恋をした親友がウザい「アレスーーー!!!」
鍛錬中に遠くからもの凄い勢いで走ってきた半神半人の親友を見て、アレスはまたかとため息を着いた。
「聞いてくれ!アレス!!」
「あー。とりあえず、汗を拭かせてくれ」
「分かった!」
巨体をそわそわさせながら今か今かとアレスを待つヘラクレスにアレスは二度目の溜め息を零した。
侍女達が用意してくれたお茶を飲みながら、アレスの良しを待つヘラクレスに思わず苦笑する。
「で?今度はどうした?」
アレスの言葉に、ぱぁぁあああっと顔を輝かせなが、ヘラクレスは口を開く。
「この前、ジャックとフレックとピクニックに行った時の事なんだがーーー」
この日は、フレックの思い付きでピクニックになった。
午前中に、フレックとジャックが作ったアスパラガスと空豆のタルトレット、スコッチエッグにチキンとタラゴンのサンドイッチ、デザートには摘みたてのベリーがたっぷりと使われたイートン・メス。
どの料理もヘラクレスには馴染みが無いものばかりだったが、どれもこれも美味しかった。
お腹も膨れて、穏やかな風に頬を撫でられ、太陽もポカポカと温かくて。
フレックはヘラクレスが張ったハンモックで一足先に微睡に揺られていてる。
穏やかな一時だった。
他愛もない会話も無くなって、その沈黙すら心地よくて、不意にポスンっと左肩に銀糸が当たったと思ったらーーー
「寝てたんだよ!!ジャックがっっっ!!
あどけない顔してっっっ!!!俺の肩にもたれかかってきて、灰銀の髪から見えた睫毛が凄く長かった!!」
「・・・」
何度もヘラクレスからジャックの話を聞いているアレスは、もう何度目か分からないヘラクレスの叫びに、何度目か分からない事を思う。
ヘラクレスって、こんなヤツだったか?と。
「無防備にも程がないか?!隣が俺だったから良いものの!ジャックに邪な想いを抱く奴だったら無事ではいられんぞ?!」
「いや。ジャックに取ってはお前が1番邪な奴で危険な野郎だろ」
アレスの的確な指摘にヘラクレスは、分かってるよ!!!と、顔を覆う。
「分かってるけど離れたくないんだ!あの穏やかな声はいつまでも聞いていたいし何だったら敬称ではなく名前で呼んで欲しい。あのオッドアイにはいつも映り込んでいたいし何よりも俺を見つけた時にほんの少しほんの少しだけど口元を嬉しそうに緩める笑顔をずっと眺めていたい。あの笑顔はズルいだろう!!危うく誰にも見られたくなくて抱きしめたらフレックに頭を引っ叩かれた。腕の中で困ったように固まっていたジャックがあまりに愛らしく離しがたかった。この前なんてフレックが買ってきた生クリームのケーキを頬張っている姿が堪らなく愛らしかったし口髭に付いたクリームをフレックが拭き取っている様子はとても微笑ましくていやむしろ俺が舐めと「止めろ止めろーー!!!」
止まらない親友の惚気なのか性癖暴露なのか分からない言葉の羅列をアレスは止める。
そして何度目かもしれないこんな事を思う。
恋した親友がウザい!!