Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    32honeymoon

    @32honeymoongwt

    ◇gw:t KK✕暁人至上主義者
    ◆書くものは癖が強めなものが多いので要注意。
    ◇中の人は30over↑
    ◆主に夜中に書いてあげるスタイル
    ◇リクエストとか感想とかめちゃくちゃ喜びます。もちろん読んでくださるだけでも感謝🙏
    ◆リスト申請についてはTwitter固定ツイ参照下さい

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👥 💘 ⛩
    POIPOI 81

    32honeymoon

    ☆quiet follow

    ◆勝手にお誕生日お祝い企画◆
    @krsmbk 様の漫画「転生小学生Kと人生に疲れたリーマン暁」に触発されて
    書かせて頂いたものになります。
    (事後ですが許可は取りました!アヤコ様ありがとうございます!!)
    どちらも記憶アリ転生している設定。そしてやっぱりKが暁くん好きすぎるマン。
    毎度紆余曲折の末ハピエンに落ち着く話しか書けない奴ですみません。K暁を幸せにし隊隊員なもので・・・(定期)

    #K暁

    「君と世界を、もう一度この手に」 「―暁人!」
    不意に後ろからその名前を呼ばれて、僕は咄嗟に立ち止まってしまった。
    もう「僕」はその名で呼ばれた人物ではないのに。
    そして「彼」もまた、僕の記憶に残るその人ではないと、言うのに。

    「待てよ、暁人!!」

    どくどくと鳴る心臓を他所に、その声の主は走ってこちらに近づいてくるようだった。

    ああ、どうして見つけてしまったの。
    あの時とは違う、高いボーイソプラノが遠くから自分を、否、自分だったものを、呼んでいる。
    でも振り返りはしない。そう、人違いだと、そのまま諦めてくれたらー

    ぐい。祈りも虚しく、強い力で腕を引かれる。
    ああ、懐かしいな。あの時もそうやって僕の手を取ってくれたっけ。
    でも、でもねー
    もう僕は、あんたの知ってる僕じゃ、ない。

    ゆっくりと、振り返る。
    僕の顔を見て、ぎょっとした顔をした短髪の少年は、あの日の面影を色濃く残していた。紛れもなくきっと、彼、なのだろう。
    開きかけた口から、その名前があふれ出てきそうなのをぐっと飲み込む。そうでなければあの日のように、KK、と呼びかけてしまいそうだった。
    いけない。僕があの日の記憶を持っていることを、彼に知られる訳には、いかないのだ。

    ー僕が『伊月暁人』という存在を自覚したのは、高校生くらいの頃だっただろうか。
    毎晩、同じ夢を見るのだ。僕が不思議な力をもって、無人の街を闊歩する、そんな夢を。
    そしてその夢では、いつも同じ『人物』が側に居た。姿は見えないのにいつも、「暁人」と僕を呼んでくれる。
    そして僕はいつも、心の底から嬉しそうに微笑みながら『彼』の名前を呼ぶのだ。
    夢が進むたびに、僕は思い出していた。それは夢なんかじゃなく、まぎれもなく本当にあった出来事の記憶。
    KKと過ごした日々を、話したことを。徐々に思い出していった僕は、大学を卒業するころにはもうすっかり、『伊月暁人』であったころの自分を取り戻していた。

    夢の様子がおかしくなったのは、就職してすぐのことだった。
    映像がぶつぶつと途切れ、音が歪んでノイズが走る。必死で名前を呼ぶのに、目の前は砂嵐のように霞んで何も見えない。
    やがて砂嵐はただの暗闇となって、彼の声も全く聞こえなくなった。呼びかけようにも、声すら出せない。そんな悪夢が何日か続いたある夜、
    突然ぱっと開けた空間の中に、一人の少年の姿を見たのだ。
    それが『KKの今の姿』だと。誰も何も言わなくとも、すぐに理解した。
    母親らしい女性に手を引かれて、笑いながら去っていくその後ろ姿を見つめていた。とおく、見えなくなるまで、ずっと。

    ーその日を境に、夢は見なくなった。

    今、あの夢の中で見た少年が、目の前にいる。
    本当はすぐにでも抱きしめたかった。けれど、あの時全てを失ったKKには、今生こそ幸せな人生を全うして欲しい。それが僕の嘘偽りない願いだ。
    だからー隠し通す。この世界の彼には、僕はー必要ない。だからー

