サテヨモ#3吐いた息が一瞬だけ闇を白く染め、ふわりと消えていく。見上げた夜空には丸い月と一等星が輝き、こちらを静かに見下ろしていた。
目的地はまだ見えてこない。右手のビニール袋を持ち直すと中の箱同士がぶつかってごそりと音をたてた。夜にしては人が多い通りをぶつからない様に間を縫って足早に歩く。RINEにメッセージが届いたのは四十分前。初期設定のままのアイコンが、『サテツくん、ドーナツを買ってこい』と高圧的に命令を下す。俺はそれにわかりましたとだけ返して、マスターに緊急の依頼が入ったら連絡してくださいとだけ伝えてギルドを飛び出した。
また息を吐く。見知った白とは違う、半透明な白。
駆け込んだ店内は甘い香りに誘われたのか、はたまた新商品に惹かれたのか結構な賑わいで。笑顔のお姉さんから細長い箱入りの袋を受け取るまでにそれなりの時間がかかった。
横断歩道を渡って、ビルの角を右に左に。箱の中身が崩れないぐらいのスピードで進む。オールドファッション、ポン・デ・リング。クリームにチョコレート、カスタード。期間限定、季節限定。それにいつもの。