繋いだ手を離さないで*
熱に浮かされる日に見る夢はいつだって最悪だ。
何かに追い回される夢、道に迷ってぐるぐると彷徨っている夢…そして、敢ちゃんが私の前からいなくなる夢……
夢の中の私は必死に敢ちゃんの背中を追いかけるけど追いつけなくて、ようやく手が届きそうな距離に行くことができても、許さないというように反対から義郎さんが私の手を引くの。手を伸ばしても虚しく空を切り、「行かないで!」と叫んだところで目を覚ます。
目を覚ました私は必ず泣いていて、息苦しくて呼吸が浅くなる。夢で良かったという安堵と、その夢がいつか現実に起こるのではという不安で、しばらく涙が止まらなくなってしまう。
「由衣、大丈夫か?」
あぁ、これは幻聴だろうか…
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