にやることもねえのに。
    「ほら彰人も、何か返してあげなよ」
    「何かってなんだよ」
     杏に言われて、っつうのは癪だが、とりあえずオレも手を振り返すことにした。
     オレの返しを見て嬉しそうに笑った冬弥は、何かを口パクした。何かは言ってるんだろうが、離れすぎてるし周りもうるさくて全然聞こえねえ。ゆっくり喋ってくれたみてえだが、構えていたわけじゃねえから読み取れなかった。
    「ねえ彰人、冬弥なんだって?」
    「この距離でわかるかよ」
     後ろの暁山はオレの方を見てニヤニヤしてる。悔しいがそれはわかった。あいつが面白がるようなことを冬弥が言ったのは間違いねえんだろう。
    「なんだろう、気になるな…。そんなに口数なかったし、冬弥がこういう場面で言うくらいだし『あきと』とか?」
    「さあな」
    「当てたら冬弥喜ぶんじゃない? 『さすがだな』ってさ!」
    「その似てねえ物真似やめろ」
    「わ〜…。怒ることないじゃん…」
     冬弥は前を向いて体育座りを戻した。普段から姿勢がいい冬弥は、集会の時だけ猫背になってる。身長があるし、後ろのクラスメイトに気を使ってるんだろう。
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