わたしが読みたいだけメイドカフェ「カフェイベント?」
「はい! たまには何か催物をしてみようかな〜って思いまして。でも、なかなかいいアイデアがないんですよね……」
「それならいい案がありますわよ」
「えっ、なんですか!?」
「……かくかくしかじかごにょごにょ……」
「え〜!?!?! そんなことができるんですか〜!?」
◆◆◆
今日も胡蝶茶楼に立ち寄ると人だかりができていた。よく見れば殆どが男。何事かと眺めていたら、店の中から劉が出てきて、男たちを並ばせついでに最後尾のプレートを持たせた。
「ん? よお」
「息災か。なんだこの列は」
「あー……これなぁ……。まあ、中に入りゃわかるよ。テメーの席はもう取ってあっから、入れや」
リン、といういつも通りの鈴の音を鳴らす扉をくぐると、普段とは違って西洋風に飾り付けられた空間が広がっていた。更には、なんと言ったか、そう、メイド服を着た知り合い達が提供していて、間違えて違う店に来てしまったのかと思った。そういえば劉もいつもの格好ではなく燕尾服だ。
「その格好は、なんなんだ」
「おぉ? やっと気づいたか。人の変化に気づけねぇ朴念仁はモテねぇぜ。これはアレだ、イベント。催物ってやつで、一日メイドカフェすんだと」
席に通され渡されたメニューも特別なようで、紅茶とそれに合う菓子類が目立つように書かれている。
「えっと、あの、おカマのあやかし?」
「静だ」
「ジンねジン。あの人発案だってよ。ほら見てみろよおい、めちゃくちゃ笑顔で接客してるぜ」
指差したところに静がいた。丈の長いメイド服を着て、紅茶を注いでいる。あ、声聞いて客がひっくりかえ……ギャップ萌えと叫んでいる。
「……私には少々騒がしくて合わないようだ。今日はこれで」
「まあまあ待て待て。せっかく来たんだから何か注文してけって。夜鈴も喜ぶし」
メニューに目を落とし、結局いつもの日替わりセットを注文した。
「日替わりセットね。今日のは紅茶と紅茶シフォンケーキなんだけど、ミルクと砂糖は?」
「頂こう」
「アイヨ。いやしっかしスゲーよな。催物のために結構予算組んだのにもう回収しちまってる」
今日の飯は寿司だな寿司。と呟きながら劉がテーブルを離れた。
しかし今日は本当に騒がしい。今も「あー! 比岸ちゃん! キスはダメだよ比岸ちゃん! おしご……おっお客様ー! ここはキャバクラじゃないんですー!」という声が聞こえる。