    「ごめんーキミ・・・誰?」

    震える声で、否定の言葉を口にする。刹那、僕を見つめるその瞳が揺らいだ。

    「暁人・・・覚えてねえ、のか、オレはー」
    声が震える。大丈夫だ。バレていない。このまま隠し通せる。

    「暁人?・・・僕はそんな名前じゃないよ。人違いじゃないかな」
    「なっ・・・・!」

    大きく目を見開いた少年が、一歩後ずさる。

    「・・・ごめんね。会社に遅れるからもう行くよ」

    腕を掴んだちいさな手をそっと離させて、地面に置いた鞄を手に取る。

    「待てよ暁人!話はまだー」
    「・・・さよなら」

    最後まで言わせることなく、そう切り出して背を向け歩き出した。追いかけてくる様子はー無い。
    ほっとした気持ちと、苦しさがない交ぜになって、思わずぎゅっと胸を抑えた。
    さよならを言うのは、苦しいね。でも、これでいいんだ。これで。
    僕ー『伊月暁人』の愛した、たったひとりの、KK、という名の君よ。どうか全て忘れて、幸せになっておくれ。

    ぽた、と頬を伝う涙。ああ、未練がましいにも程がある。
    でも今度はきっと、僕が遺されることは無い。先に姿を消すのは、僕のほうだ。
    もうあんな思いはたくさんだ。でも彼が生きて幸せでいてくれるなら、僕はきっと死ぬのは怖くない。
    駅についてからもう2度目の電車を見送って、腕時計をぼんやりと覗き込む。

    ああ・・・いけない。このままだと遅刻だな。
    会社に遅れるって電話しないと。

    涙を雑に拭って、ポケットからスマホを取り出す。革製のカバーに付けられた、天狗の顔の根付がりん、と揺れた。

    ---

    「クソッ・・・・どういうことだ!?覚えてねえなんて、そんなはずはねえ・・・!」

    悔しそうに唇を噛みしめる少年の黒いランドセルには、河童のキーホルダーが揺れている。
    一緒に付けられたタグにマジックで書かれた「K.K」の文字。そう、また出逢えたなら、これを見て自分を思い出してくれたなら。
    そう思ってずっと肌身離さず身に着けているこれを、見せる暇さえ与えてはもらえなかった。
    それどころか、人違いだと手を払われてしまった。そんなはずは、ないのに。
    やっと掴んだ手をすり抜けるように、アイツがオレから離れていくのを、見ているだけしか出来なかったのは、どうしてなのだろう。
    動けなかった。追いかけたかったのに、あの瞳に拒絶された気がして、足が動かなかった。

    「・・・まだだ、まだ・・・終わったワケじゃねえ」

    ーそうだ、違うなんて嘘だ。あれは、アイツは確かに、オレの知る伊月暁人その人だった。
    眼の下の酷いクマと、痩せて棒のように細くなった手足こそ、あの日の自分が知る彼の姿からかけ離れてはいても、
    その艶やかな黒髪と、自分がいっとう好きだった柔らかな声はなにひとつ変わらなかった。

    覚えているのは、自分を呼ぶ声がとても心地よかったと言うこと。
    二回りちかく年が違う年下の青年に懸想するなど、考えられなかったあの時の自分。
    信じるものを失い、固く閉ざしたはずの心を、彼はあっという間に溶かしてしまった。
    素直で優しくて、そしてとても寂しがりな一面もあって。ときには食って掛かってくることもあったり、無邪気に笑ったりー
    ころころと表情の変わるその姿を好ましく思い始めてからは、性愛という面での欲望を抱くのに時間はそうかからなかった。
    あの夜、彷徨える悪霊に成り果てるところだった自分を体に宿し、共に歩んでくれた、強い魂と深い愛情の持ち主。
    二度と手を離したくない人ーその人が目の前に現れたのだ。手を伸ばさないでいられるわけがなかった。

    自分にあの日の記憶が戻った後からずっとずっと求め続けていた、彼こそが自分のたったひとりの相棒。
    すぐにでも自分を認め、名前を呼んで笑ってくれると、信じきっていた。
    それなのにー

    「何故だ?・・・なんで、オレを知らないふりなんて」

    何か理由があるのか。それとももうオレの事なんて必要ないとー?

