微睡みの最中 目を覚ます。隣で寝息を立てている男を見つめ、ふ、と笑みをこぼす。
「鬼の副長がまぁ、暢気な顔して寝て……」
銀時はこの瞬間が好きだった。彼より先に起きて、寝息を聞いて、また寝る。それを毎度繰り返していた。
銀時は素直に甘えることができない。それは本人が一番よく分かっており、相手も承知している。甘い言葉を言ってやることも、身体を擦り寄せてやることも、滅多とできなかった。
だが、彼がすやすやと寝ているこの時は。
銀時が素直になれる、数少ない時間だった。
すり、と手を撫でる。ごつごつとした手。自分の大事なものを護り続けてきた手だ。銀時はこの手が好きだ。このまま穢れなくあれと願う。
寝息を聞いていると、胸がぎゅ、となる。全てが報われる気さえした。
銀時は毎度そう思う度、この男に惚れている自分を再確認するのだ。
「まいったなぁ」
こんなはずではなかったのに。
すっかりゾッコンになっている自分にふ、と笑い、再び目を閉じる。
怖いくらい幸せ者だな、と、銀時は複雑に思う。自分がこんな人生を歩んでいいのだろうか。なんて。少し思ってしまったり。
だが、そんな思いが過る時はいつも、愛する男の「幸せでいてくれ」と嘆願する姿を思い出すのだ。
まァ、お陰様で。俺ァ幸せですよ。
言えない言葉を胸に、眠りの世界へ意識を沈めた。