甘え下手な紳士の甘え方フレックを送り届けた帰り道。
ヘラクレスとジャックは並んで歩く。
ディナーの時間はとっくに過ぎて、行き交う神も人もまばらだ。
穏やかに言葉を交わしながら、ジャックは隣を歩くヘラクレスを見上げた。
ヘラクレスは白い息を吐きながら、目を細めて笑っている。
「...」
「どうした?」
淡く輝く月に照らされるヘラクレスの顔は何処までも穏やかで。
「Sir」
「ん?」
「...あの」
「うん?」
「...手が冷たくて歩けません」
囁くようなジャックの言葉に、ヘラクレスは大きな手を差し出して嬉しそうに笑った。