    「クソっ・・・まだだ、まだチャンスはある!オレは諦めねえー諦めねえからな、暁人・・・!」

    あの夜を抜けて、こうして、もう一度こうして、出逢えたのだ。次こそは絶対にー逃がさねえ。
    少年がき、と空を見上げる。その瞳には確かに、燃えるような決意が宿っていた。


    ーーー


    「よっし、捕まえたぁ!もう逃さねえぞ、観念しろバカ暁人!!」


    「・・・参ったな・・・」


    ああ、昨日と同じ道なんて通るんじゃなかった。溜息をついてももう、手遅れだ。

    公園を抜けて駅に向かう筈だった僕の身体はいま、目の前の少年に完全に捕捉されて見動きひとつ取れないでいる。

    「何で逃げる?なんか、やましいことでもあんのかよ、暁人」
    「またキミ・・・だから僕はその、暁人、って人じゃないって昨日も言っただろ?人違いだって・・・」
    「違わねえ。オマエはー暁人だ。オレが間違えるとでも思うのか?」
    「・・・・・しつこいな・・・」

    引き剥がそうとしても、子供のくせにやたらと力が強い。
    なんて馬鹿力。心の中でそうぼやけば、強い光を宿した瞳が自分を捉えた。

    「何が原因か知らねえけどよ。もう、オレたちは『出逢っちまった』んだ。諦めろ。今日こそはその理由全部聞くまで、帰さねえからな」
    「・・・無茶苦茶言わないでよ・・・」

    本当に、あの日と同じで。こちらの都合も何も、全く聞く気はないらしい。どこまでしらを切り通せるかーああ、面倒なことになった。
    とにかく、なんとかしてこの場を乗り切らないとー

    「キミ、学校あるだろ。こんなおっさん捕まえたあげく登校拒否?小学生の素行としてはどうかと思うよ?」
    「うるせえ!今更小学校とか生温りぃんだよ!!この身体じゃタバコもやれねえしー」
    「ちょっと!大声で何てこと言うんだよ!?その体でソレ犯罪だから!というか僕まで疑われる!!」

    慌てて少年の口を塞ぐ。まさか本当に『ほぼあの時そのまま』の記憶を取り戻してしまったのか、『自分と同じように』ー思わず口に出しかけてぶんぶんと頭を揺らす。

    「とにかく、キミはずる休み出来るかもしれないけど、大人はそんなに簡単に休めないんだよ、だから離してー」

    「嫌だね。仕事なんざ1日休んだところでどーにかなんだろ、大体オマエの勤め先って結構な大企業だったじゃねえか。人なんて余るほど転がってんだろ」

    その言葉に思わず目を見開く。まさか、

    「・・・昨日、つけてきたのか?!会社まで???!」
    「あ?…つけてたワケじゃねえがーオマエの行く先なら、分かるんだぜ?コレで、な」

    そう言ってー彼は徐に左手をす、と前に出した。その仕草には見覚えがある。

    ぽちゃん。

    青白い光が辺りを包み込む。彼とともに使った、あの力の残滓が、確かにそこに、視える。
    でもそんなはずはなかった。だってあの力は、彼が無理やり植え付けられたもののはずだ。だから今の彼が使えるはずなんてない。
    それなのに、目の前に確かに広がる光景は紛れもなく霊視の力そのものだ。
    慌てた僕は思わず、よけいな一言を口にした。

    「そんな、だってそんなはずー」
    「あァ?なんだか見たことあるような口ぶりだな?それに、驚かないのか?普通の人間は、知るはずのない『力』を見てんのによ」

    ニヤリと目の前で笑うその顔を見て、茫然とする。これはーわざとだ。こんな簡単な罠にーくそっ・・・!

    「あ、ちが、こ、これは」
    「・・・・・チェックメイト、だぜ暁人。記憶、あるんだろ」
    「・・・・ッ・・・!」

    誤魔化しきれず、がくりと膝をつきそうになる体。そのまま無理やりそばにある木陰に引きずり込まれ、慌てて逃げようとしたけれど、無理だった。

    「ったく、ヒヤヒヤさせんじゃねえよ。大人しくしててくれるよな?」

    こんな小さな体のどこにそんな力があるのかと思うくらい力強く木に押し付けられて、力が抜けてしまう。
    振り払って全力で逃げることも、出来たかもしれない。でも、昨夜もほとんど眠れなかった体は重だるく、この拘束から解かれたところで彼を振り切ることは出来そうもなかった。

