『カメラ』「う…寒っ」
「兄さん寒いの帰る」
「いや…大丈夫。てか、十四松は?」
「ぜんぜん平気」
「…だよね。おれはおまえみたいに上手いこと獣化できないから羨ましいわ」
「ぼくは一松兄さんのいっぱいあるしっぽが羨ましいでっすあ、そうだ!しっぽ身体にまとわりつかせればあったかいかも」
「なるほど。…………こう?」
「そうどっすかどっすか」
「大分あったかいわ、ありがとう。一見するとでかい毛玉みたいになってるだろうけど」
「ケサランパサラン名乗れば大丈夫」
「大丈夫かな…」
ガサッ
「「!」」
「…いま、動いたよね。そこの茂み」
「動いたね大きさ的に人間でも、ふつーの妖怪でもなさそう!」
「じゃ…猫かな?猫だと嬉しいんだけど」
「でも妖気感じるよ!」
「…ほんとだ。すげぇ小さいけど妖怪だ。猫…より小さくて…箱型、の…箱型?」
「こんな小さい箱型の妖怪なんていたっけ 」
「わかんない!直接見れば分かるかも」
ガササッ
「ちょ、十四松!」
「わあっ!」
「だ、大丈夫」
「『カメラ』だ~」
「は?」
「ほら見て兄さん『カメラ』の付喪神だよ」
「なんだ、付喪神かよ。…かめらって何?」亀?
「え~っとね~!『写真』撮れるやつ!」
「しゃしん…?よく分かんないけど、十中八九この時代のやつじゃないよね」
「あいあい!だいぶあとの機械っすね!」
「やっぱり。時空の歪みくぐってきちゃったのか…閻魔様に報告しないと。さっき帰らなくて良かった」
「そっすね…え?なになに?…ふんふん、そっか~」
「どうしたの十四松」
「この付喪神、守空浮って名前で『マスター』の右腕なんだって!付喪神化してから『マスター』に喜んでもらうために時々ひとりで動いて『スクープ』探してて、今日『大スクープ』追いかけてたら落っこちちゃって気づいたらここに居たらしいよ!あと守空浮の仕事は『スクープ』を捕らえることらしいけど、ぼくらが『スクープ』になりそうだから『写真』取らせてほしいんだって!」
「怒涛の情報開示やめて、飲み込みきれないわ。…つまり、どういうこと?」
「『写真』!…まあ、念写した絵みたいなやつ!撮って持って帰りたいんだって!」
「え。だめでしょ。」
「え~なんで」
「時空の歪みって本来存在が許されないものだから。なるべくここに居たって痕跡残さないように元の所に返してあげないといけないじゃん」
「そうだった!ごめんね!『写真』持って帰るのは違反…え?『内蔵メモリ』に保存するから大丈夫?たしかに」
「何…?」内臓?
「この箱の中に『写真』の記憶残しておけるからバレないって言ってる!」
「どういう仕組みなの…すごいな、未来の機械。でも、だめなものはだめ…っ、そんな目で見るなよ!」
「一松兄さん…!」
「十四松まで…!ああもう、しょうがない。少しだけならいいよ」
「わーい良かったね、守空浮そこの木の枝に乗るの?分かったー」
「一松兄さん!守空浮の前に立って!」
「このへん?」
「そう!で、ぼくも映る~!どぅーん」
「わっ。押すなよ十四松…あれ、守空浮だっけ。泣いてない?」
「わ~泣いてるなんで…あっ」
「どうしたの?」
「ぼくら、映らなかったみたい」
「え?…ああ、そっか。そういえばおれたち基本人間の目には映らないようになってるんだっけ。その人間の所有物だからだめだったのかな」
「本体は妖怪だからいけると思ったのに」
「これはどうしようもない…」
「ごめんね、守空浮!今は無理みたい!未来でまた会った時のためにちゃんと映れるように練習しとくね!!」
「待って、そいつと未来で会うの確定してんの?」
「してるよ!だって、守空浮から十四…あ、なんでもない!八月の小噺没になったからまだ言うべきじゃないっすねそれより一松兄さん!早く報告して返してあげよ」
「?そうだね」