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    toketu_0212

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    toketu_0212

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    あるだんさん原作による、もくり面子軍パロこと「もくめん軍パロ」の一部の捏造小説でございます。

    ある程度書き終えたら、常々更新をしていく所存です。

    余所者の処遇軍に入ったばかりの軍パロネシさんが、幹部として所作を学ぼうとする話。

    ※モブによるいじめ要素あり


    この軍に入ってからというもの、考えるのは自分の立場ばかりだ。

    「…はあ、」

    兄弟と再会して、やっと信頼できる相手ができたと思ったら、なんとこの軍での幹部への昇進。
    あまりにも突然すぎることだった。
    それを兄弟こと吐血さんに言っても、

    『国の王の実の兄弟が一般人、なんてねえ?それにこれくらい立場が上だった方が、悪い虫も寄りつかない。そこまでの馬鹿はこの軍には早々いないだろうしね。大丈夫だよ』

    と軽くあしらわれる始末。
    余所者がどう見られるかなんて、よく考えたら分かるはずだろうに…。

    「…」

    不安だ。
    この先この軍で幹部としてやっていける気がしない。
    そもそも自分は狼人間で、この耳や尻尾すら疎まれる対象だ。
    それだと言うのに…。

    「………ひとまず…幹部としての立ち振舞いは考えないと…」

    ーーー

    そうは言ったものの、自分は人間社会の常識にあまりに疎い。

    「…わっかんねえぇ…!!」

    今までは兄弟のいない中それなりに上手くやっていたはずだ。
    しかし、それはストリートチルドレン時代の話であって、今は礼儀や言動を考えられるような立場。
    少しでも下手をすれば、兄弟の顔に泥を塗ってしまうことになる。
    それだけは避けたかった。

    「……かといって、頼れる宛もないし…」

    そうなのだ。
    自分は入ったばかりの新人で、頼れる宛は兄弟しかいないのが現実だった。
    他には、自分より早く軍に入った自分以外の幹部たち…。
    …どうにも、誰にも頼れない状況だ。
    それに何より…

    アレが噂の?
    そうそう。なんでも司令官の弟さんなんだって…。
    へー…でも全然似てないよね。

    「………」

    幹部になってからはや1週間。
    自分が少しでも一般兵たちの前に現れると、このような言葉たちをよく耳にするようになった。
    この耳は嫌でも他人の言葉を拾ってしまう。
    そのため、自分の噂や陰口は数々耳にした。

    「…」

    その連中に目を向けると、そいつらは驚いてすぐに逃げていく。
    兄弟と離れてから目つきも悪くなった。
    それもあって、睨まれたと思ったのだろう。
    どうにもこうにも上手くいかない。

    「………聞くか…?」

    とても不本意ではあるが、このままではこの軍で孤立してしまう。
    仕方なく、俺は他の幹部たちに聞いてみることにした。
    この場での…振る舞い方について。

    ーーー

    「幹部としての立ち振舞い?…ネシさんって
    真面目ですねー。そんなこと、考えたこともなかったですよ」

    兄弟と共にこの軍を設立したという古株で、まだまともそうに見える幹部…あるだんに早速尋ねてみる。

    「…所作とか、威厳とか…必要じゃないのか」

    この軍の幹部たちは、あまりそういうことを気にしていないようだ。
    アドバイスの1つも貰えないかもしれないと、少し焦る。

    「そうですねー。まあ、吐血さんが私たちの代わりに1番しっかりしてくれていますからね。吐血さん相手に忠誠さえあれば、一般兵の人たちも従ってくれますし」

    …なるほど。
    1番重要なのは、兄弟にどれだけ忠誠を
    誓えるかなのか。
    少し進展があったかもしれない。

    「……分かった。…ありがとう」

    「どういたしまして!…それとネシさん、」

    話を終えたと思って相手に背中を向けたものだから、突然の相手の言葉にゆっくりと振り返る。

    「?…なに?」

    「…まだ入ったばかりで右往左往だとは思うんですけど、もし何かあったら…誰かに相談して下さい。
    吐血さんは、問題の放置を1番嫌いますから」

    それは、恐らく忠告だろう。
    俺の様子を見て何かを感じたかは知らないが、多少なりとも相手が自分に敵意を向けていないということだけ理解した。
    相手にとっては、自分は既に仲間なのだろう。

