手を繋ぐから始めませんか?*
長谷部陸夫が諸伏高明と初めて出会ったのは、東都大学のキャンパス内にある図書館だった。人がまばらな時間帯に訪れたそこで、彼を見つけた。
窓から光が差し込む端の席で、背筋を伸ばし静かに本を読む凛とした姿に、目を奪われた。
彼の周りだけ輝いていて、時が止まっているのではと錯覚してしまいそうなほど美しく、まるで絵画のようだった。他を寄せつけないその様が、絵になって綺麗だと思った…
中性的な顔立ちに透き通るような白い肌、綺麗な黒髪と長身だけど線の細い身体。儚げで、触れると消えてしまいそう、それが諸伏高明に抱いた最初の印象だった。
彼に興味を持った長谷部は、すぐに声をかけた。突然初対面の男に話しかけられ、最初は不審に思われ避けられていたが、毎日彼を探し繰り返し声をかけるうちに、徐々に心を開いて様々なことを話してくれるようになった。彼のことを「高明くん」と呼べば、いきなり下の名前で呼ぶのかと怪訝な顔をされたことを覚えている。
5854