「愛弟子、久しぶりに一狩り行こう!」
ある日の事。目を輝かせた教官が、唐突にそう切り出した。
「何だよ、急に」
「ほら、お互い忙しくて、ろくに二人で出かけられなかっただろう? 考えたんだけど……君と二人で出かけるなら、これが一番いい気がしたんだ」
つまりこれは、デートのお誘いという訳だ。なるほど、狩りがデートというのも実に俺達らしい。
「いいぜ。行こう、狩り」
「ふふ、愛弟子がどれだけ腕を上げたか楽しみにさせてもらうよ!」
嬉しそうな教官に思わず笑みを浮かべながら、俺は二人ならどのクエストが適切かと考えを巡らせた。
「よし、今日はこんなところかな」
上位のモンスターを二人で三体ばかり狩ったところで、一息。いつかには及ばないが、今日の相手はラージャンなど手強い相手ばかりだったので三体でも上々といったところだ。
それにしても普段は里にいると言うのに、教官の技のキレはいつ見ても凄まじい。悔しいが、まだまだこの人には敵わねえなあ……。
「もう暗いな……どうする、教官?」
「今日はサブキャンプに泊まらせてもらおう。君も疲れてるだろうしね!」
「ああ……?」
何だろう。やけに教官が張り切ってる気がする。久々の狩猟で、まだ気分が昂ってるのか?
「じゃ、早速向かおうか。ついておいで、愛弟子!」
教官の態度に若干違和感は感じたものの、疲れてるのも確かだったので、ここはひとまず教官に従う事にした。
——その選択が大きな間違いだったと、そう思い知ったのはたった今の事。
「おい……これは一体どういう事だ?」
ニコニコ顔で俺に覆い被さる教官に、思い切りガンをくれてやる。しかしそんな俺の視線など全く意に介さないように、小首を傾げて教官は言った。
「どういうって、いつもしてる事をするだけだよ?」
「場所考えろって言ってんだよスカポンタン! ここどこだと思ってんだ!」
そう、ここはサブキャンプだ。狩りに来たハンター全員が利用する場所だ。
そんな場所で事に及ぼうなんて……。何考えてんだ、この人は!
「愛弟子、俺は考えたんだよ」
すると教官は、急に真面目な顔になった。
「何を」
「俺達がスる時、場所はいつもどっちかの家だろう? それはちょっと、マンネリなんじゃないかって」
「……それで?」
「だから、たまには場所を変えればお互い新鮮な気持ちでエッチ出来るんじゃないかと」
「死ね」
気が付いたら反射的にそう言ってた。いやなるだろ。そうなるだろ。
エッチのマンネリ防止の為に、狩場を利用する教官がどこにいる!?
これでやったのが一般のハンターってんならまだ解るよ。いや一般のハンターでもホントはダメだけど。
けど! 仮にもハンターの見本となるべき教官が! 私欲に公共施設を利用してどうするんだよ!
「ひどいよ愛弟子! 俺は二人の未来を真剣に考えてだね!」
「知るか! その前に職失わないかどうか真剣に考えろ!」
「君以上に大切なものなんて俺にはない!」
「いい事言ってる風だけどやってる事は最低だからなアンタ!?」
押し倒された体勢のまま、問答する事しばし。先に痺れを切らしたのは、教官の方だった。
「……仕方無い。出来ればこういう手は使いたくなかったけど……」
そう言って、教官が一旦身を離す。何やら嫌な予感がして、すぐ起きあがろうとしたのも束の間。
「っ、うわ!」
瞬く間に俺の体に、翔蟲の糸が巻き付く。そのまま無様に床に転がった俺を、教官がギラギラした目で見下ろす。
「選んで、愛弟子」
「……っ」
「このまま縛られた状態で犯されるか素直に俺に抱かれるか——選んで?」
ヤベェこれガチな奴だ。教官、完全にドSスイッチ入ってやがる。
その様子に、色々観念した俺は。
「……ヤサシクシテクダサイ」
「うん、いい子だね、愛弟子」
そう満足げに落とされる口付けを、盛大な溜息をもって迎え入れたのだった。