    「………肝に銘じるよ」

    そのまま、相手に背を向けてその場から立ち去った。
    後ろで自分の背中を見つめ続けている相手のことは無視をして。

    ーーー

    「…それで?わざわざ私に忠誠を誓いに来たんだ?」

    そう尋ねるのは俺の実の兄弟。
    昔は兄貴なんて呼んでいたが、今では他人も同然。それ故に、相手のことは一応敬称で呼んでいる。

    「……うん…」

    「ネシさんってば真面目だねえ。もう少し
    気軽に考えてもいいんだよー?」

    「だって…大事でしょ……威厳って…」

    兄弟が俺の言葉に優しく耳を傾けると同時に、俺の頭を弱く撫でる。

    「あるようでないもんだよ。威厳なんてさ。私が歩いてるだけで彼らは従うし、そんな私の後ろに続いて歩く皆を彼らは必然的に慕う。そういうもんだよ」

    「…そんなもんか…」

    仕事中に突然訪ねられて、面倒だろうに仕事を中断して俺の話を聞くためにお茶まで用意してくれる相手。
    自分がこの場でどれだけ尊重されているのかよく分かる。

    「……俺の前に入った人って…俺と同じことを聞いてた?」

    「いいや?ネシさんの前は、疾風さんとユ音さんだし。ユ音さんは結構前向きだったから『早く認められるように頑張ります!』って宣言してたくらいだよ。
    疾風さんは…まあ、うん。気にすることもなかったね」

    兄弟が言うことも何となく理解できる。
    ユ音さんという人は元が明るそうだし、俺みたいに悩んだりもしなかったのだろう。
    後者は…言うまでもないだろうな。
    …つまり、ここまで馬鹿らしく悩んでいるのも俺だけということか。

    「…ネシさんさ、この軍での生活は楽しい?」

    兄弟の突然の質問に首を傾げる。
    単なる現状把握だろうか。

    「!……?…まあ、新しいことばっかで飽きないけど…」

    正直に質問に答える。
    確かにこの軍での毎日はかなり楽しかったりする。
    まだ因縁の相手などで仲を深めることは難しいことが多いが、素直に楽しい。
    それは事実だ。

    「そっか。…一応言っておくんだけどさ、」

    「…!……なに?」

    「何かあったらすぐに言うんだよ。別にネシさんを疑うわけじゃないんだけど、…ネシは私に似て変なところで真面目だからさ」

    唐突に昔の愛称で呼ばれて、驚いてしまう。
    そういうところに、昔の面影を強く感じる。

    「…分かってる…」

    「ほんとにー?そう言って溜め込まないでよ?」

    「…それは…兄貴もでしょ…」

    思わず食い下がってしまって少し焦った。
    いけない。
    こういうことが言いたいワケじゃないのに…。
    しかし、そう返された当の兄弟は、少し驚いた顔で笑っている。

    「おっと、その返しは読めなかったな。
    …分かったよ。何かあったら私も言うから」

    「……うん…」

    始めは相手に忠誠を誓うために来たはず
    だったのだが…気が付けば慰められていた。
    やっぱり上手くいかない。
    俺はいつも、兄弟に頼ってばっかりだ。

    ーーー

    何かあったら言えと言われても…与えられた職場の居心地の悪さを言うのはお門違いだ。
    あの時殺されてもおかしくなかったはずなのに、衣食住まで用意してもらって、仕事まで与えられている。
    それに対してどう異議を申し立てればいいのだ。