    「・・・決まりだな。なあ暁人・・・会いたかったぜ」
    ずるずると座り込んだ僕の耳元に、少年の声が注ぎ込まれる。
    記憶の奥底から蘇ってくる、低くて甘い声とはまるで違うのに、抱きしめられる体が、名前を呼ばれる耳が、彼と出会えたことが嬉しいのだ、と歓喜しているのが分かってしまって、ぶる、と背が震えた。

    それでもやっぱり、このまま彼に絆されるわけにはいかない。
    そうだ、僕は、僕はもう、あんたを僕に縛り付けたくなんかないんだよ。

    「今更会ったところでどうなるって?もう僕らが一緒にいなきゃならない理由なんてどこにもないのにー」
    「理由、だ?オレはオマエと一緒に居たいと思ってる。オマエは、違うのか。オレにー会いたくなかったとでも言う気かよ」
    「そんな、こと」
    ー会いたくなかった。そう言えばよかったのに。でもどうしても、その言葉を口にすることができなかった。
    「違うよな?ー安心したよ。それだけで、この想いも報われるってモンだ」

    およそ小学生とは思えない声色も、下から見上げてくる強い光を持つ瞳もーあの日の彼を思い出させて止まない。
    暁人、と呼ぶその声に呼応するように、涙が溢れ出てくる。

    「暁人…泣くなよ、やっと会えたんだぜ?運命の再開の時くれえ、とびきりの笑顔見せるのが粋ってもんだろーが。さあ、これからはお互いのこと知るための濃厚な時間を過ごそうぜ、何せ時間はたっぷりあるんだからな」

    また名前を呼ばれて、背が震える。こんな時、こんな姿になってさえも、彼が僕を呼ぶ声は、甘く・・・優しかった。

    もう二度と会わないつもりでいたのに。
    もうあんたの世界と重なることはきっと無いんだって、ひとり孤独に打ちひしがれて。気づけばこんな、冴えないサラリーマンになってた。
    このまま壊れるまで働いて、誰と繋がることもなくひとりで死ぬんだって。

    そう、覚悟してたはずなのに。もう、今までの生活には戻れそうにない。

    「さあ、今度こそオレの名前を呼べよ、相棒。オレたちはまたーひとつになれる。そのために、記憶もなんもそのままでもう一度出逢ったんだからな。
    ちゃんと上手くやんねぇと、お膳立てしてくれた神様に怒られちまうぜ?」

    「ばか…そんな勝手なこと言って、あんた今自分が幾つだと思ってるんだよ、どうみても犯罪だろ…」

    「んなもん50年後にゃどっちもジジイだ、誰も気にしなくなるさ。さあ、暁人。オレはもう、オマエを離す気はねえ。オマエはどうだ?」

    ああ、こんなの逃げられないに決まってる。そうだあの夜に聞いたことがあったっけ。オレは好きなものはすぐに手に入る方が好きだ、って。
    その言葉通り、きっと待ちきれずに手に入れに来たのだろう。行動原理が彼らしすぎて、思わずまた涙があふれてしまう。

    「・・・バカKK・・・二度も僕の人生奪って、何様のつもりだよ・・・」
    「はは、オレ様だからな。仕方ねえだろ?今度こそオレはオマエと生涯を共にする。そう、決めたんだ。」
    「いつも勝手なんだから・・・・じゃあ今度こそ、僕が逝くときには側で看取ってよね」

    「ああー約束する。今度こそな」
    「・・・後悔しても、知らないから」
    「はっ、上等だよ。だが言っとくー後悔なんて、互いにさせねえってな」

    しゃがみこんだ僕に視線を合わせ、そっと唇に触れるだけのキスをされた。はた目にはまるで、子供が母親にキスを強請るような角度。
    けれどそこに籠もる熱量は、けして慈愛のそれ、だけではない。所有欲、支配欲、情欲ーすべてが内包したようなそんな視線で、少年KKがそっと、暁人を見つめていた。

    「KK…、今度こそ、おかえりなさい」
    「ああ、ただいま、暁人」

    涙に濡れる頬にそっと唇をよせて、ちいさな手のひらが髪をくしゃり、と撫でる。
    やっぱりどうしたって離れられるわけがなかった。彼の言うとおり、『出逢ってしまった』のだから。

