平凡な授業にも適度な刺激を♡「と、言うわけで闇の魔術に対する防衛術は多岐に渡りますが、ディメンターやレジフォールドには守護霊の呪文しか対応策がありません。守護霊の呪文は、詠唱すれば良いんです。ただ、少しコツが入ります」
ジャックが説明に一区切りを付けると、生徒が手を挙げる。
「先生!コツってなんですか?」
「幸せ、らしいです」
「幸せ、ですか?」
おうむ返しの生徒にジャックは頷く。
「ディメンターが欲する恐怖や狂気。しかし、それを上回る幸せを描きチャームにて具現化する時、守護霊の呪文は初めて成功する。と、言う訳で、皆さんそれぞれの幸せを思い描いてみてください」
生徒達はザワザワしながらも、思い思いにジャックの指示に従う。
しばらく落ち着きの無い色をしていた生徒達から次第に、「喜び」、「やすらぎ」、「希望」、「誇り」、「愉快」、そして「愛」の感情が滲み始める。
「うんうん。皆さん、良いですね。そのままの感情でいてください。守護霊の呪文は、先ほど教えた通りです。では---」
ニコニコと笑いながらジャックは杖を振るう。
「実践訓練と行きましょうか」
現れた空間からは、耳を塞ぎたくなるような呪いの声音が響き始める。
あれ程、喜び等の感情が広がっていた教室に、さざ波のように恐怖の感情が広がる。
「せ、先生、実践て、まさか...」
「安心してください。ディメンターは、一体だけにしますから♡」
ぬるりと現れた、おどろおどろしい風貌のソレに、教室内を切り裂く程の生徒達の悲鳴が響き渡ったのは言うまでも無い。
「はぁ♡やはりこの色も好みなんですよねぇ♡」
生徒達の絶叫に気付いたヘラクレス達他の先生が駆け付けるまで、阿鼻叫喚に近い光景を教壇からジャックはうっとりと眺めていたのである。
次の日---
「席に着け〜。授業を始めるぞ〜」
教室のドアを開けて入ってきたヘラクレスに、あからさまに中の生徒達は安堵の息を溢す。
「ジャックは今日休みなので、変わりに俺が授業を行う。昨日の続きで、守護霊の呪文についてだが---」
「あ、あの!ヘラクレス先生!」
「ん?どうした?」
「ジャ、ジャック先生は処分とかされないんですか?」
「大丈夫だ!昨日たっぷりお仕置きを受けて貰ったからな!しばらくは、また落ち着くと思うぞ」
効果音が付きそうなほど、晴れやかに笑うヘラクレスに、質問した生徒は納得したようなしないような顔で座る。
そして、教室の生徒達は心を一つにこんなことを考えるのだ。
---どんなお仕置きだったのだろう、と。