    「……」

    耳を押し入れるように帽子を被るが、かなり苦しい。
    正直痛いが、仕方ない。
    何かいい改善は出来ないだろうか。

    「…もうすぐ、新月だ…」

    空の欠けていく月を見てふと思う。
    これから、俺は少しずつ弱くなっていく。
    それ故なのだろうか、俺がここまで弱音になるのは。

    ーーー

    「新月になると弱体化するから戦闘部隊から外してくれ?すごいこと言うね…」

    司令官である吐血さんと、副司令官である
    みやという人に素直に申し立てた。

    「面白いですね。その魅力的な能力に
    そんな性質があるなんて…」

    興味深そうにこちらを見てくる相手に、嫌悪の意を見せるかのように歯を見せる。
    そうしても相手は「あらあら」と言ってクスクスと笑うだけ。
    全く効果がない。

    「…とりあえず分かったよ。じゃあ、ネシさんの得意分野って何かあるかな?その間はそこに配属しよう」

    「ありがとうございます…」

    社交辞令ではあるが、正直申し訳ない気持ちもあるため、素直に頭を下げる。

    「そんなに畏まらなくていいよ。…どう?何か得意なことはある?前の職に関することとかさ」

    「……俺は…騙しとか殺人とか…そういうことしか上手くできない…」

    折角気を遣ってもらっているというのに、このような返ししか出来ない自分に自己嫌悪が募る。

    「…新月の時はどうしてた?」

    「………いつもより弱いから、出来るだけ人の前に出ないようにしてた…」

    新月では、俺はそこらの一般人とあまり変わらない。
    そこまで弱体化すると、何も出来ないのだ。

    「なるほどね。…うん、分かった。
    じゃあ良い機会だしネシさんには新しいことをやってもらおうか」

    「…新しい…こと…?」

    相手の言葉の意味が分からず、思わず聞き返した。

    「そう。例えば研究分野、例えば情報分野、あとは…隠密とか、いっぱいあるよ。
    この際だから全部を体験してみるといいよ」

    「…絶対に…ヘマする…」

    嬉しい提案ではあるが、同時に不安にもなる。
    余所者がそこまで迷惑をかけていいのか、それで何かヘマをしたら…と考えると不安でしかない。

    「始めは皆そうだから。大丈夫だよ。ついでに幹部の皆とも仲を深めておいで。君が1番苦手なあの子とは…まだ関わらなくていいけど」

    優しい言葉ばかりかけられても、なんと返せばいいのか分からない。
    無言のまま返してしまう。
    それでも、相手は俺を優しく諭してくれる。

    「とにかく、色んな体験をしておいで。
    そして、自分に合った1番のことを見つけてくる。それがここ数週間の君の仕事だよ」

    「…分かった…」

    そんな優しい兄弟の言葉に頷いて、俺は下を向いた。

    ーーー

    「…ネシです。…よろしく、お願いします」

    そう言って、軽く頭を下げた相手は、
    自分と同じ幹部である情報部隊隊長のユ音さんだ。

    「はい、よろしくお願いします!ユ音です。是非とも仲良くして下さい!」

    陰気な自分とは裏腹に、元気に返す相手。
    自分と同じか、もしくはそれよりも下といったぐらいの年頃。

    「…」

    その年で1つの部隊を任されているところは自分よりも優秀に見えてしまう。
    最近は自分の足元ばかり見てしまうな…。

    「それじゃ、早速行きましょう!一気に色々教えるのもアレなので、1つ1つじっくり
    行きましょう!」

    「…はい…お願いします」

    相手はそんな俺の様子にも気付かず、俺の先をするすると(何故か)ローラースケートで走っていく。
    ここには妙な幹部しかいないのかと若干
    戸惑ったが、最初からそうかと思い直して
    相手の後ろに着いて行った。

    その後ろで、自分を見てヒソヒソと話している一般兵たちを無視して。

    ーーー

    …ねえ、なんであの人が情報にいるの?

