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野辺山天文台での事件から一週間経ち、ようやく仕事が落ち着き早く帰る目処がたったため、仕事終わりに高明の病院へ見舞いに行くことにした。
急な入院で足りない物も多いだろうから、『なにか必要なものあるか?』と連絡したら、『持ってきていただいたので大丈夫です』と返事が来た。親戚の人でも来てくれたのだろうか?と思ったが、特段気にせず了解とだけ返事をする。
由衣も一緒にどうかと思い誘ってみたが、今日はどうしても外せない用事があるとかで、残念がっていた。『これお見舞いに渡して』と、どう見ても自分用の夜食にでも買ったのだろうというお菓子を受け取り、タクシーに乗り込んだ。
病院に着くと、平日ということもあり人はまばらで、早々に受付を済ませて高明の病室に向かい、扉を3度叩いた。相手は良く知る男なわけだし、ノックなしに入っても良いんじゃないかとは思うが、後からチクチク言われる姿が目に浮かぶため、大人しく返事を待つことにする。
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