    そして結局その日は二人して、仕事も学校も放り出し、気づけば人もまばらな鈍行列車に揺られて街を飛び出し、たくさん歩いて、たくさんの話をした。
    中華街で食べ歩いて、観覧車に乗って。スーツ姿の大人の男と、ランドセルをしょったままの子供の組み合わせを、それでも街の人たちは怪訝な顔ひとつせず素知らぬ顔して歩いている。まるで自分たちのことなんて誰も見えていない感じで、なんだかあの日のことを思い出してしまう。
    ふと目をやればKKも、神妙な顔をしていて。ふたりで顔を見合わせて、思わず声を上げて、笑った。

    そして気づけばいつの間にか、昔のように、またKKに手を引かれて歩いている。他人には仲の良い親子くらいに見えているのだろうか。いや流石に父親にはまだ遠い、と思いたい。
    互いに聞けば、今の僕たちはあの時と全く同じ年齢差だと言う。うわあ、だとしたらKKが二十歳になるころには今度は僕がおじさんって言われるのか。
    がっくりとうなだれる僕に、そんなことより、とKKが声を潜め耳元で囁く。

    「・・・ところで先に釘差しとくけどよ。オマエまさか誰かとすでにソッチの経験あったりとか・・・しねえだろうな」
    帰りの電車の中、他に誰も居ないのをいいことにぎらり、と欲を孕んだ目で睨まれる。
    「ソッチって・・・・抱かれたか、ってこと?あるわけないだろ・・・女の子との経験はまあ・・・なくはないけどさ、1人だけ」
    大学で付き合ったその彼女とも、結局すぐに別れてしまった。向こうに好きな人ができたとかで。それ以来もう誰とも付き合うとかないと思っていたのに。

    「チッ、まあ仕方ねえ、許してやるよ。どっちにしてもオマエの処女はオレのモンだからな?」
    「ちょっと言い方!!・・・というより別にKKだって、いいんだからね?かわいい女の子と付き合ったり、そういう経験も必要だよ?」
    「バーカ。オレは一応結婚も子育ても経験済みだ。オマエよりも経験豊富だっつーの」
    くそ・・・記憶があるのが無性に腹立たしかった。なんでそんな自慢気なんだ。ムカつく・・・!

    「つーか、青少年の性欲舐めんなよ?流石に今のサイズじゃオマエを満足させてやれねーからしねぇが、あと3年もすりゃたっぷり愛してやれるから、覚悟しとけ」
    「あと3年ってまだ中学生じゃないか!せめて高校卒業するまではそういうの禁止!!ご両親に顔向けできないだろもう…」
    「チッ、相変わらずクソ真面目だねえ、お暁人くんはよ。まあ何でもいいぜ。とりあえずは、週末またデートしような」
    「デート」
    「まあ人並みに遊園地とか映画とかだよ。昔は出来なかったこと、たくさんしようぜ」
    「KKは・・・それでいいの?友達とかいるだろ?こんなおっさんとー」
    「暁人」

    厳しい視線を投げられて、ああ、やっぱりKKだ、と思う。きっと僕が自分を乏すことを、本気で怒ってるんだ。
    「ごめん、言いすぎた。でも、やっぱり少年には少年らしくさ、そういう時間も大切にしてほしいと思うよ」
    「・・・分かってる。ちゃんと勉強しなおして、今度こそ本気でやりたいことやれる自分になる。だが、だからと言ってオマエの事も諦めねえ、相変わらず強欲なもんでな?欲しいものは全部手に入れなきゃ気が済まねえんだ。・・・悪いが一生かけて付き合ってもらうぜ?」

    ーああ、全く、前途は多難だ。でも、それでも、こんなにもー嬉しくてたまらない。
    またKKと一緒に歩いて行けるなら、未来も怖くなかった。

    ーありがとう、KK。僕を見つけてくれて。

    口には出さなかったはずなのに、目の前を歩いていたKKが振り返って、へへ、と少年らしい軽やかな声をあげて、また笑う。
    繋いだ手は温かくて、あの日触れることのできなかった彼の手を、今度は僕がぎゅっと握りしめた。


    ーこうして僕らは、二度目の運命の出会いをして、二度目の恋をはじめた。
    あの日取り戻した世界を、君ともう一度歩くために。


    ーーー
    10年後、教師となったKKから、初任給のほぼ全額をつぎ込んだ結婚指輪とともに熱烈なプロポーズを受けるのは、また別のお話ー
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏😭😭😭😭💖💖😭😭😭💖💖💖💖💖💖💖👏👏😍😍😍😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭💖💖😭🙏💖😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭🙏💕😭🙏💕😭😭👏💗👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works