    さあ…なんか分からないけど……戦闘部隊を外されたんじゃない?

    あ、もしかして案外弱かったとか?!
    戦闘部隊隊長とも不仲って話だし…!

    あのさ…私聞いちゃったんだけど…
    あの人、新月に近付くと弱くなるんだって!

    え、それどこ情報!?

    司令官と副司令官が話してたのを聞いたの!

    そうなんだ…戦闘部隊からも外されて、
    今から弱くなるってことは…

    ーーー

    「………はあああああああああ……」

    情報部隊までは普通に勉強になったが、それ以降が思った以上にキツかった。
    特に研究部隊の中の研究実験部隊だ。
    あのイカれ科学者…!!!
    自分自身を調査対象にされなかったことまでは良かったが…やることなすことがイカれ過ぎてる…!!

    「お疲れだね。水でもいる?」

    「!……いたんだ…貰っとく…」

    疲れで腰を曲げて蹲っていた俺の後ろに、いつの間にか立っていた吐血さん。
    兄弟でもあり上司でもある相手への対応も、やっと慣れてきたところだ。

    「情報部隊はどうだった?ユ音さん、いい子でしょ」

    相手から差し出された水の入ったコップを受け取り、少し口に含む。

    「…いい人だったよ。吐血さんの言う通り」

    「…研究部隊は?」

    どこから取り出したのか、いちごミルクを手に笑いながら尋ねる吐血さん。

    「……あのイカれ科学者どうなってんの…」

    「あはは!ごめん、アレはどうしようもないんだ。慣れてとだけ言っておくよ」

    「無茶苦茶過ぎる…」

    下に崩れ落ちる俺を見て、吐血さんはまた笑う。
    …慣れてるんだろうな、あんな相手のことも。

    「明日は、によさんと隠密と情報収集、
    ユ音さんとは後衛戦闘部隊だよ」

    「…戦闘部隊って……」

    戦闘部隊にはいられないからこうなっているというのに、それはどういうことなのかと異を申し立てようとすると、今度は真っ先に否定された。

    「後衛は、比較的に能力や近接戦闘部隊は必要ないよ。銃とかの遠距離攻撃といったところかな」

    …一理ある。
    銃の扱いは、弱体化している時の俺でも出来るはずだ。
    多少下手ではあるだろうが。

    「…によさんって」

    「いろによさんのことだね。普段はポタキムさんと一緒に前線に出てる」

    なるほど、愛称か。
    面白い略し方をするものだ。

    「…あの黄色いのと離れられて、俺は清々したよ」

    あの黄色い奴の話をされるだけで、脳裏に浮かぶのは今までで1番常識の通じない戦いを迫られた相手。
    あの生粋の戦闘狂の姿を思い出すだけで毛が逆立つのも腹立たしい。

    「そんなこと言わないでよ。アレでも悪意はなかったんだし」

    「余計にタチ悪いじゃん」

    「それはそう」

    否定はするが肯定もする。
    俺の味方でもあり、アイツの味方でもあるんだろうなとは思いつつ、相手に紙を手渡す。

    「…何これ」

    「報告書。…情報部隊と研究部隊で色々思うところがあったから。俺なりにまとめてみた」

    生意気ではあるが、確かに細かいところで小さな問題を何度か感じた。
    それを思ったままに書いて、自分なりに思いついた改善策まで入れてみただけだ。

    「へえ…早速結果を出してくれるのは、流石私の兄弟といったところかな。これからもよろしく頼むよ。私は現場を見れないから」

    「…了解」

    変なことをするなと言わない辺り、相手の懐の大きさに感服する。
    この人相手だから、こんな生意気なことが出来るのだ。

    「それに…ネシさんには案外、戦闘部隊よりもこっちの役職の方が向いてそうだしね」

    相手のその一言に目を丸くした俺を、相手はまた優しく笑いかけてその話を止めるのだった。

    ーーー

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